二次創作小説

□ジャンとマルコ
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安全な内地で暮らす。
そのための10番以内だ。
そのために頑張ってきたんだ。


「ジャン?」

エレンと言い合いになったあと、
なんともいえない空気に耐えられなくなったジャンは外に出た。

そんなジャンのあとを追って出たのは、同じ訓練兵であり、七位のマルコ。

「どうした?」

彼もジャンと同じく憲兵団を希望している。
しかし彼は純粋に王に仕えることを誇りに思っている優等生だ。

「なぁ、マルコ……」

ジャンのまわりはまるでくすんだ空気が張り付いているようだった。

「俺が、違うのか?」

みんなの空気が変わったのをジャンは感じていた。
エレンのほうに流されていっている。
まるでジャンの考えが間違っているんじゃないかって……。

「俺が変なのか?」

自分の思考が普通だと思っていた。
現にみんな、憲兵団に入りたいと思っていたじゃないか。
自分の命を犠牲にしたがるやつなんてそうそういない。
それが普通だと思っていたし、現にそうだった。

でも、どうやらエレンの夢物語にみんなのまれてしまったらしい。

「ジャンは変じゃないよ。僕だって憲兵団に入りたいし」
「俺は、おまえみたいな、まっとうな理由じゃねーんだ……」

自分の意見が変だと思ったことはない。
みんなが言えない心の内を、堂々と言っているだけ。
それは、変なことじゃない。

そう思っていたのに、何故か今は悔しくなった。

「内地で暮らしたい。平和な場所で、巨人のことなんか忘れて……」

ジャンの、握った拳が震える。

「ただ、俺は……」
「いいんだよ、それで」

ジャンの言葉を遮って、マルコは言葉を放つ。

「自分の思う通りにすればいいんだ。誰も責めない」

一歩前に出て

「僕は責めない」

そう言った。

「マルコ……。俺は……」
「そのままでいいから。誰しもがみんな強いわけじゃないから」

震える手をマルコの手が覆う。

「我慢なんてしなくていいんだ」

涙が溢れそうになる目を閉じる。

「俺は、悔しい……」

ポツリポツリと言葉を漏らした。

「でも、決心がつかない……」

「うん」

「最初からそんなもんない。だから今更流されない……」

マルコはジャンの言葉一つ一つにうなづいていた。

「どうしても、調査兵団にはなりたくねー」

「いいんだよ。悪いことじゃない。おかしいことじゃない」

握る手に少し力を込めるマルコ。


「弱くてもいい。生き延びる道を探すのは悪いことじゃないから」

 
 
 誰だって危険な目にあいたくない。
 誰だって死にたくない。

 それは普通だから。



「思うままに進もう。流されなくていいんだ。自分の思った道を迷いなく進んで」

 
 ジャンの言葉は、ジャンの思考は、ごく自然のものだ。
 責められることじゃない。
 流されないまま、自分のことは自分で決めて。

 そうして一生懸命考えて出した答えなら、
 誰にも責める権利なんてないんだから。




end
 

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