小説

□仕返しサプライズ
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仕事、か…


優子が卒業してから会う機会が減った。
当たり前だけど。


会いたいなーって思っても
簡単に会えなくなった。
というか、言えなくなった。
会いたい、なんて



ここで少し、三角関係の話をしよう。
その昔、うーんと、4年くらい前の話か
なんと三角関係が発覚した。
お相手は、佐江と優子と才加。
関係は、佐江が優子を好きで才加は佐江が何故か好きで。優子は、誰のことも好きではなかった。
あれ?これは三角関係って言わない??

まあとりあえずそんな関係が1年近く続いた。


優子は何も知らないから
佐江と才加がギクシャクしてもわからない様子だった。

この関係に終止符がついたのはある一言がきっかけだった。


「もう、やめよう」


才加が折れたのだ。
佐江を振り向かすことを諦めたらしい。
才加には申し訳ないけど、佐江は優子一筋だったから。

佐江は優子を振り向かせたかったから。


才加は応援してくれた。
才加の好きな人には好きな人がいるみたいだから応援するしかないでしょって。
あの時涙が流れたのはここだけの秘密。
才加には感謝してる。

そのあと、いろいろ頑張った結果
佐江はようやく優子を振り向かすことができた。



当の優子は、
仕事で大阪にいるらしい。
佐江は家にいるというのに。


「会いに来い、ばかやろー…」


会いたい。
でも、言えない。
苦しいよ…。


「うわっ!」


突然携帯が震えた。
着信だ。この着信音はたった一人


『もしもし?』


優子だ。


「も、しもし」

『ごめん、今平気?』

「うん。優子は?」

『今休憩』

「そっか…」


やっぱ、仕事長いよね…


『最近会えてないよね』

「うん…」

『声だけでも聴きたくて、電話しちゃった』


ああ、今悲しそうな顔してるね
見なくても、わかる


「佐江も、同じこと思ってた」

『仕事、まだあるんだよね』

「うん、頑張って」

『頑張って終わらせたら、明日会ってくれる?』

「え?」

『会いたい…』


まさか
優子から会いたいと言われるとは思わなかった。
だけどすごく嬉しかった。


「佐江も。会いたいよ」

『頑張って終わらせて、会いに行くから』

「待ってる」


会える。
会えるんだ。

やっと。


『あ!そうだー』

「ん?なに?」

『ちょっとさ、窓の下見てみて』

「は?なんで?」

『いーから!』


よくわからないけど
とりあえずカーテンをあけて、窓の下を見る。

と、


「えっ…」


なんで、


『ふふ』


嘘だ、


「っ…」


どうして、いるの…


「会いたすぎてー、会いに来ちゃった!」


ずるいよ…


「っ…。ばか…」

『えー?聞こえないなー』

「ばか!ばかっ…」


ずっと会いたかった人が
やっと
目の前に、


「ちょっと待っててね!」


そう言って優子は
マンションのエントランスに入った。


ピーンポーン


恐る恐る、ドアをあけた。


「…っ」

「会いに来たよ」

「なんで…っ」

「えっ?…だって会いたかったから、」

「どうして、いつも優子はそうやって…っ」

「ごめん…」

「違う!嬉しいから!だけど、…ずるいよ」

「サプライズ、好きでしょ?」

「サプライズは佐江がしたいの!」


嬉しすぎて、佐江はいつの間にか泣いていて。

優子がぎゅって抱きしめてくれた。


「いいじゃーん。仕事めっちゃ早く終わったんだもん!」

「なんで嘘ついたの!」

「だからー、サプライズだってば!めっちゃ演技うまかったっしょ?」

「さすが女優さんです」

「よっしゃ!」


無邪気に笑う優子は、いつもの優子だ。
佐江、サプライズされるのは苦手なんだよー…


「会いたかった…」

「あたしも。待ちきれなくなっちゃった」

「佐江が会いに行きたかった」

「ははっ、ごめんごめん。じゃー今度は佐江が会いに来て?」

「サプライズしたかったー!」

「ごめんってば。許して?」

「会いたかったから、許す…」


もうなんでもいーや。
会えたし。

仕返しサプライズしよ。


「泊まってもいい?今日」

「うん、いいよ」


やっと仕事、落ち着いたのかな
佐江も最近はちょっと落ち着いたしね


「とりあえず疲れたから風呂ー」


優子はおっさんみたいに言って
お風呂場へ向かって言った。

ご飯はいるのかな?
まあいいや


とりあえず風呂から出てきた優子に
ホットミルク。


「…もしかして、怒ってる?」

「え?なんで?」

「いや、熱いもん出してきたから」

「ホットミルクは体にいいの!」

「普通寝る前でしょ」

「いいから飲んで!」


普通に冷たいミルクでもいいんだけど
なんかいいらしいから、ホットにしてみた、だけ


とりあえず全部飲み干して?
やっとこの時が来たから…


「…なんで見つめてんの?」

「だめ?」

「い、いや」

「全部飲んでね?」

「う、うん…」


佐江は優子の反応を待つ。

どうか、喜んで…


「……」

「……っ」

「…え?優子?」


突然優子が泣き出した。

あまりに突然で、慌てる


「佐江…っ」

「優子?」


優子はこれまた突然抱きしめてきて


「愛してる…」


そう佐江の耳元で囁いた。

佐江のサプライズも、成功かな


「佐江もだよ」


コップの底に彫った文字。

" Yuko×Sae=eternity love"

永遠に愛してる…
優子なら意味わかってくれると思った。


知り合いの知り合いの彫刻家に頼んで彫ってもらった。

いつこのコップで飲んでもらおうかなって思ってて
だから今日サプライズの仕返しをした。

ミルクにしたのは底が見えないように。
ホットにしたホントの理由はその方が熱くて一気に飲まないと思ったから。
その方が底を見るかなって。


まさか泣かれるとは思わなかったけど
喜んでくれたかな。


永遠に愛してるよ、優子



END

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