小説

□可愛い
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「ゆーかぁー」



来た。
甘えた佐江ちゃん、楽屋に参上。

さーて今日も意地悪しましょうかね。



「なんや」



わざと冷たく。



「デートしよーよー!」



才加も梅ちゃんも優子もみんな。


がっつり聞いてんで?



「宮澤」



冷たく呼ぶ。



「…あい」



さすがに反省したらしい。



「うるさいねん」


「………だって有華とデートしたかったんだもん」



断れへんやん。


ま、最初っから断る気なんてないねんけど。



「わかったから。デートな、デート」



にこにこ笑顔になった佐江は

またたらしの旅に出た。



やっぱ佐江には勝てへん。

意地悪しよ思うても
いっつもうまくいけへん。



「うぉっ……っ」


「やーっぱ有華が一番落ち着く」



ぎゅーってされんの有華、苦手やねん。


知ってるくせに。



「離れろや」



暑苦しい。


いや、恥ずかしいねん。


頼むから、みんなに見られてるん、はよ気づいて。

有華ほんまに苦手やねんから。



「…やだ」



何で泣くん?


有華の口調が強かったんか?



「泣くなや。恥ずかしいねん。ちょっと離れてって」



理由もちゃんと言ったのに
なかなか離れてくれない。


むしろ首を振るばかり。



「有華と離れるの、いや」



こいつ、ほんまにうちより年上か?


ほんまは年下なんちゃうん?



「なんでや。さっきまで優子に抱きついてたやん」


「やっぱり有華がいいって気づいたから戻ってきた」



ほんまなんやねん、こいつは。


急に子供っぽくなったり
かと思ったら大人になったり。



「わかったからちょっと離れてって。有華、動けへん」



なんか知らんけどめっちゃ怒ってる。
けどしぶしぶ離れてくれた。



「有華は佐江の」



昔から久々に会ったりすると
佐江は言う。


有華は佐江のものだ、と。

もちろんちゃんと有華も言ってんで?



「ん。佐江は有華の」



決まってこのあとは
抱きついてくる。


いややけど
佐江の温もりを感じると
自然といややなくなる。



「有華、大好き」



耳元で甘くささやいてくるあたり
結構確信犯やと思う。



「あかんやん。楽屋でそんなん言ったら」



少し離れて佐江をビシッと立たせる。



「ほんとのこと言っただけだし」


「せやから、それがあかんねん」



意地悪してやろって
思ってたのに。


ダメやん。


有華やって…………言いたくなるやん。



「佐江、愛してんで」



END

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