鬼滅の刃

□お仕置き炭治郎と泣かされ善逸
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「…ひっく…ぐすっ…」
大粒の涙を零しながら善逸が俺を見上げる。
許してほしい、と切実に訴えかけてくる琥珀の瞳をあえて無視する。
「…言っただろう。これはお仕置きなんだから、善逸がやらないと駄目だ」
指先だけで招く。
ほら、と促してやれば、震える指が俺の指を握り込む。

「出来るだろう?…俺はここでこのまま動かない。全部、善逸が一人でやるんだ。分かってるよな?」
そう言って布団の上に寝転がる。
困惑したような善逸の匂いが鼻腔をくすぐる。

ぞくぞくする。
いつもは俺が押し倒し服を剥ぎ取り熱烈な口付けを捻り込みながら抱いている。
一方的なその営みに満足していないわけでもなかったが、善逸が一人でどうするのかには興味があった。

善逸へのお仕置きは一つだけ。

俺は何もしないから、善逸が一人で俺をいかせること。
…正直善逸があれこれしてくれると思うそれだけでかなり熱膨張気味ではあるのだが、ここは我慢だ。
その方がきっと楽しい。


善逸からはいつも甘くて優しい匂いがする。
今はそれに羞恥の匂いが加わって、それだけで俺は酔ってしまいそうになる。
恥ずかしくてたまらないというように頬を染めて、俺の顔を見ないように俯いている。



正直善逸が怖い怖いと他の男に抱きつくのはいつものことだし、怖いと思ったときには理性が働いていないことも知っている。
それでも、次にそんな真似をして他の男の匂いをつけてくるようなことがあったら、お仕置きを受けてもらうとは約束していた。
それなのに、また同じことを繰り返すのだから仕方がない。
もしかして善逸の方も楽しみにしていたのではないかなどと勘繰ってしまったとしても仕方がないだろう。

「た…んじろ…、…ねぇ…」
泣きながら甘い声でおねだりされるけれども返事はしない。
背筋にぞくぞくと奔る衝動を抑えるだけで手一杯だ。

笑みを浮かべたまま何もしない俺を見てとり、諦めたように善逸の手が俺の服の釦を外す。
あらわにされた肌を見て、善逸がこくりと喉を鳴らす。
腕から引き抜かれ放られた隊服が、ぱさりと空気を震わせる。

さぁ。これからどうするのだろうか。
善逸の一挙手一投足に気を配る。

甘い匂いが更に色濃く俺を魅了する。

どうやら善逸は、いつも俺が善逸にしていることをそのままなぞることにしたらしい。
肌を撫で、乳首を摘まみ、指先を滑らせる。

その刺激がくすぐったくて思わず笑ってしまうと、善逸がちろりと俺を睨む。

さらりと俺の胸を撫でたと思ったら、そのままそこへ舌を這わせる。

いつも俺がしているように、舌を這わせ、甘噛みし、ちゅくりと吸い付いてくる。
その刺激は弱く頼りないものではあったが、それをしているのが善逸だと言うだけで俺の体が素直な反応を見せる。
はむはむと唇で食み、ざらりと舐め回し、吸い付いては刺激を与える。

おずおずと伸ばされた指が、ついっと俺の古傷をなぞる。
指の後を追うように、温かな舌がそこを這う。
その仕草はまるで、舐めて傷を治そうとする野生動物のようだ。

善逸はきっと無意識にしているのだろうが、それにしても俺の情欲を煽るのがうまい。
このあと酷く抱き潰してしまわないよう、善逸の意識を保っていられるよう、散り散りになっていきそうな理性をかき集める。

首筋に這わされた舌が、血管の筋に沿って上下する。
それがもどかしくてたまらない。
張り詰めかけている俺の屹立が、物足りないと叫んでいる。

俺はいつももっと強い力でまさぐり吸い付き痕を刻んできた。
いまの善逸のやり方では、到底情事の痕など残して貰えそうもない。
それが残念だった。

ぺろぺろと俺の体を舐めながら、善逸の指がそろりと俺の下肢へと伸ばされる。
カチャカチャと音を鳴らしながら、隊服のベルトを外している。
ぐすんと鼻を鳴らして、弛ませたそこから俺のものを寛げる。
善逸に散々煽られて、すでにそこは勃ち上がっている。
それを見て、善逸が軽く息を飲む。


善逸とは何度も体を繋げては来たけれど、いつだって俺の方から求めて抱いてきた。
…だからたまには、善逸からも求められたい。
つまりはそれだけの動機に過ぎない。
いつもは自分の中に受けいれている筈のそれを見て、善逸が目を見張る。
確かにわざわざ見せるようなことはしてこなかったから、こうして間近に見るのは初めてかもしれない。
散々この体を暴き嬲るように繋がって来たと思っていたのに、こんな初々しい反応をされては俺だって我慢が出来なくなってしまう。



…これからどうするのだろうか。
悪い心が止まらない。
ひくっと喉を鳴らしたかと思ったら、そこがやんわりと握り込まれた。

すでに熱く反り返っているそれに、善逸がちろりと舌を這わせていく。
…まさかそんな。
俺が口で慰めてやったことは何度もあるが、善逸にそれを求めたことは一度もない。

元々俺は善逸の中で絶頂を味わうことが出来るが、善逸は受け入れるだけでまだ快楽のみを味わうところまでは辿り着いていない。
だからその分俺が口で奉仕するのが当然のことだし、それが常だった。
…恐らくは初めてまじまじと見たはずなのに、それを口でしゃぶられている。
ぐわんとそれが体積を増していくのが分かった。
善逸の小さな口が、ぺろぺろとそれを舐め、口に含んではちゅくちゅくと食む。
怯えたような指が絡まり、切ない快楽を運んでくる。


…、くぅッ…!!

たどたどしい指の動きと、怯えたような舌の動きがもどかしい。
早く挿れて揺さぶって、いつものように思う存分快楽に溺れたい。
なのに善逸がそれをさせてはくれない。
初めて男のものを口に含んだに違いないのに、その蕩けそうな顔がより俺の欲望を蹂躙する。
自分が仕掛けたことの筈なのに、頭がおかしくなりそうだった。


「…ん…」
俺のものを口に含んだまま、善逸が自らの隊服からもベルトを外す。
その音が本当にゆっくりに感じ、もどかしさが募っていく。


恥ずかしそうな顔で涙を零しながら、善逸が自分の足からそれを引き抜いていく様をずっと見つめていた。

外気に晒されているそれを、善逸がなんとか隠そうとシャツの裾を引っ張っている。
ちらちらとシャツの裾から見える肌色が、俺の官能を揺さぶっていく。

甘い匂い。切なそうに聞こえるくぐもった声。

…挿れたい。早く。
…この体を、いつものように貫いて犯したい。

引き攣れるような欲望に支配されそうになる。


…早く…、早く…。

もどかしさに頭の熱が狂っていく。

「…ふ…、ん…」

唾液の糸を引きながら、善逸が俺のそれから口を放す。

もう我慢できない。
お仕置きはここまでにして、後はいつものように抱き潰してしまいたい。


そう思って、善逸の肩を押し倒そうとした刹那。

「…んんっ…!」

なんらほぐしてもいないそこに、善逸がいきなり俺のものを突き立てる。

「…ぃ…、た…」

「当たり前だ!」

肝が冷える。
いくらなんでも無茶だ。
ただでさえまだ男同士の性行為に慣れていないというのに、濡らしてもないそこにいきなり突き立てるなど、ただの暴力だ。

硬直したまま動けなくなっている善逸の体を下から支え、ゆっくりと引き離していく。


善逸の唾液で濡らされているとはいえ、受け入れる方が濡れていないのだからいきなり挿入るわけなどない。

「無茶をするな!」
震える声が出る。

いくらなんでも無茶すぎる。

中途半端に煽られた体と、一気に冷えた脳が俺から理性を奪っていく。


「…だって…、どうしていいかわからなかったんだよ…」
ぐすんぐすんと泣きながら善逸が上目遣いで俺を見つめる。

「そ…そもそもさぁ…。俺本当に恥ずかしくて、心臓まろびでるところだったんだぞ…」
羞恥のために、白い体を朱に染めている。

「でも炭治郎、いつもやってくれてるからさぁ…。俺だって頑張ったの…」
頬を赤くして、潤んだ瞳で俺を見つめる。

「炭治郎がやってるようにしようと思ったのに…うまく出来なかったわ…。ごめんな?」
俺を気遣うような匂いがする。

「…やっぱり俺じゃ…、気持ちよくはならないよなぁ…」
諦めたような匂い。

「…ごめんな、炭治郎…」
しょんぼりと項垂れてしまう愛しい恋人の姿。

違う。そうじゃない。
どうしてそんな結論に達してしまうんだ!

「俺が悪かった!」
頭を下げる。

「嫉妬して意地悪をしてしまった!俺が愛しているのも抱きたいと思うのも善逸だけだ!」
腕を掴みその額に口づける。

「好きだ!だから、抱きしめさせて貰っても構わないだろうか!」
腕の中に善逸を抱きしめる。

ほわんとした匂いが甘く立ち上る。

「…でも俺…、うまく出来なかったし…」
「そんなことはない!」
今度こそ善逸の体を押し倒す。

「…さっきは無茶をさせてしまったから、辛いだろう。…全部俺のせいだな。すまなかった」
布団の上で抱きしめる。


「…無茶をさせてしまったから、今日は責任を取って最後までは我慢する。…だから、それまでは、少しだけ…付き合って貰っても良いだろうか」
隊服の上着に手を掛ける。
「…これも、脱がせて良いだろうか。…てっきり脱いでくれるのだと期待していたら、脱いでは貰えなかったから」
「や…、だってさ…。…俺の体だぞ…。見なくて済むなら、その方が良いじゃんよ…」

「そういうところだぞ善逸!!俺がどれだけ善逸のことを愛していて、善逸に欲情しているのかもう少しきちんと理解してくれ!」
唇を合わせようとすると、善逸の手がやんわりと俺を押し戻す。

「…どうして駄目なんだ?」
「いやいや炭治郎!…俺、さっき、お前の…口で…、ほら…」
もごもごと視線を彷徨わせている。

「…俺はいつも善逸のものを口で愛撫した後、善逸の唇もまさぐっているのだが」
「…お、俺は良いんだよ俺は…!」
「俺だって構わない。善逸の口の中も全部味わいたいんだ」
抱きしめながら唇を合わせる。
ちゅくちゅくと音をさせながら唇を割り入り込み、口腔内をも犯していく。
この舌が先ほどまで俺自身の体を愛撫してくれていたのかと思うとたまらない。
善逸の口の端から飲み込みきれない唾液が滴り落ちる。
淫靡な光景を見つめながら、下唇を食み軽く吸い上げる。

俺の体の下で、善逸が蕩けそうになっている。
口を吸うだけでこうなる体にしたのが自分だと思うと、背筋に快楽が走っていく。

…駄目だ。先ほど俺のせいで無茶をさせてしまったのだから…。
…今日は我慢だぞ長男…!

心の中で呪文を唱えながら善逸の首筋に吸い付き朱を散らす。
その時、俺の体の下で善逸の体がくらりとくゆらされる。
俺の体を押し戻すその仕草に体を起こす。
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