鬼滅の刃

□ごめんね、この人俺の彼氏だからさぁ。
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「なんだよぉ!その顔っ!!お前の分は残してあるんだから問題ないだろっ!」
指を差し責め立てる姿はいつものそれと変わりない。
ため息を吐き座ろうとしたとき、「あ」と声を掛けられた。

「そういや炭治郎。手、洗ったのか?そのまま団子に触るなよ。ばっちいだろ」
「手?」
「せっかくの団子だしなぁ。しのぶさんからの好意なんだから、しっかり食べろよ。まだなら先に手を洗って来いよ」
「…手?」
今まで任務帰りにここまで声を掛けられた覚えがないから、思わず首を傾げてしまう。
「だってお前、色々触ってきてただろ。ほら、下の方とかさぁ。だからちゃんと洗ってこいって」
なんでもないことのように言われて、一気に顔に熱が収縮してしまう。

「顔も赤いぞ?ついでに洗って来いよ」
最後の一口。
団子を口に含みながら、炭治郎の方さえ見ないまま言い放つ。

「んー、やっぱりここの団子が一番だよなぁ。流石しのぶさん!わかってる!」
笑み崩れる顔に先刻自身が散々嬲った体の温もりを思い出してしまう。

善逸の体をまさぐり続けた自身の手のひらを見て、炭治郎の下腹にかぁっと熱が集まってくる。
目の前で寛いでいる善逸が最後の団子を飲み込んでいく。
白い喉がごくりと上下に蠢く様をただただ見つめた。
鬼と対峙する前まで張り詰めていた炭治郎の男根が、再び熱を帯び頭を持ち上げ始める。

だんっと音を立てながら障子を開ける。
そのまま厠へと飛び込み、先刻味わった熱のすべてを脳裏に思い浮かべる。

胸を締め付けるような、あの甘い匂い。
重ねた唇。
思えばあれは自身にとって初めての接吻だった。
紅潮したまろい頬。
引き締まった体躯。
しなやかな肢体を思う存分撫でさすった手のひら。
ぷくりと膨れた乳首の感触。
乳首を弄ぶとあんなに伸びるなんて思ったことすら無かった。
そして。
伸ばした手のひらで触った下腹部。
善逸が何一つ抵抗せず触れさせてくれた体。
それらを脳裏に思い浮かべるだけで、炭治郎のそれは容易く白濁を吐き出した。


善逸に言われたからと言うわけでもなく、自身のそれを受け止めた手のひらをそのままにしておく訳にはいかない。
シャボンで洗い清め、善逸の耳に届く前に深呼吸を繰り返す。

そうしてようやく元の部屋へと戻れば、想い人がころんとしどけなく寝転んでいた。

「…お帰り炭治郎。団子、乾く前に食べちゃいなよ」
眠たそうにしている様子を見て取り、炭治郎は息を吐く。

「眠たいのなら、寝間着に着替えて蒲団で寝た方が良いんじゃないのか。敷いてやるから」
押し入れに向かおうとした足首をぎゅむっと握られ、思わず眼下の琥珀を見つめてしまう。

「お前のせいで疲れたんだろうが。…散々嬲りやがって。ふりだけで良いって言ったじゃろがい」
咎めるような視線を向けられ、先刻抜いたばかりのそこが再び熱を帯びていく。

「あ、…あ…。すまなかった…。止まらなかったから…」
どくんどくんと心臓が波打つ。
この音が善逸に聞こえないはずはないのに、止める手段すら思いつかない。

「お前のせいで使えなかったんだからな、雷の呼吸。…もしお前さんがあそこで鬼を切れずにいたら、皆やられてたんだぞ。反省してるのかよ」
「…使えなかった?呼吸が?」
そんな風には見えなかった。
善逸はいつも通り、的確な状況判断、適切な先読みをしていたはずだ。

「足に力が入らなくて、踏ん張れなかったの!…食わないのか?なら貰うぞ、団子」
「…善逸が欲しいのなら食べてくれ」
「ありがと!貰っちゃうからな団子。…お前のせいで余計な疲れが出たんだからな。反省しろよお前。堅物デコ真面目のくせに、なんであんなてらいもなく手を伸ばしてこれるんだか」
ぶつぶつ言いながらも半身を起こし、2本目の団子に勢いよく齧り付く。

「…そんな風には見えなかったが。…力が、入らなかったのか?あれで?むしろ俺の方が腰砕けになっていたと思うんだが」
「あんだけ散々触られたら反応しちゃうでしょうが。同じ男なんだからわかるだろ」
「…全然わからなかった。あれだけ触って、善逸は無反応だったじゃないか」
「呼吸で押さえてたわ流石に。あんな場所であそこまでする必要なかっただろうが。ちょっとやり過ぎだったと思うぞ」
「…少しは、感じてくれていたのか…?」
「感じっ…!?ちょっとお前、恥ずかしいこと言うんじゃないよ…!」
食べ終わった空の串を放り投げるように皿へと放る。
串の立てるからんと言う音が、炭治郎の耳にも響いた。

「触られたら誰だってそうなっちゃうでしょうが!どう考えてもお前のせいだろお前の!」
真っ赤になったその頬に手を這わす。
「…俺はもっと触りたかった。いつでも、ずっと」
「とんでもねぇ炭治郎だな!?そういうのは、女の子相手に言いなさいよ!」
「俺は最初から善逸のことだけを愛している。…何度も伝えてきただろう?」
「えっ!?何それ!全然知らんよ!?」
「…ぜんいつ…?」
ごぉっと燃えさかる音を、炭治郎は自身の中に聞いた。

「ひょえぇっ!?」
怯えたような体の上に自身の体を重ねると、あっけなく畳の上に善逸が横たわる。
「聞こえていたんじゃないのか?俺からも。…酷い音や、…醜悪で下劣な音が」
「そんなの聞こえなかったってばぁ!」
「聞こえていたはずだ」
「そりゃ、誰でもいいから嬲りたいって奴らの音は聞こえてたよ!?酷く下劣な音!でも、炭治郎の音は違うでしょうが!」
「…違うのか?」
「炭治郎からはいつもの優しい音と、あと、苦痛に耐えるような音がしてたよ!?」
「…苦痛に耐えると言うより、善逸の体の全てを暴きたくて堪らない自身の情欲を押さえ込んでいた音だろうな」

転がったままの四肢を押さえつける。
そのまま柔らかい唇に齧り付くと、みたらしの甘い味が口いっぱいに広がっていった。
ちゅくりと挿し込んだ舌で甘やかな口の中をしゃぶり尽くす。
じゅくっと吸い上げ、その舌を甘噛みし、頬の内側も舐め取っていく。

そのまま絡まっていく唾液を吸い上げるように舌に吸い付けば、善逸の体がびくりと震える。

「…今度は呼吸を使わずに、俺に触れられたらどうなるかを試して欲しい」
「ちょ、まっ…!たんじ…!」
シャツの釦を外しながら白い喉へと吸い付いていく。
団子を咀嚼したときの嚥下する喉が忘れられない。

先ほど館で散々摘まみあげた乳首に指を引っ掻けるようにして、その先端をかりかりと爪先で刺激する。
甘い果実のようにぷくりと熟れるそこを舌先でちろりとくすぐると、善逸から甘い匂いが沸き立った。
「ゃぁっ…!」
掠れた高い声。
それに煽られるまま何度も何度も繰り返し吸い付いて味わっていく。
軽く歯を立ててかりっと掻けば、しなやかな体が炭治郎の下で跳ねていく。
善逸の体から力が抜けていくのを見て取り、炭治郎ははだけたシャツの隙間から手を挿し込み、ベルトを外したズボンを一息に引き抜いていく。

「俺のことを、彼氏だと紹介してくれただろう。…言ったことは守ってくれ。俺を彼氏にしてくれ」
「あれは任務っ!じゃろがいっ…!!」
「何度も言ってきたと思うが、やはり言わせてくれ。好きだ。愛している。…こうした欲を含んだ愛で、申し訳ないが」
「ひゃぁんっ…!」
シャツの裾から手を入れて、なめらかな腰に手のひらを這わせていくと、甘やかな声が漏れていく。

「やだっ…!可愛くない!お前全然可愛くない!やだやだ!俺は可愛い子が良いの!お前っ!ほんっとうに全然可愛くない…!」
「…可愛い女の子の方が…、やっぱり良いのか…?」
「当ったり前だろうが!なんで男に組み敷かれて好き勝手されなきゃいけないんだよ!?」
「嫌がっている匂いは感じないんだが…」
鼠径部を撫でると、くぐもった甘い声が桜の唇からまろび出る。

「嗅ぐなよ!…こんな体の何が楽しいのさ!?」
抵抗するかのように足を硬く閉じていく。
そんなことをする前に俺を蹴り飛ばせば良いのに、と炭治郎は思うが口にはしない。

「どこもかしこも。俺は善逸ならなんだっていいんだ」
内腿に手を挿し込み撫でると力が抜けていく。
それを見て取り持ち上げた白い足の内腿に、きつく吸い付いていく。
綺麗に残る鮮やかな赤を見て満足そうに笑う炭治郎を見て、善逸の白い体が朱に染まる。

「綺麗についたぞ、善逸」
そう言って笑う炭治郎を見て、ぐるぐると善逸が物騒な音を立てながら喉を鳴らす。

「黙らっしゃい!」
「うわっ!?」
白い足が振り上げられたと思ったら、そのまま足の間に腰を挟み込まれぎりぎりと絞め上げられる。
「待て待て!善逸!落ち着いてくれ!!お前の脚力でそれ以上は駄目だ!!」
痛い痛いと身を捩るが、善逸は絞める力を緩めない。

「好き放題しやがって!任務の間は我慢してたけど今は任務関係ないからな!?合図合図合図!合図をしろと何回も言ってるじゃろがい!なんでお前さんはそうやっていつもいきなり突っ走っていっちゃうのさぁ!?」
「…!?…合図をしたら良かったのか!?」
「はぁ!?誰もそんな話っ!」
「してただろう!?合図をしたら良いんだな!?」
「…してない!してない!なんでお前はそんなに可愛げが無いんだよ!」
「いいや聞いた!俺は!善逸のことを!愛している!だからこのまま触ったり口付けをしても良いだろうか!」
「爽やかに言えば何でも通ると思ってるんじゃねぇだろうな!?駄目に決まってるだろ!いきなりここまで触り倒して、たった1日でこれ以上許されるわけないだろ!!」
「明日なら良いのか!?」
「畜生!!!こいつめげねぇ!!」
「勿論だ!善逸のことは諦めない!!!俺は折れない!!!」
いきなりだんっと横倒しで倒される。
善逸の足に挟まれたまま転がされたのだと分かった。

「…本当に可愛くない!俺は弱いんだぜ!?もうちょっと手順とか段取りとかさぁ!あるだろうが!!」
剥ぎ取られたズボンを履きながら、涙で潤んだ琥珀の瞳が炭治郎をねめつける。

「今度合図なしにあんな真似してきたら、本当に蹴るからな!?」
「わかった。合図はする。…だからつまり、俺が善逸の彼氏と言うことで良いのだろうか?初めてを貰ってくれるというあの言葉を信じていて良いのだろうか?」
真面目に問いかけると、驚いたような顔で固まる。
刹那、善逸の甘い匂いが渦を巻いて部屋中に溢れかえった。

「巫山戯んなよっ!?お前はもうずっと堅物デコ真面目でいろよぉぉっ!!」
善逸の足が振り上げられたと思った刹那、炭治郎はそのまま意識を失った。


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