緋弾のアリア 〜守護者とFランク武偵〜

□第16話 悲観論で備え、楽観論で行動せよ
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時斗SIDE


ある喫茶店の1席、現在その席には5人の人物が座っていた。
どこにでもあるような一般的な光景だが明らかに異質なオーラの様なものを纏っていた

その5人が協力すれば国一つは簡単に制圧出来る。
そこにいるのはRランク級が2人、Rランク落ちが2人、Sランク1人


一人は車椅子の女性、一人は白髭を生やした老人、一人は腰に刀を携えている男、一人は18歳にも満たない少女、そして最後に防衛省のとある部署で最高の権限を保持する防人時斗。


「まさか生きてるなんてな、信鬼」
「勝手に殺すな」
「久しぶりね蘭華ちゃん」
「お久しぶりです、茜さん」
「ふぉっふぉっ。よもや主らとこうして顔を合わせる日が来るとはの」

各々が自由に喋る。

森茜(もりあかね)
蘭華の姉であり防衛省の歴代最年少大臣

立花竜厳(たちばなりゅうげん)
この中で最も高齢で元公安0課課長であり。信鬼が一番弟子、二番弟子には島津龍がいる。

織田信鬼(おだのぶき)
かの有名な織田信長の末裔。魔王と称され超人ランクにも入っており、時斗の高校時代のチームメイト

森蘭華(もりらんか)
代々織田家に仕える一族の次女。超能力者


この五人が揃うのは高校以来だ


「話の内容は分かっておるな?」
「承知している」
「来るべき宣戦会議(バンディーレ)についてですね」
「随分と早いとは思わない?」

確かに早い。少なくとも宣戦会議をするのは半年以上先だ。それに下手をすれば何十年と先になるかもしれない。問題はプロフェシオンの寿命次第だが

「先ずはこの中の半分以上がイ・ウーに入っているということじゃ」
「チッ。やっぱばれていたか」

いつかは気付かれるとは思ったが、こんなに早いとは。さすが老いても元Rランク

「履き違えるなクソジジイ、我は奴の配下等に加わった覚えはない」
「私もです、私が仕えるのは生涯信鬼様だけですので」

その挑発的な発言に眉をピクリとさせた竜厳

「ふぉっふぉっ、面白いのぅクソジジイとな?」
「ああ、我は強い。主ら等に腹の足しにもならぬぞ」
「小僧も随分と偉くなったのぅ、じゃが少々いきがりすぎじゃな。軽い口だけなら子供でも叩ける」
「殺るかクソジジイ」
「口の聞き方から教え直しじゃなクソガキ」

殺気を振り撒く信鬼と髭じじい。さすがに不味いとみた茜さんが止めに入るが、

「あなたたち抑えなさい」
「黙れクソババア」
「なっ!?……誰がクソババア?言ってみなさいよ。一瞬で自分の身体と首仕分けさせてあげる」

年という点を突かれた茜は案の定一瞬でキレる
なぜここまでキレんだよ、22歳だったら若いじゃんかよ。

「どうした時斗、生来のビビり症が治っていないのか?」
「あーハイハイビビりですよ」

アイツはこういう奴だ、いちいち目くじらなんて立てていたららきりがない
まぁアイツもただ1人の言うことだけは聞き入れるんだがな


「信鬼様、お止め下さい。お二方もこんな所で争いを招くのは本望ではないかと?」

蘭華は表情を変えずに言った

「……そうね、少し大人気なかったわ」
「ふぅ、年端もいかん者に諭されるとは。年は取りたくないのぅ」
「ふん!!」


相変わらず蘭華ちゃんは凄い。
全員自分より格上で戦えばすぐにやられるだろうが、物怖じしない言い方は信鬼の側近らしい

「話を戻して良いか?問題はイ・ウーなんだろう?」
「それはもうよい。問題は紫紫の方じゃ」
「紫紫がか?」
「ええ、貴方が放浪している間に紫紫の女神が一度だけ出現したの」
「やはりあの鼓動はそうでしたんですね?」


紫紫の女神、シシイロカネに眠る女神で色金のなかではよく喋るらしい
それに殻が無い分顕現しやすい
それがこの前の司馬が関わった事件で覚醒した

「一番の問題は紫紫自体が自らの意志を持ち覚醒するための涙を生もうてしてるということじゃ」
「世迷い言を。そんな話聞いたこともない」
「私たちだってそうなら良かったんだけど」
「つまり紫紫神として覚醒する為に紫紫がどうにかして涙を紡いでいると?」


そこまでばれていたのか、少し早いな。しかし『紫巫女』は誰かは分かっていないみたいだな

「つまりは我らで捜索せよと?それこそ戯れ言よ。蘭華、帰るぞ」
「はい」

席を立つ信鬼、もう少し話したかったし蘭豹や夏希の事も話したかった

「つーわけだ、解散だな。お二人さん」
「やはり奴は引き込めんのぅ」
「自由気ままだけが取り柄だからね」
「ていうかキレてた人がそれを言うのもどうかと思いますね」

「「………」」


ホントに蘭華ちゃんが居てくれて良かった。ココでのぶつかり合いなんて不毛以外の何でもないからな

「あと、俺がイ・ウーに入ってたことは謝ります。それでは私用がありますので」

そう言ってその喫茶店をあとにした

俺の目的は紫紫神の覚醒、その為にわざわざ武偵高にアイツを転入させたんだ。
全てはキレイな歯車を持ち、決められた風に廻るだけ。それも含め全ては紫紫色金の思うがままに……



時斗の去ったテーブルでは二人の人がコーヒーをすすっていた

「日本の防衛三傑とまで讃えられた我らは何処にいったのじゃろうか」
「何処にもいってないはずですよ、いつ見ても時斗君の目の光はかわってませんから」
「ふむ、そういうことにしておくかのぅ」

「ええ、……そのまっすぐが過ちでなければいいけど」
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