小説

□人生はわからない
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さやねえが仲良くしてもらってることは知っていた。

だけど私は別にこれから関わっていく場面もないだろうし
話すことだってないんだろうなって。
そう思っていた。


そう思っていたのに…


「山田菜々ちゃん、だよね?よろしくね!」


まさか兼任先で一緒になるとは。


「はい、よろしくお願いします」


人生何が起こるかわからへん。




今日は私が兼任しているSKE48のシングルのMV撮影。
私は歌割りがみなるんと宮澤さんと一緒やったから
3人で撮影することになった。


「みなるんいてよかった」

「ん?なんで?」

「やって宮澤さんと話したことないんやもん」

「え、ないの?」

「関わる機会ないし」


だから話そうにも何を話したらええのかわからへん。
話す話題もないし。

第一宮澤さんのこと、あんま知らへん。
見た目は噂通りかっこいいし
メンバーが惚れるのもわかる。
性格も優しそうやし宮澤さんが男やったら好きになってるかもしれない。

けど。だから手が届かない存在で
私なんかが話す相手になるわけないんや。


「佐江ちゃんいい人だよーほんとに」

「それは知ってる」

「まあたぶん、そのうち佐江ちゃんの方から話しかけてくれると思うけどね」

「そーなん?」

「うん。話したことない人にはいつも自分から話しかけてると思う」

「そーなんや…」


話しかけられてもどうしよう。
緊張してうまく答えられへん気がする。

変な声って言われたらそれまでや。


「まー、そんな緊張することないって!」

「うん…」


かと言って自分からは絶対に話しかけられへんし

話しかけられたらそん時はそん時や。


「あ、次私だ。たんななー行ってくんねー?」

「あ、うん」

「佐江ちゃん戻ってくるからね」

「わかってる」


2人きりになるなんて
絶対にありえへんかったはずなのに。

こんないとも簡単になるもんなん?


「山田菜々ちゃん、だよね?」

「はい、よろしくお願いします」


早速話しかけられるし!
あかん、緊張してきた…


「菜々ちゃんって声ほんと可愛いね!関西弁もめめっちゃ可愛い!佐江、高い声の人すごい好きなんだよね〜」


声が、かわいい?

NMBのメンバーには変な声としか
言われてこなかったから
声が可愛いなんて初めて言われた。


「あ、ありがとうございます//宮澤さんは、かっこいいです」


え、ちょっと間違えた!
いやあかん、これ告白みたいになった!

またさやねえに語彙力ないって言われる…


「ありがとう!佐江ずっと菜々ちゃんと話してみたいって思ってたんだよね。優子がめっちゃ自慢してきてさ」

「優子さんですか?」

「そ。優子がね?菜々ちゃん知ってる?顔めっちゃ可愛い子なんだけどあの子はみんな好きになるわーって言ってきてさー。いつか佐江も菜々ちゃんと話したいって思ってたんだ!」

「そう、なんですか…//」


優子さんとは一度お話をさせてもらった。
優子さんが私と話したかったらしく(?)
なんで私なのかわからへんかったけど。


「だからSKEで同じになってびっくりだよー。歌割り同じだしポジションも近いし!」

「私も、宮澤さんと話す機会なんてないと思ってました」

「だよね!佐江も!でもこれからは会う機会増えるねー!」

「そうですね、嬉しいです」


こんなに気さくで話しやすくて
これで好きにならない方がおかしな話だ。

今まで何人のメンバーが
宮澤さんに告白したんだろう。

噂ではゆきりんさんと付き合ってるらしいけど…。
柏木さんもNMBを兼任してて
会う機会が増えて最近よく話すけど
どうもゆきりんさんは宮澤さんと付き合ってないっぽいし。


「佐江さー、」

「たんななー!」

「あ、」

「うわ、まじかよ!美奈タイミングわるっ!」


宮澤さんが何かを言いかけた瞬間
みなるんが戻ってきて宮澤さんが大きな声で
美奈最悪!って言ってる。


「えええ!佐江ちゃんごめんなさい、なんかわかんないけどごめんなさい!」

「今菜々ちゃんと大事な話してたのに」

「でも菜々ちゃん呼ばれたから…」

「美奈のバカー!菜々ちゃん、戻ってきたら話続き話すね?」

「わ、かりました。行ってきます」


宮澤さんはイケメンでかっこいいけど
無邪気なところもある。
そこが好かれる所だと思うし私も現に好きになった。

そう、好きになった。
たった今、話をしただけで。
私は宮澤さんを好きになった。


恋かと聞かれたらわからへん。
けど、確実に宮澤さんを知りたい、
もっと話したいって思ってる。


「み、やざわさん!」

「あ、菜々ちゃんおかえりー」

「話の続き、聞かせてください」

「あ、うん!じゃーちょっとこっち。美奈絶対来んなよ?」

「のけ者ですか?!」

「菜々ちゃんにだけ話したいの」

「もー。わかりましたよ」


みなるんにさえ聞かせたくないような
秘密の話をされると思うと
私は嬉しくて仕方なかった。


「あのね、」

「はい」

「佐江、菜々ちゃんのこと好きになっちゃった」

「は、い…?え!?」

「菜々ちゃんまじで可愛いし佐江のタイプだし」

「え、え、?!ほんま、ですか??」

「ほんとだよー」

「あのっ、私も!宮澤さんのこと、知りたいって思いました」

「ほんと?佐江に興味持ってくれた?」

「はい。知りたいし、話したいって思います」

「ありがと!じゃーそれが好きに変わるように頑張ろうっと。あ、あとでLINE交換しよー?」


まさか。告白されるなんて。
関わることがないと思っていた相手とこうして話して
今日一日だけでこんなに話せるなんて。


やっぱり人生何が起こるかわからへん。



END

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