アイス

□あいしてるんです
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あいしてるんです




好き
好きなんです、マスター
この気持ちは
いけないものなんですか?




「じゃ、いってきます」
「いってらっしゃい、マスター」

今日もいつものようにマスターを会社へ見送る。
本当は離れたくない。僕のマスター。僕だけのマスター。

「良い子で待ってるんだぞ」

ああ、でも貴方がそう望むなら。大好きな貴方のために。

僕がマスターの元に来て数ヶ月。最初は何ともなかった。マスターはとても優しくしてくれたし、何の不満もなかった。けれど、時々異変を感じるようになった。バグかもしれないと怖くなった僕は、マスターに捨てられたくなくてこっそりネットで調べた。そしたら、似たような症状の書込みがあった。
胸の中の黒い何か。強く何かを求めるような、悲鳴をあげているような、何か。
複数の情報からわかったことは、いわゆるヤンデレというもの。僕の症状はまだ初期段階らしいけど、いずれは………
嫌だ。マスターを傷つけるくらいなら、廃棄されたほうがッ……
症状を和らげる方法も見つけた。気持ちが大きくなりすぎるのを抑えればいいらしい。大丈夫、できる。マスターのためだから。




今日もマスターの帰りを待つ。早く帰って来て欲しいと思いながら。

「ただいまー」

帰って来た!
僕はいつもどおり玄関でマスターに笑いかける。

「おかえりなさい、マスター」

そしたらマスターは僕の頭を撫でてくれる。それが嬉しくてマスターに抱き付いて、マスターは僕を半ば抱えるようにリビングまで歩いていく。
今日はこんなことがあった、こんなことをした、とお互いの一日を振り返る。最初の頃の黒い何かはもうない。だってこうして僕が知らないマスターを少しずつ知っているから。僕だけが、マスターの全てを知っている。他の誰も知らないマスターを、誰でもない僕だけが。

黒い何かはもうない。
だから、大丈夫。もう、大丈夫。マスターを傷つけることもない。だから、マスターと離れなくてもいいんだ。ずっとずっと一緒。

ね、マスター?




******




「カイト、大丈夫か?」

マスターを会社へ見送るとき、不意にそんなことを言われた。大丈夫?大丈夫ですよ?

「?大丈夫ですよ?どうしたんですか、マスター」
「いや、何か元気なさそうだったから」
「僕は元気ですよ?マスターにも分けてあげます!」
そう言ってマスターに抱き付く。マスターは驚いた顔をしたけど、すぐに僕を抱き返してくれた。

「あーもう、可愛いな!こんちくしょー!」
「行ってらっしゃい、マスター」
「ああ、いってきます。今日はちょっと遅くなるかも。飲み会…まではいかないけど、付き合いでさ」
「わかりました。じゃあ、晩ご飯は食べやすいものにしますね」
「悪いな」
「いえ。だからマスター、なるべく早く帰って来て下さいね」
「ああ。良い子にしてろよ?」

マスターはそう言って笑いながら出掛けて行った。良い子だなんて。僕はいつも良い子にしてますよ。今日だって、美味しい晩ご飯作って待ってます。だから――早く帰って来て。
そうしたら―――――














ずぅっと一緒ですよ






もう、何処にも行かせない。




邪魔する者は僕が消しますから


安心して下さいね






嗚呼
マスター
早く帰って来て


だってこんなに愛してるんです

END



アトガキ
ヤンデレ書きたくなったんです!
こう、本人が気付いてないうちに悪化してるってのを書きたかったんです。
なにやらいつにも増して展開早い気が……

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