二次創作小説
□マルコを愛した結果*アニメのみの人にはネタバレ
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夜の闇に紛れて姿を現したのは
死んでしまったはずの、俺の仲間。
「やあジャン。久しぶりだね」
「なんで……」
身体が固まって、思うように言葉が出ない。
「マルコ……」
闇が深くてすぐには気づかなかった。
両手でアニを抱えていた。
「本当に死んでると思った?」
死体を見た。はっきりと見た。
どうやって死んだか、いつ死んだかはわからない。
誰もその時を知らない……。
じゃぁ、俺が見た死体は?
「あれね、偽物だよ。」
「なっ……」
偽物?
「どうしてだ? どうして、そんな真似をして……!」
死んだふりまでして、
捕まえているはずのアニを持って、
「なんのために、そんなことを……? なんのために、みんなを、俺を騙したんだ?」
憎しみが湧いてこなかった。
感じていたのは恐怖や悲しみ、
そして……
「都合がいいと思ったんだよ。死んだことにしていたほうが動きやすかった」
笑みを浮かべながら、あっさりとそう答えた。
「なんだよ、それ」
「死ぬ者は大勢いるし、いろんな兵士がいる。死んだはずの僕だけど、顔を知らない人は大勢いるからね。君たちにさえ見つからなければ、僕は自由に動けた。民間人に紛れることも、兵士に紛れることも可能だった。混乱したときなんかは、みんな人のことなんて見てないしね。それに」
マルコの笑みが、凍りついた。
笑っているのに、笑っていると感じられない。
「死んだやつのことなんて、どうせすぐ忘れるだろ?」
「俺は!俺は!お前のこと忘れてなんて!」
「ジャンは、騙しやすかったよ」
勢い良く飛び出たはずの言葉が切られたようだった。
「あの偽物を見てたいした確認もせずに君が僕だと先走って言ってくれて助かった」
「マルコ……」
ジャンの目から涙が出てこようとしていた。
「国を、王を、王に、この身を捧げれるって言ってたじゃねーか。光栄だって……あれは……」
「もう気づいてんでしょ?その通りだよ。内地にはいって王を殺すのが僕の目的だった。巨人との戦いで思わぬ負傷を追ったせいで、作戦は変更して、死んだことにした」
マルコは抱えているアニを目を細めて見つめた。
「でも、結果オーライかな。動きやすさは増したし。なにごとも計画通りにはいかないからね。こうやって捕まえられたアニを助けることもできたし」
そう言って歩きだしたマルコは、ジャンの横を通り過ぎていく。
動くことができなかったジャンは我にかえったようにハッとして振り返った。
「待てよ!マルコ!」
その叫びにマルコは反応を示さない。
「待てって言ってんだろうがぁぁ!!」
持っていたナイフを構えて、マルコ目指して走った。
「マルコ!!」
「甘いよ」
ナイフがマルコの背中に刺さる直前の出来事だった。
マルコは回し蹴りをし、それがジャンの腕に直撃した。そのままよろめいてジャンは地面に倒れる。
「本気でこない君には負けないよ」
「く……!」
痛みと悔しさで声が出せなかった。
「言ったでしょ? ジャンは強くないんだよ」
「マルコ…!行くな…!」
「じゃあね、ジャン」
(僕らは、振り返ることを許されない)
待てと叫びたかった。
でも、涙がでてきてしまって、叫ぶことができなかった。
(ジャン、泣いてくれたことは嬉しかったよ。)
(僕の死をきっかけに調査兵団に入ったことも驚いた)
(強くなったね)
どんなことを言われても、憎しみは湧いてこない。未だに憎くない。
恐怖や悲しみはあったけど、
一番大きかった感情は、
一番の俺の気持ちは、
お前が生きていて嬉しかった。
end