小説

□かけがえのない存在
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「珠理奈〜?いつまで拗ねてんのー」

「ふん」


だってだって
みえぴーずるい!

あたしだってほんとは
男装も楽しくて好きだけど
佐江ちゃんにしてほしいもん。

ドキドキさせてほしかったもん。


「しょうがないじゃんあれは。仕事だし」

「…でもずるい」

「じゅーりなー」

「…っ///」

「ふふ、ドキドキしてくれた?」


不意に後ろからぎゅってしてきて
頭を抱え込まれた。


あたしが李苑にしたやつ。


「ばか…」

「えー?佐江も嫉妬したんだけどなあ、李苑に」

「え?ほんと?」

「そりゃああんなイケメン珠理奈にドキドキさせられてる李苑見てたら妬けるでしょー」

「そっ、か」


そっか
佐江ちゃんも嫉妬してくれたんだ。


「だから珠理奈だけじゃないんだよ?」

「…ん」

「みえちゃんは確かにすごくドキドキしてくれたけど、佐江はいつも珠理奈をドキドキさせたいって思ってる」

「うん、ドキドキしてる」

「ほんと?ならよかった。けど、仕事でも他の人をドキドキさせちゃったのはごめん。許してくれる?」

「仕事、だから。珠理奈もごめんなさい」

「ううん。珠理奈は謝ることないよ」


みえひーに言ってたように
許してくれる?ってあたしにも言ってくれた。
佐江ちゃんはなんでこんなに優しいんだろう。

あたしが勝手に嫉妬して拗ねただけなのに。


いつも困らせてばっかりだ。


「ごめんね?佐江ちゃん」

「謝ることないって言ったじゃん」

「でもごめんなさい。珠理奈いつも佐江ちゃんにめっちゃくちゃドキドキしてるから、誰にも負けてないから。もうそんなことで拗ねたりしない」

「まあ今回は、お互い様ってことで、ね?」

「うん!」


あたしのことを後ろから抱きしめていた
佐江ちゃんは前に回ってきて
今度はあたしを正面から抱きしめた。


離れたかと思ったら
顎をくいってされて(所謂顎クイってやつ)
キスをされた。


「仲直りの印」

「…///」

「みえちゃんに負けないくらいドキドキした?」

「…した」

「よし」


頭をわしゃわしゃって撫でられて

頭をぎゅっと抱え込まれた。


「もっとしたい。ドキドキ」

「え〜?ドキドキは宣言するもんじゃないしなあ」

「佐江ちゃん…」


私は佐江ちゃんだったらなんだって
ドキドキするよ?


「わっ…!!」

「…ドキドキ、した?」

「しすぎて死にそうだよ」


今度はあたしが佐江ちゃんをドキドキさせてみた。

俗に言う床ドンってやつ。


…ただ押し倒したみたいになっちゃったけど。


「あたしも今ドキドキしてる」

「えっ?」


佐江ちゃんの手を取って
自分の心臓に当てる。

顔近いだけであたしはめちゃくちゃドキドキしてるんだ。


「ね?」

「ほんとだね。まあ負けないくらい佐江もドキドキしてるけどね」


そう言って今度は佐江ちゃんが
あたしの手を心臓に当てた。

確かに佐江ちゃんはドキドキしてて
すごく嬉しかった。


「はあーでもやっぱずるい」

「まだ言うかー?」

「だってー…でも相手、綾巴とかじゃなくてよかったほんとに」

「綾巴かー…」

「今絶対綾巴がよかったって思ったよね?」


もう!
佐江ちゃん綾巴のこと好きすぎなんだよ

佐江ちゃんはあたしのでしょ?


「思ったー」

「佐江ちゃんのばか!」

「みえちゃんよりは綾巴の方がドキドキさせがいあるし」

「ねえほんとに怒るよ?」

「珠理奈がドキドキしてくれてる方が嬉しいけどね」


人の話聞いてんのかな…

なんか話噛み合ってない気がする。けど、
嬉しいこと言ってくれたからいいや。


「綾巴とあたし、どっちが好き…?」

「本気で聞いてる?それ」

「だって佐江ちゃん綾巴大好きじゃん」

「その好きと珠理奈への好きは違うじゃん」

「うん、でも」

「ていうか、珠理奈のことは好き、じゃなくて」


愛してる、だから

耳元で囁かれてあたしはドキドキしすぎて死にそう。


「ばか…//」

「え?好き?」

「もー!」

「ふふ、可愛いなあ」

「佐江ちゃんずるい」

「ん?」

「珠理奈のこと、ドキドキさせてばっかだよ…」

「まあドキドキさせてるからねえ」


ドヤ顔かましてくる辺り
相当な自信だ。

まあ、まんまと落とされてるのはあたしだけど。


「もう、なんなのほんと…」

「ていうかさ、」

「え?」

「佐江的には珠理奈が自分の事、珠理奈って言う方ががやばいんだけど」

「嘘、無意識だ」

「無意識かよ?!余計に悪魔だ…」

「なんで?」

「不意に自分の事珠理奈って言うのやばいからね。相当くるよ」


そうなんだ。

確かに自分でも自分の事珠理奈って
言ってるなとは思ってたけど。
別に意識して言ってたわけじゃない。

佐江ちゃんの前だと素になれるからだと思う。


「全然そういうつもりなかった」

「無自覚無意識かあ、怖いなあ」

「えーなんでー」

「佐江、相当珠理奈にハマってるらしいわ」

「それはお互い様だよ。あたしも佐江ちゃんにハマってる」

「好きだよ、珠理奈」


最初はね、
こんな子供相手にしてくれないって思った。

だからこの気持ちは
恋なんかじゃなくて憧れだって
割り切るようになって。

でもチームが同じになったあの日。
運命だと思った。
SKEで同じチームになれるなんて奇跡でしかない。

だから思い切って告白したんだ。

あたしは出会った時から佐江ちゃんが好きだった。
会うだけでドキドキして
話す度に緊張して。

佐江ちゃんは優しいしかっこいいから
すぐに誰かに取られちゃうって思って。
あの頃は緊張しながらも頑張って話しかけてた。
いつも佐江ちゃんは笑顔で接してくれて…

麻里ちゃんに相談したりもした。
そしたら佐江ちゃんはメンバーはみんな平等に見てる
とか言うから絶対振り向かせてやろうって思ったんだ。


努力が実って告白をOKしてくれたときは
本当に嬉しかった。

あたしは、佐江ちゃんの恋人なんだ。


「あたしも大好き」

「明日早いし、今日はもう寝よ?」


あ、この展開またみえぴーの時と同じ。


「寝るの…?」

「今日は寝よ?この幸せな気持ちのままゆっくり」

「うん、わかった」


頭をわしゃわしゃってされて
佐江ちゃんは先にベッドに向かった。

ほんとはちょっと期待してた。
し、佐江ちゃんにも少なからずそういう気持ちがあったと思う。

それでもしなかったのは
佐江ちゃんなりの優しさ。
朝が苦手なあたしを起こしてくれるためだと思う。


「珠理奈ー、おいで?」


腕を広げて待っててくれてる佐江ちゃんに
私は強く飛びついた。


「佐江ちゃん〜」

「ふふ、寝よっか?」

「うん、おやすみ」


佐江ちゃんは腕枕してくれて
あたしは気持ちよく夢の中に旅立った。





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