緋弾のアリア 〜守護者とFランク武偵〜番外編

□菅原一真と秋月マリア(3)
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3月某日


優那と優姫には何も言わずに出ていった。
龍には謝罪した。謝っても謝っても謝りきれない。でも謝った。

予想外にも龍はすぐに許した。というよりは、負けた上に助けられたことを悔やんでいた。実質的に悪いのはアレキサンダーということが分かった以上、龍は自分に出来ることをし尽くすらしい。





本日は入科試験。
各々が入りたい科のランクを決める試験、方式日時は科によって違う。

ちなみに先週は装備科の試験でA、車輌科の試験でA、衛生科の試験でSを取った

そして今日は強襲科の試験。


「お前らとっとと集まれや!!」

怒声が飛ぶ、
兄さんのチームメイトである蘭豹という人物の声だ。
彼女は既に名古屋武偵女子校教師となることが決まっており、今回の臨時試験官も体験の一環なのだが…

「蘭豹、なんで俺巻き込んだの?」

兄さんも試験官となっている。

「うるさい、1人やったらめんどく…危険かもしれんやろ!!」
「本音でたな!!、今めんどくさいつったな!!」
「お二方、始めますよ」

そこに秋月マリアが居る。
正直マリアだけの方が上手く行くと思う。


「では皆さん。これより試験の説明をします。
ルールは単純です、これより案内する廃ビルにて自分以外全員を倒してもらいます。まぁ制限時間以内に何人倒せるかということです。
ちなみに受験生はここ以外にも集まっており、人数は教えられません。
また、ビル内には試験官が仕掛けたトラップがあるので注意してください。
では、今から30分後にスタートしますので、それまでにビル内に入っておいて下さい。なお、30分以前に攻撃を行った受験生は問答無用で転科となりますので悪しからず

ちなみに現在1人の受験者が遅れております」

次にマリアが音のステルスを使い、笛のような甲高い音を出した後にスタートと言った。



俺は廃ビルの螺旋階段の最上階に移動した。
ヘッドフォンを外せば、恐らく7階建のこのビルの上から三階までのある程度の音は拾えるだろう。

………例えば、真っ先にこの最上階に来たはずなのに、既にこの部屋に人がいること。
それも散乱したデスクの中ではなく。


「外の窓ガラスの下とは考えたな。」

窓ガラスと下の壁、床ごと手榴弾を設置する。

ビイィィィィィィィィ!!
警報のような音がなり、直後に手榴弾に向けてデザート・イーグルで爆発させる

同時に爆発で女子が吹き飛ばされた。

「いやぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」


この声で他の受験者にバレようが階段は3つしかない。しかも螺旋階段以外はトラップが仕掛けられている。
問題はないはずだ。


爆発で吹き飛んだ受験者ではない誰かをワイヤーガンで襟首を引っ掛けて、引き上げた。
そして問う。

「誰だ。少なくとも受験者ではないだろう?……待てよ、」

受験者じゃなければスパイ的な人か?
いや、武偵校の警備はこんな潜入が下手な奴を通すほど…ずさんじゃないはずだ

「もしかして、試験官…ですか?」
「うぐ…ええ、そうよ!!時斗先輩に単位で釣られて車輌科の試験官の木下よ!!」
「何で、釣られたんですか?」
「うぅ…買い物」

誑すのが上手い兄さんだなぁ。

「じゃあ、とりあえずロープ配られてるんで」
「へ?」

呆ける木下さんの足と手を縛って窓の外からゆっくりと下ろした。
その際に聞こえた"兄弟揃って最低!!…あ、でも新感覚"と聞こえたのはきっと気のせいだと信じたい。



それから20分位経過した後、ビルの中の人数があり得ない速度で減ってきた。

「相当な実力者。あの気だるそうな男と改造制服の金髪女か…」

確かにあの二人はオーラが違った。
そして足音でこちらに向かって来ているのは、恐らく男。


「10%解除」

凛に許可されたのは20%、だが10%で十分だ
足音を頼りに、数回跳弾させて狙い撃つ


ダン!!

螺旋階段の手すりに合わせて撃った弾丸はチュインという高い音を何度も鳴らしながら螺旋階段を降りていった。
その音に紛れるように、布でくるんだ手榴弾を階段に転がす。

数秒してから爆発が起きて熱気が来た。


「おいおい、容赦無いな。青髪」
「ほざけ、試験官四人ほど捕縛した奴に容赦なんて失礼だろ」

というより、爆発で空いた壁から爆煙に紛れてでて来るなんてな。

「よく分かったな。カメラでもハッキングしたか?」
「お前こそ面白そうな体質してんな」

鎌をかける、
明らかに女と接触してから少しオーラが変わった。
確証は無いが、試すには十分な理由だ。


「なんのことかな!!」

言い切ると同時に早撃ちを此方に銃弾を飛ばす。
それを身体をひねり、躱す

「おいおい、銃弾を躱すだと?。どんな訓練受けてるんだよ」
「生憎、撃つ場所とタイミングさえ分かれば出来なくはない!」

同じく早撃ちで対抗するが、右下から左上にナイフを滑らして弾く男

「お前も出来るんじゃねーか」
「君ほどではないがな。どうだ?お互いこんな所で負けたくはないだろう?
ここはお互いに退かないか?」

冗談だろ?
俺がお前に負けるだと?

「悪いな、ここでお前を倒して金髪の女を倒して終わりだ」
「たった二人でどうにかなるとでも?」

悪いがこっちは試験官倒してんだよ。…車輌科だけどさ

「何てことはない。試験官+α倒してるお前とかなりの実力者の金髪を倒せば問答無用でSだろ?」
「交渉決裂か…」
「ああ、そうだな」
「名前を聞いておこう。俺は遠山キンジだ」
「俺は菅原一真だ」
「覚悟しろよ菅原!」

足元に手榴弾のようなモノが投げられる、俺はそれを構わず近付く遠山を撃つ。

「くっ!?」

苦し紛れに銃弾を弾き、体勢を崩した遠山に向けて三発の銃弾を放つ

「く、そっ!?。ぐっ」

二度の火花の後、遠山はうめき声を上げた

「あの体勢で2発も弾くのか。お前、強いな」
「なぜ、グレネードがブラフだと?」
「地面に落ちた時の音が妙に高かった。まるで中が空洞のようにな」
「…その聴力、ステルスか?」
「さぁな!!」

こちらに向けた相手の銃口がピクリと動くのを確認し、横っ飛びに跳んで柱に身を伏せる

これで遠山は俺を狙えない。だが俺には跳弾で狙える。足音を聞けば場所も特定が可能。


好機と捉えた俺は、もう1丁のデザート・イーグルを取り出して柱の左右から壁に向けて銃弾を放つ。壁に当たり、跳ね返った銃弾は遠山を左右から襲った

「うぐぅ!?。跳弾までも
クソが!!」

大声を上げた遠山は自棄を起こしたのか、銃を無作為に撃ちながら本物の手榴弾を幾つか投げてきた。

爆発音をヘッドフォンで防ぎながら、弾を込める

「見込み違いだったか…」
「そりゃ残念だ」
「なっ!?」

こいつ、いつの間に…。

独り言に返事が返ったことに驚き声の方向を向くと、笑みを浮かべた遠山がいた。

「てめえ、いつの間に」
「聴力防げばお前は只の中距離型の武偵とみた」

目前に拳が見える。
それを間一髪で顔を横に動かして躱す。
だが、それに気を取られて鳩尾の攻撃に気付かなかった。

「ぐふぅ…」

遠山の膝蹴りが鳩尾に突き刺さる。
吐き気を必死に抑え込み、裾に仕込んだバネで射出するナイフを撃つ

「それはこの距離じゃないだろう」

ナイフが射出される前に、腕を弾かれて明後日の方向に飛んでいった

「ちくしょうが!」
「おいおい熱くなるなよ、大振りになってるぜ」

右フック、左ストレート。
放つ拳は軽く叩かれ外れる。一方で遠山の主に下半身を使った攻撃に至近距離で躱せずにいた。

なにか、打開策を

そう思いつつ、出来るだけ防御に専念しながら立ち回っていた時、

足元にあった、壁の破片が爆発を起こした。


「くふふ、やっぱ理子りんがイチバンだったね」
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