めんばー×めんばー(48関連曲)

□初恋泥棒
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奪われた。


いとも簡単に。


好きなタイプは一途な人。だったはずなのに。




なのに。




「りんちゃーん」


とか


「さーやーかー」


とか


「ともー」


…とか。



同じ「とも」なのに。




どうして友は呼んでもらえないの?


そう考えてしまう友は好きなタイプなんかまるで違った。




友が好きになった人は

友が一番好きになりたくなかった人。



ボーイッシュでカッコいいけど

男装も似合っちゃうし、ライダースもカッコいいけど

でもなんか、たらしで鈍感で。



無意識の優しさがみんなを引き寄せて離さないのに。




「ゆかー、好きー」




その言葉、いつか友に囁いてほしい。


好きになりたくなかった人を好きになってしまった。



意地を張っていた友はやっと気づいた。




「佐江が好き…」




そっと、騒がしい楽屋で囁いた。


目の奥が熱くなって。



その場にいられない。

そう思ってとっさに楽屋を出た。




「ふぇ…っ…っ」




物陰におさまると、涙が止まらなくなった。


こんなにも友は佐江が好きだったんだ。



自分の気持ちにずっと嘘をつき続けてきた。




「なーに、泣いてんの」




その声は、一番聞きたくて聞きたくなかった声。


大好きだと知ったあの人の声。



抱きしめてほしかった。

でも、佐江には佐江で好きな人がいると思うから。




「っ…なんでも、ない」




いつからこんなに恋に臆病になったんだろう。


素直になれない自分が憎かった。




「ねぇ、楽屋でさ…」




楽屋で…?


少し期待してしまう友と

聞きたくないよと思う友。




「いや、やっぱいいや。勘違いだったらやだし。だからってわけじゃないんだけど、今日一緒に帰れないかな」




期待した友はガッカリしていた。


聞きたくない友はホッとしていた。






「ねぇ」




それでもやっぱり気になった。




「ん?」




最近の夜はとても寒い。


手を擦ってる友を見てさりげなくポケットに手を入れて繋いでくれる。



これだから夢中になってしまう。


好きはタイプじゃ決まらないってこと。




「今日言いかけてたやつ…楽屋でって」




あぁー…。


と、言いにくそうに下を向く佐江。




「いやさ、ともちんもしかして。楽屋で佐江が好きって言ってなかったかなーって…//」




頬を赤らめて佐江が言うから。


妙に緊張してしまった。



地獄耳かよ。




「聞こえてたの…?」



「…ごめん」




なんで謝るの?

友は今、振られたの?


直接告白してないのに振られたんだ。




「…」



「あのさ。…その、佐江も…好きなんだ。ともちんのこと」




このときかな。


何かが変わったのは。






友は今日から宮澤佐江の恋人です。








END

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