緋弾のアリア 〜守護者とFランク武偵〜
□第16話 悲観論で備え、楽観論で行動せよ
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亜瑠SIDE
身体が宙を舞い、地面に叩きつけられる
「うぐぅ!?」
「はぁはぁ、危なかったぜ」
これで武藤君との徒手格闘の戦績が12勝48敗。勝った時は全て合気道の様な投げ技のみ。以前としてナイフでは勝てていない。
まだトラウマを解消出来ていないのだ
「まだまだだよ、やっぱり前みたいに何かきっかけみたいなのが無いと……」
「前?」
やば!?一真は長期任務って設定だからこの前の事件は秘密だった!!
「いやなんでもないよ、それより武藤君やけに強くなかった今日?」
あわてて話題を逸らす
「ああ、キンジがな…」
「うん大丈夫、もうわかったから」
あらかた、白雪さんが護衛の為と称して家に行った時の荷物を運ばされた後キンジと同棲するってことを知ったじゃないかな?
一応僕の部屋でもあるんだけどね
「だから亜瑠、やけ食いに付き合ってくれ!!」
「う〜ん、僕だけ外食って訳にもいかないし。奢ってくれるんならドリンクバーだけ付き合うよ」
「そうと決まりゃ行くぞ」
そうして武藤君につれられて学園島より少しだけ離れたファミレスに来ていた。
理由は近場だと家から逃げてきたキンジに出くわして武藤君とややこしいことになりそうだからだ。そして僕達は訓練で使った服を着替え、珍しく私服で出掛けた
「……それでさぁキンジ奴が…」
「ふーん、それ3回目だけどね」
「まず、何でキンジの周りだけにずば抜けた女子が集まる意味が分からないんだよ。普通の女子にはモテないくせに」
なるほど、スルーか
「まぁ、特殊な女子にモテるってのは同意するよ、アリア然り白雪さん然り理子ちゃんだってね」
だろ!、んでさ
と、武藤君が話を続けようとしたときに怒鳴り声が聞こえた。多分店内だ
「てめえ、どう落とし前つけんだよゴルァ!!」
「うっわ、ガッツリかかってんじゃ〜ん」
「こりゃ弁償だけじゃすまないぜ」
「で、ですがお客様が足を引っ掛けて」
「あ゛?コッチはお客サマだぞ!!口答えすんなや!!」
スキンとソフトモヒカンと………スッゴい特徴がない奴が店員に絡んでいた。どうやらスキンの男が店員に足を掛けてわざとつまずかせてコーンポタージュスープをかけてしまったらしい
ていうかそこはコーヒーじゃないの?
「何なんだよ、人がせっかく愚痴こぼしてる時にさ」
「そんな言い方だとまるで武藤君の愚痴に価値があるみたいじゃないか!」
「ねぇよ!!」
「………自分で言う?ていうかアレって営業妨害と恐喝だよね」
「でさ、マジキンジだよ」
「スルー!?しかもマジキンジって何!?」
このまま武藤の話を聞いているのも時間の無駄だし、もしかしたら単位が貰えるかもという小さな希望の下に仲裁に入ろうとした
「ちょっときみた「邪魔だ」」
急に二十歳ぐらいの男が女性店員とその胸ぐらを掴んでいるスキンの間に入った
「コーヒーはないか?」
「あ、え?…あ、はい?ございます」
「ならいただかしてもらう」
「は、はい。かしこまりました?」
状況が分かっていない店員を尻目に男は近くのテーブルに座る。テーブルには僕達と同年代ぐらいのポニーテールの女子が座っていた
その女の子の隣には剣道部が竹刀をしまう為に使う袋を持っていた、勿論中には何かが入っている
が、納得のいっていないスキンとソフトモヒカンと無特徴がわざわざその男の席まで来て怒鳴り散らす
正直耳障りになってきたよ
「てめえなんのつもりだ!!」
「邪魔すんじゃねえよ!!」
その三人に臆することもなく相席の女子が淡々と話す
「あなた方が何を行うつもりかは存じたくもありませんが、先ほどのは明らかにあなた方に非があります。大人しく下がってください」
あれじゃ更に怒りを煽るだけ、ここは大人しく従うべきだ
「だがそれは弱者の話だろ?武偵の小僧」
「…ッ!!」
一瞬だがものすごい殺気を受けた、それに私服なのに武偵だということがバレた
いや、何より
心を読まれた!!
「ノブキ様!」
「構うな!」
「いけません!抑えてください」
「ちっ、武偵の小僧。蘭華に救われたな」
少々の一声でノブキと呼ばれた男の殺気が霧散し、男はそれだけ言って店外へ出ていった。
後ろでは武藤君がテーブルに突っ伏しており、僕は知り合いらしき少女が近づく事に警戒しながらポケットのニューナンブに手をかける
「申し訳ございませんでした。我が主が公共の場でこのような事を。ですので手にかけた拳銃から手を離していただきたい」
「くっ!?」
見破られたことに驚きバックステップをとり拳銃を構えるが少女は以前として表情を崩さない
「ここでの発砲はお互いの為にはなりませんが?」
「そうだね、なら素性を明かしてくれないかな?君と君の主さんの」
「ノブキ様の素性は明かせませんが、私ならある程度は大丈夫です
私の名前は森蘭華と申します。職業は学生をさせていただいてました」
そう話す少女だが余り時間はとっていられない。もしさっきの男が僕に目をつけていれば殺される。それほどの殺気を放てる者が居るのだ、少しでも情報を手にいれるのが先決
「過去形?」
「中学を卒業以来あの方にお仕えしております」
「ってことは中卒…じゃあ今は何歳なの?」
「申し訳ございません、これ以上主様を待たせる訳にはいきませんので」
「あ、ちょっと…」
少女は入口で一度振り返り、軽い会釈をしてから出ていった。その背中には先ほどの袋を背負っていた。
決めつけたくは無いが真剣の可能性は高いと思った