パラレル
□日本の夏のお話
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Wが可哀想。
―――夏真っ盛りなある日の事。
「う〜っ、痒い〜・・・!」
学校から帰ってきた十代が鎖骨辺りを指で引っ掻きながら、廊下を歩いていた。
十代の匂いに気が付いたのか、Wが部屋から出てきた。
「なにボリボリ掻いてんだよ・・・・・!?」
「あ、W〜・・・。実は・・・・・・うわっ!?」
Wに気が付いた十代が話し掛けようとした途端、Wに物凄い力で引っ張られてしまった。
そのまま十代はWの腕の中に閉じ込められてしまった。
「・・・W・・・?どうしたんだ?」
きょとんと小首を傾げて上にあるWを見つめる十代を他所に、Wの視線はある一点に集中していた。
制服のカッターシャツから覗く、鎖骨辺りに存在する赤い印の様な物。
カッと頭の血が沸騰する様な感覚になった。
所有印を付けられた。
自分が先に手を着けたと秘かに喜んでいたのに。
心底胸糞悪い気分だ。
Wはぎりぃ・・・と歯を食い縛った。
「W・・・? わっ!?ちょ・・・・・・
ダメ・・・!」
いきなり鎖骨辺りに顔を埋められた十代は、Wが血を飲もうとしているのを理解した。
理解したが今吸われては困るのだ。
自分も困るがWもある意味危ない気がする。
十代は慌ててWの腕から脱け出そうともがいたが、更に強く腕ごと抱きしめられてしまった。
Wは十代に拒絶された事にも気に入らなくなり、荒々しく赤い印をわざと強く音を立てて吸った。
「うぁっ!?や、っぁ、ひぁっ・・・やぁああぁッ!!」
Wに吸われ、ほぼ状況反射の様に十代は感じ入った矯声を上げてしまった。
十代の艶やかな声にやっと少しだけ気を良くしたWがもっとキツく吸ってやろうとした瞬間。
「!!〇〆±∞℃☆¥※∈〒∇≡≒! Σ(+×_×;)!!??」
バッターーーン!!!!
「は、ハァ・・・ぁ・・・?ぇ、・・・ちょ・・・W!?」
その場に倒れてしまったWに十代が驚き、十代の嬌声に痴漢か変質者かとVとVが慌てて来るのはもう少し。
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「Wはどうしたんだ?」
「ここを吸ったらいきなり・・・」
「・・・またWは卑しい事を・・・」
「あ、でもここってさっきV兄様がムヒを塗った所ですよね」
「「ぁ゛・・・・・・そう言えば」」
この夏は虫除け対策を万全に!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・厄日だ・・・」
END