小説

□好きな人の好きな人
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あたしは、ばかだ。



好きだった。
ずーっと。







「いやだからさ、なんでそーなるのさ」



「えー?なんで?麻衣間違ってないよ!」



「いーや、まいまいは間違えてる。いい加減認めてよ」




現在才加とMCの確認中。

そこで、麻衣の天然ぼけに…
才加がツッコむっていう(笑)




「あー!やっぱり才加とだと気が楽!」



「はは。それはよかった。才加もまいまいとだと気楽だよ」




意外かな?こんな組み合わせ。

だいたい、麻衣は一期生で才加は二期生。
まだ出会って三年くらい?



でも結構仲いいよね。

だって麻衣は、好きだもん。才加のこと。




この前、AKBINGOで催眠術を体験した。 

最後に恋愛も操れるんですか?って質問に
なぜか麻衣が選ばれて。


しかも相手はまさかの才加。



本当に好きな人に催眠術で近づくなんて。

確かに催眠術にかかって、操られてはいたけど
麻衣の本心でもあった。



才加に触れた。
その事実が麻衣を変えたんだ。




「才加ー。ぎゅーー」



「ちょ、まいまい。くっつくなって」




積極的になって才加にずっとくっついていたくて

才加がそういうの苦手って知ってるけど
でもいつか、伝えたかった。


好きだって。




「ねー才加ー」



「ん?」




なんでここで聞いたんだろう。


ここが運命の分かれ道だったかな。




「好きな人とか、いる?」




ほんとはいるわけないじゃん、とか
恋愛は禁止でしょ?とか
才加らしい答えが来るのを期待していたのに。




「え?あー、まぁ、うん。いる、かな」




嘘だ。

冗談だよって言ってほしかった。



麻衣は、才加が好きなのに。




「って、え?そんな顔しないでよ!才加、変なこと言った?」




「ちがっ…っ」




ダメだ。


今話をするために口を開いたら
涙があふれてしまいそう。



叶わない恋なんて、苦しいだけだ。




「まいまいは?いないの?」




言えるわけ、ないでしょ。


麻衣が好きなのは、才加なんだよ?




「…いるよ」



「そっか……」




あー。やめて

才加だって悲しい顔した。



無駄な期待は苦しくなるだけだから。




「才加の好きな人はさ…」



「聞きたくない」



「いや、聞いてよ」



「聞きたくない!!!」




麻衣はそのまま楽屋を飛び出した。






自販機の前につくとそこにはたかみなと優子がこれまたMCの確認をしていた。




「あれ?まいまい、どーしたの?」




もうすべてを吐き出してしまいたくて。



2人にすべて話した。




「あー……。どうする?たかみな」



「いやー、うん。まいまい、それ、才加の話聞いたげて?悪い話じゃない」




2人はそれだけ言い残すとそっと麻衣の側を離れていった。


“悪い話じゃない”


どういう意味?



だって才加は麻衣に好きな人を話すんだよ?


聞けるわけないじゃん。







「あ、いた」




足音が聞こえたと思ったらそこには才加がいた。




「探したんだからね。…ねえ、最後まで聞いてよ話」



「やだ」




聞きたくないってば。


麻衣、才加が好きなの。好きな人から好きな人の話なんて聞けない。




なのに構わず才加は話し始めた。




「才加の好きな人は、一緒にいて気楽な人」



「やめてって」



「で、波長があってちょっと天然」



「やめてってば」



「好きだよ、まいまい」



「やめっ……え?」




聞き間違いかとおもった。

才加が麻衣を、好き?




「うそ…」



「嘘じゃない。才加はまいまいが好き」



「嘘だ、だって才加…」 




才加はずっと、佐江が好きだったじゃん。

それを知っていたから



だから嫌だったのに。




「才加、ずっとまいまいが好きだった。ねぇ、付き合ってくれる?」




才加が麻衣を好き…



嘘みたいだ。


ずっと才加は佐江を好きだとばかり思っていたのに。

両想いなんて。




「麻衣も…才加が好き」




言えた、言えた言えた!


ずっと言えなくて苦しかった。

好きというたった二文字が。



今、言えた。






麻衣は、ばかだ。




「好きだった。ずーっと」




言えるじゃないか。




「よかった…答えは?」



「…付き合ってください」








END

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