鬼滅の刃

□煽られ炭治郎の憂鬱
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ふわふわと微睡む。
この場所は柔らかくて暖かい。
深い深い眠りの中。
それでも聞こえすぎる俺の耳は、辺りの音を拾ってしまう。

…音…衣擦れの音が聞こえる…
それから…俺の名前を呼ぶ声…
息遣い…
熱い血の巡る音…

俺が何よりも大切に思う…泣きたくなるほど優しい…綺麗な音…。

安心して微睡み続ける。
「た…んじろ…」
俺の唇が音を紡ぐ。
炭治郎の音。
俺が何よりも大好きな音…。





…ふ、と微睡みが浅くなる。
もう朝なのだろうか。
うつらうつらしながら薄目を開ける。

まだ暗い。
ほんのりとした明るさ。
ならまだ眠っていても良い時間だろうか。
寝返りを打とうとしてそれに気付く。

…腕が動かない。
いや、動かせない…。
急激に覚醒へと向かう。
腕。
動かない。
どうして。
怪我したんだっけ?俺。

…していない。そのはずだ。

ようやく覚醒した頭を振るう。

…布。
柔らかい布で、それでも固く縛り付けられている。
だから動かない。…動かせない。
どうして。
それに…寒い。
何故だか…寒い…。


「…あぁ、起きたのか、善逸」
声がする方へと顔を向ける。
いつもと同じ柔らかな笑み。
泣きたくなるような優しい音。
それなのに今は、その音にカツン、カツン、という不協和音が混ざっている。

…怒っているのか。
何故。




昨夜のことを思い出す。
近くの村が鬼に襲われた。
村人が幾人も死に、新たな鬼が産み出された。
力のある鬼から血を分けられたのか、それとも鬼の血を浴びたのか。それはわからない。
新たに産まれた鬼は、人を傷つけはしたが殺してはいなかった。
ならばと、殺すより捕獲しようと隊士達は動いていた。
きっと、藤襲山へと送り込むために。

なのに、駆けつけた隊士が、一瞬の間にその新しい鬼の首を刈り取った。


「カスに、よろしくな」
その隊士は炭治郎にそう言ったという。
「気配がする。頭が黄色のカスが近くにいるだろう」
炭治郎に向かってそう言った。
「昔から散々嬲って遊んでやったが、相変わらず弱虫のカスのままか」
醜悪な声で笑うその顔は、月光の陰となりよく見えなかったという。
「どれだけいたぶろうが汚そうが、あいつは俺のことを忘れられない。そう仕込んできたからな」
拳を振り上げようとする炭治郎を振り切って、その耳元で何かを囁いていたようだと、居合わせた他の隊士から聞いた。





…あいつは誰だ。
…善逸にとって、あの隊士は何なんだ。

炭治郎にそう問われたが、俺は俯いたまま何も言えなかった。
いつだって俺は駄目だ。
あいつのこととなると、うまく説明できないし語れる内容はほとんどない。

そもそも今まで誰にも話したことさえなかった。
じいちゃんの話はしていたけれども、一緒に暮らし育ってきたあいつの存在については一言も語って来なかった。

炭治郎は何かに酷く憤慨していた。
どれだけ責められても、俺は否定する材料を何も持ってはいなかった。
何か分からないことでひたすら責められ、それでもただただ静かに泣いていた。

思い出すだけでも涙がこぼれそうになるのだ。
あの頃の、あいつの存在は。

泣いている間に、首筋に痛みを感じた。
あまりにも俺が泣くから、きっと手刀を落とされた。
それきり俺は、意識を失ってしまっていたのだ。




「…炭治郎…、そこで何をしているの…」
あのまま夜を過ごし…、そして明けようとしている…?
いや、むしろこれは、今から更けていく夜。
障子から漏れる明るさが弱まっていく。
明け方なのではなく、これから夜が更けていくのだ。


動こうとした体を、微笑みながら炭治郎が押し戻す。
その手の感触。
…服。
…今の俺は、服を着ていない。
隊服も。
寝間着も。
…肌着ですら、何一つ。


俺を見つめる赤い瞳。
その瞳が昏く燃えている。
昏い昏いその赤。

顔は笑っているのに、その瞳から見えるのは怒り。
何故。
どうしてこんなことを。


「…解けよ…、これ…」
声が震える。
「…何か…言えよ…」
泣きそうな声が出る。
でも今は泣いちゃ駄目だと言うことは分かる。
俺が泣くたび炭治郎の怒りは深くなる。

何度も経験したそれが、俺の涙を辛うじて堰き止めている。


熱い手のひらが頬を撫でる。
笑んだままの炭治郎の顔が近づいてくる。
「…んっ…!んんぅっ…!」
唐突に唇で唇を塞がれて息が出来ない。
ぬるぬるとする柔らかなものが、俺の口の中で蠢いている。
生温かくてくにゅくにゅと動くそれが、俺の舌を捕え吸いつき離さない。
押し返したいのに、両手が動かないからそれも出来ない。
溢れ出る唾液を飲み込むことも出来ない。
息が苦しくなって、げほげほと激しく咳き込んでしまう。
「大丈夫か?」
厚い手のひらがそっと背中を撫でる。
その手触りに肌が粟立つ。
いつもと違う触れ方。
普段触っているときとは異なるその手のひらの動き。
それにざわりと背中が震える。


「…あぁ…、この傷、残ってしまったな…」
炭治郎の指が剥き出しの肌をついっと撫でる。
遊郭で戦った時の傷。
…炭治郎を庇って。
「これは…」
気にしているのだろうか。
それならば違うと言わなければ。
俺が勝手にしたことなのに。

「…善逸は、いつもそうだ…」
炭治郎の顔が歪む。

「何処までも相手に尽くして、こうして自分を容易く差し出してしまう…。そうだろう?自分が騙されたり、傷つけられたり…、体を犠牲にして、相手に与えたり…。そうやって、これまでも過ごして来たんだろう…?」
ぐつり、と何かが煮えるような音がした。

「何を…、言って…」
意味が分からないことだらけだ。
今の状況で、俺が理解出来ることが何一つ無い。

「…今までどれだけの人間が、お前から与えられて来たんだ?…この体も、どのくらいあいつに与えた…?」

胸元を撫でていた手のひらが、きゅむっと乳首を摘む。
炭治郎が、まるで見せつけるかのように自身の唇を舌で舐めていく。

「ぃたっ…」
冷えた体を弄られて声が出る。
「…へぇ…。随分と感度がいいんだな…。ほら。こんなにも美味しそうにぷくりと色付いている…」
ちゅくっと濡れた音を立てながら、炭治郎がそこを吸い上げる。
強く弱く、舌先でくすぐられ、吸い上げられ、反対側の乳首をかりりと爪の先で擦られる。
「…やぁっ…」
初めての刺激に声がまろぶ。
「…随分甘い声が出るじゃないか。…今までにも余程与えては、色々な経験をしてきたようだな…」
「やめ…、やめて、たんじ、ろっ…、あぁっ…!」
舌先で転がすように嬲られては、強く吸われ歯先でこりこりと甘噛みされていく。
いきなり与えられた刺激に意識がついていかない。
おそらくずっと裸で放置されていたから。
だからきっと冷え切っていて、こんなにも人肌の温もりに反応してしまうのに違いない。
乳首を舌で押し潰されて、そのままねちねちと舐められていく。
胸を揉まれ、乳首を擦られ、吸われしゃぶられ、体の奥がじんと熱くなる。

「やめ…、お願いだから…やめ…」
「そうか?こんなにぷっくりとさせて、気持ちよさそうにしているくせに…?」
ぎゅっと指先で捻られて、思わず声が漏れていく。
「…これで、感じてしまうんだな、善逸は…」
くつくつという笑い声が部屋に籠る。
「あぁ、こっちの乳首が物足りない?」
「…んんっ…!」
いきなり激しく吸いつかれ、体が強張っていく。
反対側の乳首を押し潰し、くりくりと弄りながら舌でつつき回している。
「…舌で転がしても、すごい弾力だな…。ほら、固くなっているのが、自分でもわかるだろう?」
そう言いながら、両方の乳首をぐにゅぐにゅと揉み始める。
「…痛いっ…!やめろ、炭治郎…!」
声をあげても、炭治郎の顔からは昏い笑みが消えない。
「胸だけでここまで感じるなんて…。俺が思っていた以上のようだな…」
昏い声がより深くなる。


顔が近づいてきたと思ったらそのまま吸い付かれ、がりりと胸元にかじりつかれる。
「ほら…。綺麗に鬱血してるのがわかるか?白い肌が朱くなっててる。…本当にいやらしい体なんだな…」
「な…に…」
「そうやって、俺にまで隠すつもりなら…。もう、遠慮はいらないな…」
俺の体を膝で跨いだまま、炭治郎が自身の着込む隊服の釦を外していく。
何故そんな真似をしているのかわからないまま、茫然とその光景を見上げていく。


「…ここも、…」
やんわりと性器を握られ、くぐもった声が出る。
「あいつに与えたのか…?…いや、それはないのか…。綺麗な桜色だものな」
ぎゅむっと握られ、上下に激しくしごかれていく。
声はまろやかなのに、その奥に潜む雪のような冷たさに体が震える。
息が荒くなってしまって、言葉を発することさえうまく出来ない。
ぐり、と力強く性器の先端が指先で抉られていく。

「…固くなってきたぞ?善逸…」
耳朶を舐められながら、そんな言葉を掛けられる。
「ほら…完全に勃っているだろう…?」
そろりと炭治郎が指を離す。

「そうだ。味も確かめなくてはな」
「ぇ…」
考えることさえできないまま固まる。
炭治郎が俺の足を大きく割りひろげる。
すっかり反応してしまっている性器が、炭治郎の視線に晒される。
笑みを張りつけたままの炭治郎が、じっくりとそこを眺めていく。
「なに…、なにを…」
がくがくと震えていく。
放置されたままの、張りつめた性器が痛い。
両手を縛られていて、逃げることさえできない。
炭治郎のその音が。
薄ら昏い表情が。
何をされるのかさえわからないまま、恐怖だけが募っていく。
「舐めてやろう。舐められた経験は、あまりないんだろう?」
言われている言葉が理解できない。

俺を見下ろしながら炭治郎がにこりと笑む。
その瞳の陰さえ見なければ、いっそ魅力的な笑み。

勃ち上がったままの性器の裏側を、ちゅくちゅくと唇で食まれていく。
「あまじょっぱい…。善逸のここは、すごく甘い匂いがする…」
唇の隙間からちろちろと差し出された舌が、その場所を柔らかく舐めくすぐっていく。
「やっ……!」
喉が絡んで、やめろと叫ぶことさえできない。
性器をしゃぶりながら、緩急をつけて吸われしごかれ、開かされたままの足ががくがくと震えていく。
ぴちゃぴちゃという淫らな音をたてながら、炭治郎の舌がそんなところを舐めまさぐっていく。



「ここは…?あいつに、どれだけ与えてやってきたんだ…?」
炭治郎の指が後孔を撫でる。

微笑を浮かべたまま、炭治郎が俺の口に指を挿しこむ。
1本。2本。3本。
指を増やしながら、ぬちゅぬちゅと俺の口の中をまさぐり続ける。
硬直した体は抵抗できない。

「…なぁ善逸…。ここを…。どれほど与えてきたのか…?…どうなんだ…?」
唇から指が離れたと思った刹那。
その指をそのまま、後孔へと突き立てられる。

「…やぁっ…!」
体が捻れる。
それでも炭治郎は指を抜かない。

「…狭いな。…だが熱い。…いくらでも俺の指を飲み込んでいく…」
炭治郎がくらりと笑う。

「…余程開発されてきたんだな。…淫乱な体だ」
「…くぅんっ…!」
挿しこむ指が2本に増やされる。

痛い。
途轍もない違和感。
折り曲げられた両足を抱えられ、俺に見せつけるように炭治郎が太腿を強く吸い上げる。

「ゃめっ…、やめてっ…、抜いて…!」
懇願する。
気持ち悪い。
指が抜かれまた挿しこまれ、ぐちゅぐちゅと音を立てている。
聞こえ過ぎる俺の耳はそれらの音を残らず拾う。
俺を縛って好き放題しているはずの炭治郎から、更に激しい煮えたぎるような音が聞こえる。

どうして。
何故。
何度問うても、炭治郎からは俺が求める問いへの返答はない。
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