緋弾のアリア 〜守護者とFランク武偵〜

□第18話 因縁の相手
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亜瑠SIDE



覗き込んだ窓の向こうには僕の方に砲台の穴を向けたロボがいた

「ボク、ナニモミテナイ……やっぱダメですかっ!?」

惚けるもロボには通じず、窓を突き破ってきた鉄球にヒヤヒヤする。

「強化ガラスなのにね……ん?」

僕の目がピンク色のガラスの破片を捉える……行けるかもしれない。


懐にしまっていたペイント銃を取り出して壁に潜み、近付くのを見計らい出る

「ペイント弾にはこんな使い方もあるんだよ!!」

そう言ってペイント弾を銃から発射し、寸分の狂いなく頭に直撃させる。

その弾丸は壊すのが目的ではない。
そう……



「目隠しだ!!」

ロボの頭のカメラ側にはピンクの液体がべっとりと付いていた
これを好機とみて、白銀のダガーで斬りつけようとする。

『カメラチェンジ、サーモ』

サーモ、
僕が知るサーモと名の付くカメラが一つ思い浮かんだ。

【サーモグラフィックカメラ】

人の体温を感知するカメラ。

『ホセイ C+ ホウダイツイカ』
「くそぉぉぉ!!……がはっ!」

2発同時に発射された鉄球は左足と腹に当たる。
幸い足は折れてはいないようだ。


「くそ!くそ!」
ダンダンダン!

自棄になりニューナンブの弾を使いきる。



あー、僕何やってんだろ
勝てるのかな?


「亜瑠!!なに寝てんだ!」

近付くロボに思い切りタックルをして吹き飛ばした青年を見る

「無糖君」
「だれがブラックコーヒーだ!つか、字見なきゃ分からん間違いをすんな!!」

そこには武藤君が立っていた。

「星伽さんの事が心配で来てみれば……なに大の字で寝てんだよ。ここは高原か何かか?」
「闘技場だよ」
「見りゃわかるわっ!」

武藤君は白雪さんが心配で来たと言ってるが、後ろのナッツを見ると明らかに僕の心配だろう。

「んで、なんだあの重いロボ」
「中に鉄球が入っていて鉄球を飛ばすんだ。武藤君銃ある?」
「悪いな、俺の一丁しかない」
「ならナイフある?」
「おう、ダガーナイフだ」
「ありがと武藤君」

軽く礼をして、ロボに向く

『テキホソク』

ロボは短くそう答えて二人それぞれに鉄球を放つ
僕はそれを交わし、武藤君は打ち返そうとする。……鉄パイプで。

鉄パイプはひしゃげ、鉄球は打ち返すことこそ出来なかったが、弾くことは出来た

「手がしびれる、なんて球の重さだ。メジャーリーガーか!」
「ロボだよ」
「だから見りゃわかるわっ!」

漫才で心を癒す、というのは口実で頭を使っている

「さて、どうする?」
「武藤君、武器を教えて」
「コルトパイソンとお前にやったダガーだけだ」
「よくそれで来たね…」
「いや、…まぁロジだし…」
「の前に武偵でしょ?」
「わ、悪い」

多分、どうにもなんないでしょ。


「諦めないけどねッ!」
柱を利用してロボの背後に回り、斬りつける。

「武藤君!!援護!」
「任せろ!」

声を張り上げると、武藤君はロボを撃ち意識を向けされる。
更にロボの上に乗り、乱舞で最も傷が付いた所にダガーナイフを思い切り降り下ろす


「割れろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

重力と降り下ろす力で、亜瑠に出来る最大のスピードでナイフと強化ガラスがぶつかり、破片が飛び散った

砕けたのは、ナイフの方だった

「亜瑠!!一旦戻れ!」
「大丈夫!まだお守りのナイフがある!」

懐のナイフに手を伸ばした
瞬間、ロボが上に飛んだ。
当然上に乗っていた僕は天井と挟まれ、衝撃が走り天井は砕ける

「グハッ……くそっ…」
「亜瑠!!てめぇ!」

根性で意識を引き留め武藤君を見ると、コルトパイソンごと鉄球を受け吹き飛ばされ、だめ押しともう1球が直撃し沈黙した。

『モクヒョウ、チンモク』

沈黙?

「起きてるけど?…ここで負けたら一真に会えないし、あそこまでして頑張った星川さんに申し訳が立たない」

『ホセイ C+++』
「ほとんど…根性だけどね!」

飛んで来た鉄球を転がり回避するが、転がるだけで激痛が走る。
考えろ!!考えるんだ!!今を切り抜けるにはどうするか。
先の、一真を取り戻した後の楽しい事を

一真を取り戻したら、皆でキンジ達のバンドを見よう。
確か武藤君がパーカッションを……そうだ!武藤君のコルトパイソンが有る!!

武藤君に駆け寄り銃を確認するが、どうにも故障しているらしい。


『【諦めろよ小僧】』


背中に悪寒が走る。
忘れもしない、一真が連れていかれた砂浜の事件で聞いた。ロボットの主

「諦めないよ、君が出てきたら尚更ね」
『【大切なものの為か?】』
「当然!」

口調から疲労を察せられないように滑らかにしゃべる。

『【下らん。大切なモノなど気付けば消えている。そういうものだ】』
「君は…そうみたいだね?」
『【そうだ、お前もそうなる】』
「一真は戻るよ。優しいから」

それは確信。
一真は確かに心が弱い。
初めて一真に出会い、次に出会った時は、一真の目は虚ろだった。
でも芯は一貫している。
そこにあるのは『守ること』だ

「勝手に約束したから、帰って来いって」

『【樊は帰って来なかった。一真も帰らない】』

急に声が小さくなる。恐らく樊は彼の彼女だろう。そしてその子は帰らなかった…

『【お前に俺の名前を少しだけ教えてやる】』
「少し?」
『【俺の名はクレア・アレキサンダー。お前の希望を奪う者だ】』

クレア・アレキサンダー……クレア…女!?

「ちょっと!女の人なの!?」
『【ああ、同い年だ】』
「しかも同い年なの!?」

いやいやいやいや!!
口調で決めつけるのは悪いけどさ、まさかの女!?


『【お前の希望は砕く、その前にコイツで消えてもらう】』
「消えないよ。君に希望を見せるためにも」

『【俺はお前が大嫌いだ】』


最後にそう言った後に通信が終わる。

作戦は決まった。ちょうどポケットで出来た所だ。

『ホウダイツイカ』
「無駄だよ。3つじゃどうにもならない」

3球同時に迫る、鉄球を交わして近付く
そして後ろに回り、レ・マット・リボルバーを取り出してガラス越しにカメラを狙う

「何で一真がこの銃を選んだかわかる?」

返事がないロボに続けて言う

「パーカッション式って言って、最大の利点は銃弾の作成だって言ってたよ」

『ホセイ B−−−』

「弾は片手間に作るしかなかった。暴発して僕の両腕が吹き飛ぶか、君のガラスを貫きカメラを壊すか―――」


「運勝負だ!!」


引き金を引くと同時に3球の鉄球が自身に直撃して吹き飛ばされた。

だが僕は見た

轟音を奏で放たれた銃弾が、ガラスをもろともせずにカメラを貫き反対側のガラスを突き破って飛び出たのを


「これが、希望の力だよ」

フレームが歪んだレ・マットを仕舞い、壁にもたれ掛かる。




『【そしてそれは叶わない。お前の希望と共に命も奪ってやる】』

「なっ!?」

カメラを壊したのに、自爆しない!?


『カメラチェンジ』
「く…そ!!」

そして僕は鉄球をもろに受け、もたれ掛かっていた壁と僕の意識のほとんどを砕き吹き飛んだ。
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