夢 短編
□もう伝わらない
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「サレ様!」
倒れている彼のもとへ駆けつける。
しかし、もう遅かったようだ。
「そんな……、サレ様……」
傍らにしゃがみこみ、そっと呼吸と脈を確かめるが、
もうぴくりとも動かない身体はその確認すらしなくても、
死んでいると分かるほどだった。
「……っ」
涙が溢れてくる。
彼が死ぬなんて思わなかった。
ヒューマにして四星の彼。
能力が高く、レイピアを使った剣術も相当なものだった。
残酷で冷酷非情。
人を痛めつけることで喜びを感じる。
そんな彼が嫌いじゃなかった。
あなたの部下であることを恐れる人も多くいたけど、
私はそのすがすがしさが気持ちよかった。
誰にも屈しず自分の考えを曲げない感じ。
誰に恐れられても、誰に咎められても
彼は自分を変えない。
嫌いじゃないどころか、
好きだったのかもしれない。