十三代目の思い出


□秋雨と夜
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奈津は手拭いを握ったまま、少年の寝顔を見つめていた。
自分より少しだけ歳上のこの少年は、目が覚めた時何を思うのだろう。
奈津は少年の濡れた身体を拭こうと思い、手を伸ばした。
「?!」
少年がパッと目を開いた。
「あっ、ごめんなさい …起こしてまって…。」
「いや…。」
少年は黙ってうつむいた。
「濡れたままだと、風邪をひいてしまいます。」
奈津は立ち上がろうとした。
「これぐらい平気だ。」
少年は手で制して言った。
「いいえ。だめです。」
奈津ははっきりと言い切って少年の腕を掴んだ。
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