十三代目の思い出


□別れと
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少年は度々、奈津がついて来ているか気にしながら進んでいた。
林の中を進むと、目の前がひらけてきた。
「…ここが。」
奈津が呟いた。
よく陽が当たり、心地よい風の通り抜ける崖だった。
大きな石の前に少年が立った。
ザァッ………と風が吹いた。
奈津には、少年の背中が泣いているように見えた。
「……。」
少年の名を呼ぶことができなかった。
(私は泣きませんから。)
眼前が歪んできた奈津は、空を見上げた。
(だから、あなたは気が済むまで泣いてください。)
痛い位に青いそらが、突き抜けるように広がっていた。
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