鬼滅の刃

□炭治郎じゃ俺を守り切れない
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「好きだ。善逸。…善逸の全てが欲しい…」
熱に浮かされたまま懇願する。

「…っ、んなのっ…!…俺は全部、炭治郎のものでしょうが…、って、言わせてんじゃねぇぞ!?」
照れたようにぶんぶんと腕を振られるから、堪えきれなくてその体を抱きしめ思う存分匂いを吸い込んでいく。

「…だ…、抱いても、…良いだろうか…?」
「…抱いてるじゃないの…?」
「あ、いや、そうじゃなく…、いや、こうして抱擁しているのも勿論気持ちが良いんだが、…もうちょっと、こう…、情を交わしたい、というか…」
「…交わしてるだろ?…せ、接吻、とかさぁ…、あんなにたくさん、したんだしっ…」
羞恥の匂いに炭治郎の情欲が刺激される。

…甘い匂いに犯されて、もう我慢できない。
…頭の芯から痺れてしまって、快楽に溺れてしまう。

そっと善逸の下肢に手を伸ばす。
まだまだ柔らかいままのそこをそっと撫でると、善逸から戸惑いの匂いが仄かに薫った。

「それは勿論っ…、なんだが…!…俺は、善逸と…、まぐわい、たいんだっ…!」
欲望が口からまろび出て、流石の炭治郎にも羞恥がこみ上げる。

なのにそれを聞いた善逸からは、戸惑ったような、困惑したような、そんな匂いが強さを増す。

「…えっと…、一緒に風呂に入ったりしてるんだから知ってるよな…?俺、男だぞ…?」
「それは勿論、知っているぞ…?」
「…えぇ…。いや、お前落ち着けよ。…男同士じゃまぐわえないだろ…?」
「え?」
「…は…?」
ぽかんとした善逸の瞳の琥珀が、不思議そうに俺を見つめる。

「…いや、男同士でも…、まぐわえるのだが…」
「…だから俺は女じゃないって。…それは流石に無理でしょうが」
「いや、無理じゃない…!無理じゃないぞ…!男同士でも、その、まぐわうことは可能だ!」
「…どうやってよ…。女じゃないんだから、挿れられないぞ…?」
「あ、いや、…出来る…」
「…え…、まさかお前…、本気で言ってるのか…?」
「俺はいつだって本気だ!本気で善逸のことを愛しているし、抱きたいと思っている!」

善逸が訝しそうに俺を見ている。
その瞳に浮かぶのは不信感、哀れみ、憐憫。

「…もしかして…、善逸は知らないのか…?男同士でも…、まぐわうことが出来るって…」
「…それはもしかして…。炭治郎が言っているのってまさか、遊郭とかで男同士でやってるあれのことなのか…?」
不安そうな顔で善逸が俺をちらりと伺う。

「…そう、だと思う…」
ごくりと生唾を飲み込む。

「あぁぁ…。今度会ったら宇髄さん殴っておくわ…」
はぁっとため息をついている善逸に困惑が止まらない。

「遊郭の存在すら知らなかったお前に、こんな無駄な知識を植え付けるなんてなぁ…。いいか炭治郎、それは忘れろ。素人が気軽に試すようなものじゃねぇからな。無理だよ。男同士だぞ?無茶なことは考えるなよ。いいな。もう考えるな」
きりっとした顔で説教されて、思わず固まる。

「…いや、善逸。…鬼殺隊の中でもそういう関係の人はいるから…。遊郭で初めて知ったわけじゃないんだが…」
逃げ腰の善逸に追いすがる。

「え?…炭治郎、男同士の経験あるのか?」
「あるわけないだろう!俺はずっと善逸のことだけを愛しているんだから!」
肩を掴む手に力が籠もる。
俺の言葉を聞いた善逸が、胡乱な目線で俺を射貫く。

「ないんだったら無理だろ…。もう諦めなさいよ…」
「いいや諦めない!俺は善逸を抱きたい!1つに重なり合いたいんだ!」
「だーから!素人が気軽に試すようなものじゃないんだよ!馬っ鹿野郎!双方怪我して大変なことになるぞ!?」
「だ、大丈夫だ!善逸をそんな目に遭わせたいわけじゃない!…ちゃんと、解せば…、大丈夫だと、聞いているから…、だから…」
「…炭治郎、初めてなんだろうが。…いや、俺も初めてですけどね?…初めて同士でそんな無理してどうするのよ。お前だって辛い思いすることになるぞ?」
「ちゃんと!ちゃんと準備をするから…!善逸と抱き合いたいと思って、色々調べてはいるんだ!…必要なものだって、…実は、もう用意してあるんだ…。だから…」
しばらく前に取り寄せ、手元に置いている通和散のことを思い出す。


「…いや、もうそれは諦めようぜ?…だって無謀すぎるだろ…」
善逸がいやいやと頭を振る度、月光のような金の髪がふわりと匂い立つ。

「俺は、…したい…。善逸のことが好きなんだ。だから抱き合いたいと思う。…譲っては、貰えないだろうか…」
上目遣いで強請ると、善逸がくぅっと瞳を閉じ唇を引き結ぶ。
そのまましばらく固まっているから、肩を抱いたまま返事を待つ。

幾何かの時間が経過した後、善逸が瞳を開き、俺を見つめる。
「俺…、俺…、炭治郎が好きだよっ…!」
ふわわっと耳まで赤くして叫ぶ。

「好き好き大好き!炭治郎に接吻されるのも抱きしめられるのも全部好き!炭治郎に好きだって言って貰えて、俺本当に幸せなんだよ!」
「だったら…、」
「でもさぁ、俺は弱いの!」
琥珀の瞳から大粒の涙が零れ出す。

「怯えるし、逃げるし、泣きますし?本当に弱いの!…怖いんだよっ!!男同士でそんなの、怖くないわけないだろうがっ…!!」
ぎゅっと寝間着を掴まれる。

「俺を守ってくれるんだろ!?…だったらさぁ…、炭治郎が本当に、俺と、し、…したいって、言うんならさぁ…」
琥珀を赤く潤ませて、俺に向かって泣きじゃくる。

「…れ…、練習、してきてくれよ…」
囁くような声が耳元で紡がれるが、意味が理解できない。

「…俺だって、炭治郎が望むのなら何だってしてあげたいけどさぁ…。やっぱり怖いのは無理なの!…初めての炭治郎じゃ、俺のこと守り切れないぜ!?死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死んでしまうぞ俺が!!」
両の頬を抑え涙を零しながら天を仰いでいる。

だから、と形の良い桜の唇が言葉を紡ぐ。

「…ほ、他のさぁ、慣れた人と、鍛錬してきてくれよ…。そしたら俺も、覚悟決めるから…」
へにょんと下げられた眉を見て、ようやく何を言われたかを理解する。

「…出来るわけがないだろう!?俺は善逸のことを愛している!他の人を相手にするなんて考えたこともない!…そもそも俺は!善逸以外では!勃たない!!」
大きな声で一息に怒鳴る。
驚いたように見開かれる善逸の瞳から、新たな涙が零れ出す。

「…で…、出来ないの…?」
「無理だ。すまないがそれは出来ない!絶対にだ!」

ぐすんぐすんと泣きながら、善逸が俺の胸に顔を埋める。
そのまま逡巡している匂いを嗅いだので、落ち着くまで柔らかく抱きしめる。

ー…覚悟を決めて欲しい。
ー…抱かせて欲しい…。

それを願いながら嗅ぐ善逸の芳香は、脊髄をざわつかせるほどに蠱惑的な色を纏っている。
先刻触り唇を這わせ食んだ甘い体が俺の腕の中で震えているという光景に、思わずぶるりと震える。

腕の中で善逸が、しばらく視線を彷徨わせ、逡巡に逡巡を重ねているのが伝わってくる。

「…善逸…。頼む…」
ふぅ、と耳元に息を吹きかけるように囁くと、善逸の体がぴくんと跳ねる。


「…ん…、ぐすっ…」

「好きだ。俺はずっと、善逸のことだけが好きだ。…だから…」
懇願しながら抱きしめる。

「お、俺だってさぁ…。本当にずっと前から、炭治郎のことが大好きだよぉ…」
覚悟を決めたらしい善逸が、戸惑うような顔で呟くように口を開く。

「だ、だから…、…炭治郎が無理っ…、って…、なら…、俺が、慣れた人と…、れ、…練習、してくる…」

「そんなのもっと駄目に決まっているだろう!!」

「なんだよぉその音!!!俺がここまで譲歩してるのになんでさぁ!?」
「譲歩って何だ!?俺は善逸のものだし、善逸は俺のものだろう!?他の奴には指1本だって触らせるつもりはない!指1本だって許すな!俺は長男だが嫉妬はするし、俺さえ触れたことがない恋人の体を他の男に抱かせるなんて考えただけで心臓が止まりそうだ!実際今止まりかけたんだぞ!!」
ばんっと胸を叩くと、善逸がふぇふぇと涙を流す。

「…なんだよぉ…。お前が鍛錬するのも駄目で、俺が鍛錬するのも駄目で、それなのに諦めずにやりたいってさぁ…。なんでお前、そんなに我侭なんだよぉ…」
「それは俺が善逸のことを愛しているからだ!」
「愛があっても、お前初めてなんだろ!?技量も経験もなくていきなりやって互いに痛い思いしてまでするもんじゃねぇだろうが!なぁ!?なぁ!?」
涙を流しながら胸元にしがみつかれて、思わずくぅっと息が漏れるがここで折れるわけにはいかない。

もしも折れてしまえば、俺はずっと善逸を抱くことが出来ない。
抱きたければ俺が他の奴と練習してくるか、善逸が他の誰かと練習してくるかの三択しかない。

無理だ。
どれ1つとして耐えられるものが存在しない。


「…善逸。頼む。…好きだ。愛している。…だから、…抱きあいたいんだ…」
涙目の善逸が俺を見上げる。

「だ、抱き合うだけならさぁ…、さっきみたいな…、あんなので良いじゃないの…。…さっきのあれならさ…、俺、すごく気持ち良かったし…」
ぽぽぽっと赤くなりながら、すりっと俺の胸に頬を擦り寄せてきたりするからもう我慢は出来なかった。

そのまま善逸を引き倒し、ちゅくちゅくとその肌を弄り味わった。

「…触るだけ…。とりあえず、今日は…。…それだけで良いから…」
真っ赤な顔でこくんと頷いたりしてくれるから、そこからはもう夢中だった。






■■■■■■








体に触れ合い、抱きしめるだけの甘やかな時を何度も繰り返し、ようやく下肢に手を伸ばしても怒られることはなくなっていった。
俺が愛撫することで反応を返してくれるようになった善逸のそれに手を這わす。
撫でさすり、擦り、指先で捏ね回す。
ゆるりと熱を持つそこが徐々に固さを増し、併せて胸を吸えば綺麗に体をしならせる。

そうして善逸が吐き出した白濁をそっと後ろに塗り込めても、通和散で濡らしても、かつてのような抵抗をされることはなくなっていった。
つぷりと指を埋め込んでも、2本までなら許してくれる。
指を蠢かしその場所を堪能しても、躊躇いつつも許してくれる。


体を抱きしめ両足を持ち上げ、俺の眼前にすべてを曝け出すような、そんなはしたない格好を強いる。
産毛のような金色に包まれたそれに舌を這わせることも許して貰えるようになってきた。
俺がこうしてしゃぶり舌で味わい口内で犯しても、最早善逸はまったく抵抗をしない。
快楽に流され、可愛い声を聞かせてくれる。

触って欲しいと強請れば、善逸もまた俺のそれに指を絡ませ拙い動きで扱いてくれる。
俺が吐き出した精を見て、ぽんっと頬を染めてくれる。

そこまで許してくれているのに、最後だけはどうしても許しては貰えない。

「…どうして駄目なんだ善逸…!」
「怖いからに決まってるだろうがぁ!初めての炭治郎じゃ駄目だよぉぉぉ!!」



今夜もまた褥に俺と善逸の咆吼が響き渡る。


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