闇口の世界理論
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まぁ余計なことはカットして放課後の屋上にて。
きしむ扉を開けるとすぐにファンクラブ一同は揃っていて強気そうなギャルや黒髪の清純そうな子の視線が私を貫く。
「来てくださったのですね夜魅さん」
「はぁ…ずいぶん丁寧な招待状だったから」
前に出てきた会長…は招待状から推測出来たおっとりした笑顔の常識人っぽい人だった。
ぽいってとこが重要ね。
会長が話し始めた瞬間に後ろの会員は静まったところを見ると信頼されているようだ。
「お話の内容は先日の柳さまのことです」
柳さまだって。うわぉ
「あれは誤解だよ。唇の端でキスされたわけじゃないの」
「そうですか。けれど私たちの怒りを買ったのは確かです」
「いや、私が被害者だし。柳くんとなんかキスしたくないし」
会長さんなかなかストレートだなぁ…あれ、皆さんの視線がきつくなってる。最後の言葉は余計だったかな。
皆さんが怒りでざわめき立つとすかさず会長さんが手で制し静かにさせた。
「…問題なのは夜魅さんが特定せず、全員と恋人関係を築いていることです」
いやいやいや、恋人関係築いてないし。
ファンクラブからすればそう見えるのかもしれないけどさ、誤解だって。
でもファンクラブのお願い?は何となくわかった。つまりは独り占めするなら1人だけにして残りは私たちに寄こせってことか。
「不純な関係を見逃せませんし、これを機に彼氏を作って貰えませんか」
「言いたい事は分かった。彼氏ねぇ…」
ざっと思考を廻らす。幸村くんは盲目的すぎて却下でしょ、真田くんは結婚前提になりそうだし、柳くんはストーカーっぽくてやだ、仁王くんは狼だろうし、柳生くんもお堅い人だし、丸井くんも切原くんも可愛い弟って感じだし、桑原くんもいい友達。
結果、全員無理。というか考えるまでもなくさ、
「皆友達だから、彼氏とか無理」
「…困ります。私だけでは会員全員を止められませんし…」
流血沙汰になってからでは遅いですよね、と笑顔で言われてさすがに引いた。
最初から薄々思ってたけど幸村くんっぽい性格してるな…笑顔でエグイこと言ってくる。
「でも無理。はっきり言ってテニス部を彼氏になんかしたくないし」
私のこの一言で、ファンクラブが切れた。
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