小説

□さよならなんて言わない
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『菜々ちゃん』

『さやかちゃん?どしたん?』

『さよなら…』

『えっ?!さやかちゃん!』



「わっ…」


嫌な夢見たなあ

しかも菜々ちゃんって…


「山田?」

「わっ!」

「どしたん?」

「え?」

「起きてすぐも、わっ、って言っとったけど」


不安とかそういうんやないけど
やっぱりさやねえは私のことを本当に好きなのか気になる。


「うん。変な夢見てん」

「夢?」

「あんな、さやねえがな、『菜々ちゃん、さよなら』って言ってん」

「はあ?なんなん、その夢」

「わからへん」

「しかも菜々ちゃんって」


突っ込むところ私と同じやし。

やっぱり私たち似てんねんなあ。


「なあ、さやねえ」

「ん?」

「私のこと、好き?」

「え?なに?ほんまどした?」

「答えてや」

「好きやで。むっちゃくちゃに好きや。不安になった?」

「…かも」

「あたしのこと信じてないん?」

「ちゃうけど、夢リアルやってん」

「あたし菜々ちゃんなんて言わんし」


昔は菜々ちゃん菜々ちゃんって言ってたけどな。
とはさやねえには言わない。


「まあ。けど、」

「好き。菜々が好き」

「さやねえ…」

「信じてくれる?」


捨てられた子犬のような潤んだ目で見つめられて
信じてくれる?なんて首をこてって傾げられて
さやねえは私の前ではかなり釣り師やし
末っ子発揮して甘えてくる。


「信じてるよ。夢は夢やし」

「けど不安やったからそんな夢見たんやろ?」

「う、」

「不安にさせたんはあたし以外ありえへんやん。やから、ごめんな?」

「なんで謝るん?」

「とりあえずごめん。好き」

「あほぉ…」


これから私たちは
今まで以上に会う時間が減る。

そうしたらこうやって一緒に寝たり
語らうことも出来ないかもしれない。
好きという気持ちも薄れてしまうかもしれない。
だから会えている今、
好きだということをしっかり伝えて欲しい。
同じ分だけ私も伝えるから。


「菜々ちゃん。ずっと好きやで」

「…さやねえ」

「さやかちゃん、やろ?」

「さやかちゃん。私もずっと好き」


昔は他人行儀だった。

年も違うし、なんとなく似てるところがあったから。
人見知りして、様子見て。
不器用なとこがむっちゃ同じやなって思った。

ここまでの関係になるまではほんまにゆっくりやったし
話すだけでも時間がかかった。

今では表情を見てるだけで
胸の内が伝わるまでになった。
辛いのは私だけちゃうんやって安心出来る。

ほんまにあの歌の歌詞の通り。


「ははっ。昔に戻ったみたいやな」

「あの頃はまさかさやねえを好きになるとは思いもしなかった」

「あたしもやわ。むしろ苦手やったし」

「けど今考えるとほんま初めから似てたよな」

「せやなあ。まあおばちゃんは山田だけやけどな」

「またそういうこと言う〜」


すぐおばちゃんって。
おばちゃんちゃうのに。

しかもそういうときは山田呼びやし。


「愛やって」

「そんな愛いらん」

「菜々愛してる」

「…っ、急になんなん」

「いらん言うからあげた」

「しゃあないから受け取ったる」


私がさやねえを好きになったことに
理由なんてないと思う。

この運命は初めから決まってたことで
さやねえと私が出会うのは必然やったと思う。
必然的に好きになって恋に落ちた。
もちろん恋人になった。
これからも必然的に一緒にいるんちゃうかな。


「なあ」

「ん?」

「もう変な夢見たらあかんで?」

「じゃあ不安にさせないで?」

「うっ、ごめん。いや、もうさせへん」

「うそうそ。不安になるんもそんだけ彩が好きってことやん」

「おまっ、釣り師か!あほ!」


この前Twitterのリプライを見てたら
さやねえのことさやねえって私が言ってんのが
よくわからんっていうのが多分さやねえアンチらしき人から来てた。

多分その人によると
さやねえが言わせててキャプテンやからって
立場が上やって気取ってんちゃうんかってことやった。

そんなことありえないのに。
私はさやねえのことを尊敬しているし
さやねえと呼ばれるだけの人間だと思ってる。
別に立場がどうとか考えたこともない。
それは私だけやなくて他のメンバーやってそうやと思う。

ましてやさやねえがそう呼ばせてるなんて
もっとありえない。
さやねえはこう見えて実は小心者やし
気取った態度を取れるほど強くない。
さやねえが私のことを山田と呼んでることを気に食わないひともいるみたいやけど
それこそ私を何でも相談できる信用できる人やって思ってくれてる証拠。
見下されてるとか生意気やとか思ったことない。

見かけで判断するような人、私は嫌いや。
ちゃんと中身見て判断して欲しい。
それに私は山田呼び嫌いちゃうしさやねえ呼びやって好んでしてる。


「これからも一緒にいてな?」

「当たり前やろ。山田が嫌やって言うても一緒に居るわ」

「言わへんから大丈夫やで」

「なら安心やな」


二人で笑い合った。
この幸せがずっと続けばいい。

何でもない日常で笑ったり
記念日を大切にしたり
誕生日もクリスマスもバレンタインデーも
全部全部一緒に過ごしたい。


さやねえと一緒にいれるなら
私はこの先もずっと歩いてけるだろう。



つづく

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