アイス

□悪い癖
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「ねぇ」
「……」
「ねぇってばー」
「……」
「ゼロー!!」
「……何だ」
「暇」
「よかったな」




悪い癖




さっきからゼロが全く構ってくれない。というかここ最近あんまり一緒にいない。
いや、いることにはいるんだけどゼロは本を読んでるから俺は暇なんだ。読み終わるのを待とうかとも思ったが、その本はこの前買ったばかりでしかも分厚い。だからこの方法は却下。

「ゼロー」
「暑い」

せめて、と思い向かいのソファからゼロの隣に移動すると、ものすごくうざがられた。ふーん……そういうことしちゃうんだ。
俺は無言で立ち上がってゼロから離れる。そのまま自室へ向かう。

「……イチ?」

ゼロの不思議そうな声が聞こえたけれどもちろん振り返りもしなかった。




*****




あれからケータイも財布も持たずに外に出てきた。なんとなくブラブラと宛もなく歩いていたけれど、脳裏に浮かぶのはゼロのことばかりだ。
好きだと言ったとき、とてもビックリして真っ赤になって……それでも小さな声で俺もと頷いてくれた。手を繋ぐのも、キスも、それ以上のこともしてきた。でも――

「俺だけが……」

俺だけが……浮かれていたのか……楽しかったのは、俺だけで……ゼロは、そんな俺に合わせていただけなのか…………。

「なーんて。真面目に考えればこんなとこかな」

でもこういうのは柄じゃないんだよなー。少なからず沈みはしたけど。

「ん?結構歩いたな」

家からだいぶ離れたところまで来たようだ。その割りにはあまり疲れていない。

「♪〜♪〜♪」

小さくお気に入りの曲を歌いながら歩いていると、散歩中の親子が向こうから歩いてきた。男の子は母親の手をほどいて俺の方に走ってきた。

「お兄ちゃん、お歌聞かせて」

小声で歌っていたはずなのに、この子には聞こえたみたいだ。母親が慌てて男の子の手を引く。

「こら!いきなり失礼でしょう!……すみません」
「いえ、歌うの好きですから」

そう言ってニッコリ笑うと、「歌って歌って」と男の子が俺の服を引っ張った。

「一緒に歌うか?」
「うん!」

男の子も知っているだろう童謡にして一緒に歌い始める。
楽しそうに歌う男の子を見て母親も嬉しそうに笑っていた。

「ありがとうございます」
「お兄ちゃん、ありがとう!」
「ああ、またな」

親子と別れ再び歩き出す。




*****




夕方、そろそろ暗くなるかなというくらいに家に帰ってきた。が、様子がおかしい。外から見た分には明かりがついていなかった。

「ただいまー……」

行ってきますを言ってなかったから違和感があったが、それでも不安をぬぐうように言葉にした。
リビングも真っ暗だったがうっすらと物は見える。ソファに人影が見えた。

「…………ゼロ?」

バッとこちらを振り返ったゼロがしがみついてきた。

「……ッ!め、なさっ…ごめんなさいっごめんなさいッ!ごめ、さぃ……め、なさっ」
「ゼロ?どうしたの!」

ごめんなさいと泣き続けるゼロはすがるように俺を離そうとしない。

「ゼロ、落ち着け!どうしたんだ!」
「ごめんなさい……捨てないでっ……置いて、かなぃで……ッ!」
「ゼロ!!」

ぎゅぅっと抱きしめるとゼロは大人しくなった。最後の置いていかないで、から察するに何も言わずに出てきたのが原因か……?

「ぅ……ふ、うぅ……っ、ぃち……」
「ん?」
「すき……だぃすきっ……だから……ッ!」

未だに涙を流すゼロの口を塞いだ。びっくりしたのか目を見開いたゼロは恍惚と目を閉じた。



*****




「落ち着いたか?」
「…………うん」

キスをして抱きしめて髪を撫でて、やっと大人しくなったゼロをソファに座らせた。濡らしたタオルと紅茶を用意して隣に座るとゼロが不思議そうに俺を見た。

「目が真っ赤」

そう言って優しく涙で濡れた顔をふいてやった。恥ずかしそうに頬を染めて目を閉じるゼロはとても可愛らしかった。

「ん……こんなもんか?」
「…………ありがと」
「しっかしあんなに必死になるなんてな」
「〜〜ッ!イチが!帰ってこないから!!」
「ごめんって……あんな態度とられりゃちょっとは傷つくんだぞ?」

ゼロが泣きそうな顔をした。
俺はすかさず続ける。

「怒ってないって……それと、泣くぐらいなら啼いてくれよ」
「イチ!!」

ニヤニヤしながら言うとやっぱりゼロは怒った。でも――

「久しぶりにシタイだろ?」

耳元で低く囁くと、ゼロは真っ赤になった。有無を言わさずゼロを姫抱きして寝室に向かった。

「い、イチ?」

ベッドに転がされ俺を見上げる瞳には期待の色も見えた。

「大丈夫だ。愛してる、ゼロ」

その一言でイチは安心したらしく余計な力が抜けた。




*****




「ん……あぁっ、やぁっ……も、やめ」
「まだだーめ」

濃厚なキスで蕩けるような声をあげたゼロと既に三回。いつもよりペースが早いのもあってゼロはやめて、と訴える。

「まだ欲しいだろ?」
「ひゃんっ、ぁ、そこ……ッ!らめっ……やん、あ、ああッ!」

でも俺は知っている。口では否定しながらも、もっともっと、と擦り寄ってくることを。これが無意識なんだから驚きだ。
イイトコロを突き上げてやればゼロはさらに高い声をあげた。

「あああああッ!!らめぇぇぇ!も、ああんッ!や、あ……ぁんっ……ち……イチっ」
「何だ?」
「ぁ……きす、して…あっ、はぁあん」

今のはイクかと思ったんだけどなぁ……
ゼロの体を抱き上げ、膝にのせるとお望み通りキスをする。

「んあッ!やぁ……ふ、かぃっ……ひゃあんっ……んっんんぅ……っ!」

ゼロが白濁を吐き出した。キスした瞬間イクとか可愛すぎだろう。

「あ……はぁ、いち……」
「さ、もう一回頑張ろうか?」
「え?や、もっだめッ……きゃぅッ!あ、ぁんっ」

そうは言っても明日になったら仕方ないなって許してくれるんだろうな。
「それをわかってて無茶しちゃうのが」


    俺の悪い癖だな


(動けない……)
(まぁあんだけヤればな)
(もぅッ!イチのばか!)
(ごめんごめん)
(キスしたってゆるさない)
(えぇ。じゃあどうしたらいいの?)
(…………一緒に、いて)
(もちろん)



END

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