夢 短編

□仲良くなりたい大作戦
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マルコのことを好きだなと感じたのはつい最近。
気がついたら目で追っていて、
話しかけられて嬉しがっている自分に気づいたのは、
本当につい最近のこと。

訓練兵になって一年が経過した日の出来事だった。

「マジで言ってんのかよ?」
「マジで言ってんですよ」

はぁっとため息をつき、呆れた目で私を見てきたのは、
私の同郷で悪友でありマルコの親友であるジャン。

「馬鹿じゃねーの」
「はっ、なんで?!」

突然馬鹿と言われるのは、まぁなれているのだが、
言われ慣れているとはいえいい気はしない。

「どう考えてもだいぶ前からあいつのこと好きだったろ」
「……ごめんちょっと意味がわからない。ジャンも昔からマルコのこと好きだったって?」
「ちげーよ、馬鹿。なんでそうなるんだよ。お前だよ。隠してるのかと思ってたぜ俺は」
「……つまりあれか。無自覚でだいぶ前から好きだったってか?」
「そういうことだよ馬鹿鈍感女」
「言いすぎだろ」
と、言っても、それが本当ならかなり間抜けな話だ。


「ちなみにだいぶ昔ってどれくらいよ」
「半年くらい」
ジャンの言葉に私は呆気にとられた。
「え?そんなに?せいぜい一ヶ月とかそんなもんだと思ってたぞ」
「いや、本当そんくらいは経つと思うけどなー。お前マルコんときだけ明るくなるし頬が赤くなる」
「……え?そんなわかりやすい変化してるの?なにそれやばくない?」
「まぁ、マルコは自分に好意があるとか考えないだろ、多分」
「それならいいけどさぁ」

そこからは似たりよったりの話ばかり。
これがジャンに相談した一日目のできごと。

「ねえジャン、さっきマルコと何話してたの?」
「ねぇジャン、マルコを勉強会に誘ってくれよ」
「ねぇジャン、立体機動の事なんだけどマルコに教えるついでに私にも」

どうにかマルコともっと仲良くなりたい私は、
打ち明けた日からジャンに頼りまくっていた。

「お前最近うぜーぞ」
「えぇぇぇぇ」

げんなりとした顔でそう言われた私は、
不満だと態度で表すべく頬をふくらます。

「マジでうぜー」
「ひどいっすよジャンさん。それが同郷に言う言葉ですか」
馬鹿や阿呆は慣れているけど、うざいはなにげに傷つく。
「うざいもんはうぜー。っつか、お前意識しすぎて肝心のマルコと全然喋ってねーよな?」
呆れた目つきでジャンが私を見てくる。
「あ、さすが幼馴染!よく気づいてくれたね!」
あえて明るく私はそれに肯定した。
「んなのんきなこと言ってんなよ。意味ねーだろ」
「だってさー、なんか、もうさー、こー、ごちゃごちゃーって!」
「おい、通じる言葉を喋れ」
頭がいっぱいいっぱいになって、ごちゃごちゃな感情をそのまま口にしても伝わらない。

「だーかーらー、話したいけど、なんか、怖いっつーか」

自分でもよくわからない。
話したい。近づきたい。
そう思うと同時に、遠ざけたくて、近寄りたくなくなる。
好きで、好きすぎて、嫌われるのが怖い。
近づいて嫌われたくないから、遠ざけたい。
「……どうせ、叶わないしさ」
急激に声のトーンが下がってしまった。
もうちょっと面白おかしく言いたかったはずなのに、うまくできない。
「叶わないって、なんでそう思うんだよ」
私の声のせいか、ジャンも真剣な顔になる。
こういうところが、結構優しい。
「だって、どう考えても、マルコの彼女になるならおしとやかで優しい子って感じじゃん。私なんてお転婆の馬鹿だし」
似合わない。釣り合わない。そう考えたら嫌になる。
好きになる前に戻りたい。せめて自覚がない頃にもどりたい。
でも気持ちがとまらない。
自分の気持ちがよくわからない。
「今更じゃねーか」
「……まぁ、そうなんだけどさ」
こんなのは自分らしくない。
もっと、明るく、いつも馬鹿みたいと言われているくらいのテンションで話さないと。
「今更、だけど……ほら!あれじゃん!クリスタとか!ちょーお似合いな感じするよね!ミーナとかもさ!優しくて可愛いし!」
そう言った瞬間頭にべしっと衝撃を受けた。
「痛い」
ジャンが私の頭を叩いたのだ。
「なんだよぉ」

「そのへんにしとけ。お前のネガティブ思考は昔から止まらねーからな」

「……んー」
そっぽを向いてジャンに言われた言葉が、胸に刺さった。
多分あれ以上ヘラヘラしながら喋っていたらそのうち泣いていただろう。
突然涙が出てきて止まらなくなって宿舎に駆け込む羽目になる。
おまけにひとり部屋じゃないから誰かに見られるかもしれない。
下手したらマルコの耳にもそんな失態が届くかもしれない。

「話してこいよ」
「え?」
「次の訓練の時話せよ。近くにいてやっから」
「で、でも」
「話したら、少しはそのネガティブ思考もおさまるだろ。お前は単純だからな」
返す言葉もございません。
もしかして、今ネガティブになっているのはここ数日マルコとろくな会話してないからなのかもしれないし。
少しでも、いつもどおり、普通の会話ができれば、きっと今はそれだけで舞い上がる。
単純、だから。

「わかった。で、でも、絶対近くにいてよ!」
「わかったよ。ったく手かかるなお前は」

大丈夫、大丈夫、私には頼りになる幼馴染がいる。

「こ、今度ミカサとご飯食べるときジャンも呼ぶね」
「絶対だぞ」

頑張ろうと思えるのは、マルコが好きだからっていうのもあるけど、
多分ジャンが呆れながらもずっと私の話を聞いてくれるからなんだ。





end
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