灰色の空

□勢いで降赤を書いてみた
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ふわふわしている意識の中、僕は辺りを見渡す。誰もいない。愛しい姿は見えない。愛しい声も聞こえない。

「……どこ?」

名前を呼んでくれる君は
この体を抱き締めてくれる君は
僕を愛していると言ってくれる君は


どこにいるの?


「光樹……」

すがるように名前を呼ぶ。
けれど応える声は聞こえない。
嫌だ。
ひとりは……嫌だ。
どこ?
光樹 君は
僕が愛する君は何処に――





「…………ッ!征!大丈夫?」
「こ……き?」
「良かった。やっと目が覚めたんだね」

心配そうに覗き込む光樹と見慣れた室内。
僕は……眠っていたのか。

「すごいうなされてたみたいで、心配したよ。怖い夢でも見たの?」

夢…………そうか、夢だったのか
現実ではなかったと安堵したけれど、不安は拭えない。
もしも、今の夢が現実になってしまったら

「征?」
「……光樹」

手を伸ばそうとして、やめた。
こんな、みっともなく誰かにすがるのは『赤司征十郎』じゃない。
泣いてはいけない。
頼ってはいけない。
求めてはいけない。

じゃあ、僕は…………何をすればいいの?どう在ればいい?
いつまで、周りが望む『赤司征十郎』を演ればいい?
僕はどこ?


ふと、温もりが近付いた。

「俺は、征みたいにすごくないし、キセキや先輩達みたいに特筆したものもないけど」


ここに
征のとなりにいるよ?


「俺は――征が在りたいと思う、征を望むよ」

だから、安心していいよ。
そう言われ光樹の手が涙を拭った。その時初めて自分が泣いてることに気付く。

「ぁ……こ、き」

伸ばそうとした手をひかれ、優しくけれどしっかりと抱き締められた。

「…………光樹」
「……うん」
「……こう、き」
「うん」
「光樹」
「うん。ここに、いるよ」
「…………あり、がと……ッ!」

頬を涙で濡らしながらぎゅうっと抱きつく。
頭を撫でてくれる手が、優しく微笑む瞳が、温かな言葉を紡ぐ口が、全てが愛しい。

「すき……大好き…光樹」
「うん、俺も。大好き、愛してるよ征」



END

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