緋弾のアリア 〜守護者とFランク武偵〜番外編

□志摩亜瑠とトラウマ(2)
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目を覚ますと一真がリビングで本を読んでいるのが見えた

「おはよう、一真」
「お、目が覚めたか。せっかく料理作ったんだから食っとけよ」
「そんな薔薇的展開ごめんだね。それより武藤君は?」
「アイツならさっき帰ったぞ。武藤曰く寝てたから余り仕事は無かったらしいぞ」

本を閉じながら話す一真。

「そうなの?明日にでもお礼言っておかないとね」
「あー明日は違う人が看病に来るぞ。2人、んで明後日は1人看病してくれるぞ」
「え!?ついに明日レキさんが来るの!?」
「バカ言うな、ちょっと頑張ったからって自分の願いが叶うと思うな。だがまぁ、今晩の夕食ぐらいなら考えてやるよ」
「うぅっ!!」

酷いなぁ。まぁ確かに郷三郎は取り逃がしたけどさ…

「じゃあ肉」
「肉か…肉でいいならハンバーグでいいな。待ってろ」
「りょーかーい」

そうか、明日は二人か。武藤君は来ないんだったら不知火君かな?もう1人は…誰だろ?

「ねぇ一真。明日って誰が来てくれるの?」
「お楽しみだ」
「ちぇっ。そういやキンジは?」
「アイツならまだ帰ってないぞ。別件らしいけどな」
「へー。大変だね」
「言っておくが明明後日になったらお前には書類が待ってるぞ。それも少なくてキンジの倍、俺の1.5倍はあるぞ」

「へ…?」

「当然だろ?キンジに関しては周りの家屋等に被害はほぼ0で怪我人も0。俺は組長が死亡で家が一軒だけ倒壊。お前は負傷者が鉢柿組のほぼ全員が負傷、確か佐藤加奈と呼ばれる女性が1人重症だったな。そして組長は逃亡、組があったマンションは半壊。場所が場所なだけに修理より取り壊した方が楽らしいぞ
もう分かるだろ?一番やり過ぎたのが誰か。払うとしたらだいぶ高くつくな」

一真がミンチ肉と玉ねぎを混ぜながら非道な通告をする

「い、いくらですか」
「だいたい3桁には乗るな」

さ、3桁?

「なぁーんだ、なら大丈夫だよ。確か財布に五百円玉が二枚入ってるはずだよ。それで…ダイジョウブダ…ネ」
「現実逃避は止めろ、最後の方なんて棒読みじゃねぇか」
「だって僕にそんなお金あるはずないじゃないか!」

頑張って任務をこなして得た貯金と財布のお金合わせてもやっと二桁に届く位だよ!!

「だから代わりに立て替えてやってんだろ?」

え?

「ほら、ハンバーグ出来たぞ。むしろ俺が食わせなきゃいけないのか」
「ごめんね。それに色々ありがとう」
「気にすんな。代償は後で色々請求する」
「え?請求?ちょっと待って!詳しモガッ!?」
「黙って飯食え」


そうして口の中に強引に美味しいハンバーグを突っ込まれた。うん、美味しいね。

「これ食ったら薬飲めよ。薬飲んだら副作用で眠くなるぞ」
「昨日も思ったけど凄いねその薬。どこの?」
「Sランクの知り合いが作った薬だ。安心しろ救護科(アンビュラス)でも非公式だが使っている薬だ」
「一真ってコミュ障の癖に凄い知り合い多いよね…あぢぃ!?」

目に、目にハンバーグの肉汁が!?

「悪い、口と目を間違えた」
「どうやったら間違えるんだよ!!」
「ほら、似てるじゃねえか。二本線が有るか無いか」
「似てないしそれ字だからね!!しかも字を間違えても場所間違えるわけないよ!!」
「俺をみくびるなよ」
「カッコいいはずの言葉なのに凄いカッコ悪い!!」

はぁはぁ。なんか久しぶりにツッコミの役割を果たした気がする

「お前案外元気だな」
「誰のせいだよ!!」
「悪い悪い。ほら、薬だ」
「だから話を、ゴクン」

一真から渡された薬を口に含み、水と一緒に飲み込んだ。

「うげぇ、苦いぃ〜」
「良薬口に苦しだ、諦めろ」


それから一真はお皿を持って洗っていた。ちょうどその頃に眠気が来て身を任せる様に眠った。




翌日、ご飯を食べ終えると直ぐに一真は出ていった。今日の朝飲んだ薬は遅効性だが明日には右手だけは動くようになるらしい。それでも首は動くけど…

ピンポーン

「入ってくださーい」
「し、失礼しましゅ」
「!!!!」

インターホンの音を聞き返事をする。
驚いた
その声に返事するように聞こえた声が女子だった

「あ、あの…か、菅原くんに、言われて。来ました!にゃかそらちみしゃきです!!」

噛んでる噛んでる

「中空知さん?」
「は、はい。今日はご、午前だけお願い、って聞いたんで…あ!こ、これお土産で、す」
「果物?」

そこにはバスケット一杯に入ったメロンやリンゴ、ブドウにイチゴ、色んな果物が入っていた。

「そんな、悪いよ」
「気に、しないで下さ、い。トレーニング兼任務、みたいなもの…ですし。」
「トレーニング?まぁいいや。でもさ、正直僕いま手とか動かないからさ、一真とかに剥いて貰うよ」
「い、いえ。私が…剥いて食べさせま、す」
「え?」

なにそのギャルゲー的展開?初対面…だよね?

「ちょ、ちょっと待って。1から確認させて。君って一真の関係者だよね?」
「は、はい。同じ情報科(インフォルマ)の試験を受けました」
「ふむ、そういう知り合いね。でもそれならなんで君が?」
「あ、あの…菅原君と私って、ちょっとクラスで浮いてて…でも菅原君は私の人見知りを治、そうとして…」
「それで僕で人見知りを治そうと?」
「は、はい。志摩君…なら男の子に見えない、し。なら大丈夫、かなって」

誰が女顔でチビでFランクだああぁ!!僕Fランク気に入ってるんだぞ!!レアなんだぞ!!……まぁ弱いけど…
そうだよね…弱いからこんなことになってるんだよね…

「し、志摩君?気に触った?ごめんなさい!!お、お詫び。何かお詫びを…ミカン!ミカン食べさせます!!」
「え?な、中空知さん?」

急にワタワタしだした中空知さんはフルーツの中からミカンを取り出して剥き始めた。でも目をみると焦点が合っていない

「い、いいよ。その気持ちだけで十分だから」
「い、いえ!!おわっ、お詫びさせてください!!たた確か手を動かせなかったですよね!!た、食べさせます!!」

依然焦点が合わずワタワタしたままの中空知さんはミカンを剥いて
剥けたミカンを分割することなく、そして勢い良く迷いなく
僕の右目に押し付けた。

「ぎやぁぁぁぁぁ!!目がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

僕の目にクエン酸がぁぁぁぁぁ!!


「目がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ごめんなさいぃぃぃぃぃ」


いや、中空知さん。
叫びたいのはこっちだから。もう叫んでるけど




「落ち着いた?」
「は、はい。すいません…お茶まで頂いて」
「ううん、全然いいよ?それにお茶淹れたのも中空知さんだし。あ、それ一真の湯飲み」
「ぶーっ!!」

あ、吹いた

「ふぇぇぇ!?かかかか菅原きゅん!?かかか、かんしぇつきぃしゅぅぅぅ!?しょんにゃ1%\{, 8P>%+PT H`+,S」

うん、これが『普通』の男子と話す中空知さんか
ていうか後半とか話しているに入らないほどの言葉だね

「あ、大丈夫だよ。毎日一真が綺麗に洗ってるから」
「ははは、はい!!だだ大丈夫でしゅっ!?」

全然大丈夫じゃない

「まぁいいや。っていうかそんなに男に免疫無くて大丈夫なの?それに妄想だけでも日本語っていうか言葉すら話せてなかったよ?」
「い、いえ!!その他の人なら多少は…」
「ん?じゃあ一真は特別?」
「そそそんにゃ!!特別なんかじゃ!?」

うっわ、分かりやすいなぁ…

「で、一真との馴れ初めは?」
「だから。かか、菅原君とは、そんなじゃぁ違う…から、その、」
「ぷくく、わかったわかった。じゃあ一真との出会いは?」

聞き方を変えると恥ずかしがりながらも話してくれた

「最初は通信科の試験で会って、私は青い髪の珍しい人だなぁと思っていたんです。志摩君は通信科の試験で不正が有ったことを知ってますか?」
「うん、確か今の3年とその妹だった子が不正をしたってヤツだよね?名前までは知らないけど」
「そうです。実はそれが大いに関係があるんです」





中空知SIDE


私は入学してから両親の影響等もあって通信科の試験を受けた。試験自体は聞く限りさほど難しいものでは無かった。何か突発的な妨害やアクシデントさえなければそれなりのランクに就けると思っていた
受験生の中に一際目を引く髪の色をしている男子がいた。青い髪にヘッドホンをしたカッコいい男子。
今は受験生の女子が彼に話し掛けているけど、私は極度のあがり性だ。話し掛ける所か話し掛けている自分を想像するだけで顔が紅潮してくる。

そんなことを考えているとさっきの女子が今度は私の方に近付いてきた。
その時に私は変われるなんて考えていた。この子と会話が上手く出来れば友達も出来て、今までのイヤな自分を変えられるて思っていた。

「ねぇ、アンタ名前何?まさかあの屁理屈野郎と同じで話さないなんてこと無いわよね?」
「あの…な、なかそ………です…」

でも無理だった。
彼女の高圧的な態度に臆してしまい、いつものように舌足らずになった。いや、彼女のせいではないはずだ。きっと私は優しく話されていても無理だっただろう

「はぁ?聞こえ無いんですけど?あーもう良いや、正直アンタみたいな根暗と話すのも嫌だったし…
ああ、めんどくさ。そうだ、アンタにも面白いことしてやるよ」



その女子がそう笑ったタイミングでチャイムがなり、試験用の個室に向かった
その試験室には試験官が言っていたデスクトップパソコンではなくノートパソコンだった。しかし以前から私はノートパソコンを良く使っておかげでさほど苦労せずにクリア出来た。

その後、休憩室に帰ると先ほど私と青髪の彼に話し掛けた女子と鉢合わせた。すると彼女はこちらの顔を見るなり露骨に舌打ちをした。

「んだよ陰気女。とっとと落ちろよ、うぜぇな。あんな試験クリアした位でいい気になるんじゃねぇよ」

そして彼女は私の肩に無理やり肩をぶつけた。その衝撃を虚弱な私は耐えれずに尻餅をついた

「あ、ごっめ〜ん。影薄くて分かんなかったわ〜」

泣きそうになる心を抑えて、一番端に空いていたベンチに座って耳をふさいでいた。
彼女は私の後に帰ってきた青髪の彼に怒鳴っていた。その後に男子が1人彼女に怒鳴って口論になっていた。その間も私は耳を塞いでいた。


そして次の試験
私は試験室に入りパソコンを起動させるとロックが掛かっていた。そのロックは予想以上に固かった。一瞬だけだけどこんな私が武偵なんてダメだったんだと思う位固かったが、なんとか終了五分前にロックを解除して、全てを終わらせて戻った。



「見なよ皆!あの英雄症候群、落っちゃった!!
これでわかるよね、誰につくか…?」

まただ、やはりこんなのは良くない
私なりに決意した。ちょっとでも、ちょっとでも変わるために。

「あれ?陰気女なにしてんの?空気読めよ」
「あの、こんなの…ちょっと……」
「はっきり喋れよ!!」
「ご、ごめんなさぃ…」

その時のことはほとんど覚えていない。恐怖が身体を包んでいたこと位だ
でも彼は違った。彼は私と違って強かった。

「うるせぇなぁ!!馬鹿!!。上辺だけのメッキなんざ直ぐに剥がしてやる」
「うるさい!!負け犬!!」

彼女が叫んだ後、彼は私の隣に座ってくれた。ただ震えていただけの私を助けてくれたんだ。
多分私はその時に彼に惚れていたのかもしれない。

そして次の試験。この試験さえクリアすれば後は最終試験だけだ。
私は絶対にクリアするんだ、それで彼に告白は出来ないだろうから先ずはお話をしよう。
そう決意して試験を受けた。
その試験は難易度がおかしかった。
ただでさえ難しかった試験内容だったのにその途中でパソコンの電源が落ちた。私は頑張った。焦らずに電源が切れる前の音声を書き取って、復旧次第に取捨選択をしてなんとかクリア出来た。
でも危なかった。
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