小説

□不安払拭
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「あっ、ん…」

「逃げたらあかんやろ?」

「んっ…さやっ、」

「ん。ここに居るよ」


不安そうな目で見つめるから。
あたしまで、不安になっちゃうやん。















「なあ、さやか」

「あー?」


卒業まで残り半月。

山田とアイドルとして一緒にいれる時間は
どんどんと限られたものになっていっていた。


「今日夜、暇?」

「暇かって言われたら、暇ってわけでもないけど」

「えー仕事ある?」

「んー」

「あんの?」

「ない」

「なんやねん。あかんの?」

「まあ、山田との予定が予定やな」

「意味わからへんけど、要するに暇やんな?」

「山田と居るから暇ちゃう」

「もうわかったから」


二人きりになれるときは
なるべくそれを優先したいし

ご飯に誘われたって断ると思う。


「どっか食べ行くつもり?」

「んーどーしよっかなー」

「決めてないんかい。やったらご飯食べ行ったらホテル戻るルートでええやん」

「ん。ええよ」





「ふー美味かったー」

「ご飯、ありがとな?」

「もうええって」

「やってこの前も奢ってくれた」

「あたしがしたいからええの」

「うん。ありがと」


ホテルに戻ってきて部屋着に着替える。

山田はもともとはここの部屋ちゃうかったから
荷物全部こっちに持ってきてもらった。


「山田、おいで」

「…ん」


こうやって温もりを感じられることだって
もう少ないから。

感じられるうちに、感じていたい。


「髪切った?」

「うん」

「似合ってる」


山田のさらさらな髪に指を通す。

スルッと引っかかることもなく通るから
手入れされてるんやなって思ったら
思わず髪の毛にキスをしていた。


「…何してん」

「や、無意識?」

「変態やな〜」

「まあな」

「うわ、ドヤ顔や」

「うっせ」


ほっぺを両手でぎゅって押せば
唇を突き出してくるから
あたしはその唇にちゅっと吸い付いた。


「変な顔にしたまましやんで」

「えーやってしたかってんもん」

「やぁーや」

「かわい」


最近は大人になってきたらしく
あたしは素直になった。

昔やったら冷たくしてたもんな。


「もっかい、」

「ん…、」

「ふあっ…。まだ、もっかいして」

「わがままやなぁ」


山田も山田でちゃんとあたしに
甘えてくれるようになったから
あたしたちは昔よりより一層ラブラブになった気がする。


「んっ、やめんで…」

「やめへんよ。あたしもやめたくない」

「ふふっ、ちゅーばっかやな」

「やめんな言うたん誰やねん」

「やって、きもちっ、」


山田が言い終わる前にキスを続ける。

山田の蕩けた顔があたしを興奮させる。


「まだちゅーする?」

「んー、して?」

「ははっ、キスに夢中になるから続き、進めてい?」

「…うん//」


部屋着に着替えていたから
脱がせるのは簡単で。

スルスルと脱がせていけば
山田も同じようにあたしの部屋着に手を掛けてきた。


「ふっ、下手くそやな」

「う、るさい。手広げてや」

「はいはい」


ファスナーを下ろす手が少し震えてて可愛い。

あたしは素直に手を広げてパーカーを脱いだ。
と、同時に山田へのキスを再開させた。


「んっ…さやっ、まっ…て、」

「ん?」

「い、き…続かへん」

「ちゃんと吸わなあかんっていつも言うてるやん」

「やって、」


山田の胸はかなり弾力があってとても癖になる。
だから他のメンバーもみんな
好き勝手触るし。
むっちゃムカつくけど癖になる触り心地やっていうのはわかるから
なんとなくいいかなって。

おっぱいくらいなら、許したるっていうか。


「ほんま、やらか」

「んぁ、やぁ…っ」

「ふわふわしてる」

「やぁーやっ、って、ちょっ//赤ちゃんみたいやん…」

「んー?やっへ、ほいひーねん(やって、おいしーねん)」


吸いつきたくなる気持ちもわかってほしい。

こんなに柔らかいものを
触らずに、吸わずにいるのはもったいない。


「んんっ、ひゃぁ…」


焦らすのも面倒やし
早く触れたすぎて下に手を伸ばせば
さっきより一層やらしい声を出した。

山田は全身性感帯やから
太ももに触れただけですでにエロい顔になる。


「どーしてほしい?」

「やぁやっ、いじわ、る…せんといてやぁ…っ」

「言わなわからへんねんもん」

「あんっ、やぁ…//」

「なーな?」

「ゆ、び…」

「ん?」

「ゆび、ほしい…」

「どこ?」

「ここっ…」


山田はあたしの腕を掴むと
そのまま自分のやらしいところに
あたしの指を入れようとした。

そんな誘い方、どこで覚えてんほんま。


「わかってるやん」

「あっ、ん…」

「逃げたらあかんやろ?」

「んっ…さやっ、」

「ん。ここに居るよ」


山田は不安そうな目であたしを見つめてきて。

不安そうな目で見つめるから。
あたしまで、不安になっちゃうやん。


「離れたらっ、あかん…」

「離れへんよ。ずっと居る」

「ちゅー…っ」

「ん。ちゅー」

「んんっ、はぁ…っ」


指を動かす速度を早めたりゆるめたり。
その度に山田は反応してくれるから
あたしはもっと遅速を繰り返す。


「菜々…」

「さや、かっ…!いっ、」

「いきそ?」

「んっ、あ…、いっちゃ…」

「ん。ええよ」

「さやかっ、」

「ここに居る。安心して?」

「あっ…いっ、!」


山田は体を反らせていった。

あたしはそれに満足して山田に口づけた。








「お疲れ様」

「んー。ほんま疲れたー」

「水、いる?」

「いるー」


シーツにくるまっただけの体を起こした山田に水を渡す。


「ほい」

「ありがとー。…なぁ、さやか」

「お?」

「私も、」

「ちょっ…おいっ、あぶなっ」


したいねんけど。
なんて言いながら腕を引っ張ってきたから
あたしは倒れてしまった。

そのまま山田はあたしの上に馬乗りになってきた。


「私も彩に触れたい。あかん?」

「まぁ…あかん、」

「くないよな?」

「いやっ、ちょ、」


あたしに負けじと強引なやつだ。

あたしに似たんかな。


「私もしてい?」

「あかん」

「くない」

「や、まじで、ほんまにっ、おいっ!」

「聞こえへん〜」

「疲れた言うたやんっ!」

「言うたっけ〜?覚えてへーん」

「こっんの、性悪女め」

「うわっ、彼女に向かってそういうこと言うんや」

「さっきまで不安そうな目で可愛かったのに」

「今も可愛いやろ?」

「性格悪い」

「もーさやかうるさい。お口チャック」

「んんっ、…っぷは、あほ」

「あほやない。可愛いって言って」

「可愛すぎ…て、あほ」

「…一瞬の喜び返せ」

「お返しや、あほ」


あたしの上に馬乗りになったまま
山田があーだこーだ言ってくるから
なんだか言い合いになってきた。

まあ、山田見て高まってたし
今日くらいはしてくれてもいいんやけど。


「雰囲気なさすぎてやる気失せた」

「はあ?!」

「え、してほしかったん?」

「やっ、ちゃうけど!」

「なんや〜素直やないな、ほんま」

「ちょっ、」

「してほしいんやろ?」

「…してほしいです」

「ふふっ、さやか可愛い」


こいつ、あたしより絶対慣れてる。
性格悪すぎてほんまムカつくけど
ほんま大好きな自分もムカつく。

卒業したら会う機会は今以上に減るかもしれへん。
山田は東京行きたい言うてるから
まあ頑張れば会えるかもしれないけど。

余裕持てるようになったら
たまには会いたいな。


「あたし、さ」

「ん?」

「思った以上に山田のこと好きみたいやわ」

「今頃気づいたん?あほやなあ」

「考えてること、ほとんど山田のことやねん」

「私も、さやかのことばっか考えてる」

「離れたくないなぁ」

「離れる予定なんてないで?」


不安なのはお互い様で。

あたしも無意識に不安やったんやなって。


やから山田が不安そうな目で見つめてきたとき
余裕を持って優しい目なんかできなかった。

やからこれからお互い頑張って
余裕が持てたとき
次は絶対、不安そうな目なんてさせないから。


「なら安心やな」





END

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