二次創作小説

□兄貴分
1ページ/1ページ

「アニ、大丈夫かな?」
孤立するアニを見て小声でそうつぶやくと、
「なんとかなるだろ……」
素っ気なくそう言われた。

でもライナーはいつもアニを気にかけている。

「全く、ライナーは……。アニを挑発したら駄目だよ」
体術訓練のあと、肩をおさえて痛がっているライナーのもとへ僕は駆け寄った。
「サボってるあいつが悪いんだよ」

本当は嬉しかった。
一人でいるアニに理由をつけて声をかけ構っているその様は
兄貴分のライナーそのもので……。
僕にはうまくできないことだから。

でもだからこそ不安になる。
アルミンやエレンにも優しい。
誰にでもいい兄貴分になれてしまうその優しさが、
ライナーをどんどん苦しめていくんじゃないかって思うから。

「ライナー。大丈夫?」
「あ?こんな痛みくらいどうってことねーよ……」

僕が気にしているのは、それだけじゃないんだよ。

宿舎でもみんなに囲まれているライナーを
僕はずっと後ろから眺めている。
ライナーみたいに上手に喋ることができない。
うっかり何かを言ってしまいそうになるし、
親しくなるのが、怖いから。

「ねぇライナー」
「ん?」
食事を終え、みんなが宿舎に戻っていくところを見計らってライナーに話しかける。
「どうした?ベルトルト。今日はやけに食うのがおせーな」
みんながいてもいなくても、ライナーの態度は変わらない。
いつもありのままでいる、面倒見のいい優しいライナー。
「ライナーはこのままで大丈夫なの?」
「?」
心底意味がわからないという顔をされてしまった。
「このままここにいて」
きっと自覚はないんだろう。
「ライナーの心には、昔と変わらない決意がまだある?」

本当は聞きたくない。
こんなこと問いたくない。
でも不安になる。
不安が大きくなる。
傍にいるのに、いつも近くにいるのに、
遠くにいってしまうんじゃないかと、考えてしまう。

信用をしていないとか、そういうことじゃないんだ。

僕はここにいる誰よりも、優しいライナーを知っている。
優しくて兄貴分のライナーが大好きなんだ。

だからこそ、

「……安心しろ、ベルトルト」
少し黙ったあとに、ライナーは僕の顔を見てはっきりそう言った。

「俺は、俺たちは、故郷に帰るんだ。一緒に…!」

胸が熱くなった。

「それだけは、譲れない…!」

そして涙が出そうになった。

故郷に帰らないといけないんだ。
僕たちには絶対譲れないものがある。

でも、やっぱりライナーは優しいから。
僕と同じように目に涙を貯めているように見えた。


だから僕は願う。

どうかこれ以上ライナーが傷つきませんように。
ライナーの心が壊れませんように。

ライナーになにかあったら、なんて、
そんなこと考えるのは嫌なんだよ。

もしもライナーが消えてしまったら、
そんな世界、僕には意味がないんだ。

アニも、ライナーも、一緒に帰らないと意味なんてないんだよ。




end
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ