緋弾のアリア 〜守護者とFランク武偵〜番外編

□菅原一真と秋月マリア(2)
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あの会議が終わった次の日、また悔やんでいた。

何故、優那を選ばなかったか。
少なくとも優那を選んでいれば、こんなことにはならなかった。昨日も事情をしるマリアや夏希さんに兄さん、義治さんに責められるか内心びくびくしていた。
だけど、兄さんと夏希はまったく気にしていなかったし、義治さんは責めるどころかよくわからない助言をするだけで終わった。
ホッとした気持ちと申し訳ない気持ちでいっぱいだった。でも任務を選んだ以上切り替えて任務に取り組む。
それしか俺には出来ないから



「一真様、そろそろ登校のお時間ですよ」

襖の向こう側からそう聞こえ、準備していたカバンを肩にかけて登校した。


「おはようございます、菅原さん」
「おはよう土州。お前にいくつか聞きたいんだが?」
「分かりましたわ。少し付いてきてくださる?」
「ああ」

特秘の事だと察した土州は、人がまだ疎らな教室を抜けて生徒会室に入った。

「さて、特秘に関してですわね?」
「ああ、今日だろ?特秘が来るのは」
「はい、正確には今日の放課後辺りに任務が来ますわね。1週間位の期間ですが、そうですわね…貴方ならこの週末で終わらせれると思いますわ。掛かっても火曜日迄には終わるはずですわ」
「今度は随分具体的だな」

情報源が気になる所だが…今は気にしないでおこう

「私も出来れば応援に行ってよろしくて?」
「構わないが、他には情報とか無いのか?」
「あら欲張りだこと。まぁいいですわ、最後の情報」
「悪いな」
「特秘任務の内容は奪還か逮捕でしょう」

ここにきて二択か、そこはあやふやなんだな

「あやふやなのは仕方ありませんわ。全てが確定とは限りませんし。あと今日中に情報を仕入れておきますので、もう一度放課後にココで会いましょう」


土州がそう言ったところでチャイムが鳴り、教室へ戻った


そして放課後、校長室に直接の呼び出しがあった

「失礼します」

ノックして入ってみると、白髪の老婆が椅子に正座してお茶をすすっていた

「おやおや〜。君が菅原一真君かのぅ?」
「はい」
「何のようじゃ?」

いや、呼ばれたんですけど…

「ふぉっふぉっ、冗談じゃ冗談」
「は、はぁ」
「今日呼んだのはお主に特秘任務が来とるからじゃ」
「特秘ですか」

す、凄いな土州。
本当に特秘任務じゃねぇか…いや、信じてたけどさ。



「内容は…国宝級の代物を強奪し、強奪時に十数人に重傷を負わし逃亡の後に少女を拉致した

島津龍の逮捕、『刻静寂』の確保、菅原優那の保護じゃ。 安心せい、島津龍は生存さえしておればどんな状態でも構わんぞい。手足無かろうとここまでの犯罪を犯せば武偵三倍法で死刑じゃ。まぁ殺しても構わんがの?」

運命とはなんと皮肉なものだ。
この任務で、あの龍を逮捕する

「俺は人を殺しません。武偵ですから」
「そうかそうか。どちらにせよ…ある程度の事故は起きるもんじゃて」
「俺は…龍を逮捕します」
「ふぉっふぉっ、そうかそうか。詳細は担任から聞けば分かる、では頑張りなさい」
「はい」


校長に一礼して校長室を出て、職員室で詳細を教えてもらった

具体的には、任務期間は10日。龍の逮捕、優那の保護、『刻静寂』の回収
龍の場所は現在調査中とのこと


「マリア、お前は特秘に来るな」

教室を出て、迎えに来たマリアに言った

「何故ですか?」
「お前がいない状態でも戦える事を本家に証明するからだ」

半分ウソ。
実際、前の事件以来俺の実力は疑われている。だから証明するんだ。俺は戦える
だが本当の理由はもう1つある。
俺の戦う姿を見せたくないからだ。
今回は感情的になってしまう。凄く理不尽な理由で龍を捕まえて、いや、下手をすれば五体満足で龍を生かすことすら許さないかもしれない。
そんな俺をマリアには見せたくないから…

「分かりました。今回は本家にて大人しくしておきます。アズキもいいね?」
「きゅー」

可愛い声で返事をするイタチのアズキ

「それじゃ先に帰っておいて、俺用事あるから」
「用事ですか?私は一応装備科に顔を出す用があるので」
「装備科?」
「はい、なんでもこの前の模擬戦を見た教師に頼まれて」

う…、今更ながら悔しくなってきた

「そうか。じゃあな」
「はい」



マリアを見送った後、土州からの報告を聞くために生徒会室に向かった

「よお土州、待ってたのか?」
「待ちくたびれましたわ。埋め合わせを要求してもよろしくて?」
「特秘が終わったらな。デートはお断りだぞ、好きな人がいる」
「あの銀髪の彼女?」
「ああ、それより情報は?さすがに半日じゃ厳しかったか?」

当てた報復に言ってやる。だが、土州の答えは全く違った

「2日後に貴方の自宅から西に10kmほど行った海沿いの一番高い山の麓にある山小屋に島津龍は現れますわ」

俺はその山を知っている。
その山は優那の姉で俺の彼女だった千紗が眠っている山。

「心当たり、ありますわね?」
「ああ、この際情報云々は言ってられない。その日に龍は現れるんだな?」
「はい、ですが警告を1つ」
「なんだ?」
「彼は武偵を三人付けています。彼らは島津君が犯罪者だとは知りませんし、犯罪を起こす前に三週間契約を行っており…あなたを嫌っています」

三人か、ランクによるな

「そしてもう1つ。3つある山小屋の内2つはフェイク。
ですが2日後に島津君が入る南の山小屋には決して当日以外に行っては行けませんわ」
「南以外は?」
「同じです。出来れば山自体近寄らないで下さい」

感づかれるということか。

「以上ですね、頑張って下さい」
「何から何まですまなかった。いつか埋め合わせはするぞ土州」
「そうですわね…なら下の名前で呼んで下さるかしら?」
「下の名前?」
「玲愛(れあ)ですわ。土州玲愛」
「分かった。ありがとう玲愛」
「いえいえ」


その後、他愛のない話を一、二言話してから帰った。


そして明後日、土曜日…
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