鬼滅の刃

□アイドルユニット『雷』
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「善逸!足見せてー!」
黙ってしまった善逸に向けて、客席からコールが飛ぶ。
それを受けて、一斉に「見せて」コールが響き渡る。

「うっせぇわこの変態共が!!!男の足見て何が楽しいんじゃい!!見たいんなら勝手に見たら良いだろうが!!俺、お前らみたいな奴とは口利かないからな!!」
そう言いながらも、だん!と勢いよく獪岳用の箱椅子の上に足を置く。

善逸の足はとても綺麗だ。
筋肉が付いていて形が良い。
裾まであるズボン越しでも分かるそのラインを見て、客席が歓喜の雄叫びを上げていく。

正直見せたくはない。
見せて欲しくもない。
あの吸い付くような肌。
滑らかなあの筋肉。
あれらはすべて俺だけのものだ。


怒った顔のまま、善逸がピアノの前に行く。
コンサート会場のステージには雑多に楽器が置いてあって、善逸はそれらの間を移動しながら演奏しそして歌っている。

ピアノの前に善逸が座った瞬間、騒がしかった会場内がしんと静まる。
ここから始まる楽曲はとても繊細だと、ここにいる誰もが皆知っている。

少し掠れた高音が、艶やかな声をまろび出す。
『堅物デコ真面目』だ。
タイトルに反して、とても綺麗なバラード曲。
愛し合っている大切な恋人が、真面目で融通きかなくて、その癖すぐ揉め事に首を突っ込んで、その度にハラハラさせられてしまうけど本当に好き、大好き、愛してる、本当に好き。
そういう歌だ。
俺が好きな善逸楽曲の5本の指に入る素晴らしい曲。
それにしみじみと聞き惚れる。

次に善逸の指が奏で始めたのは、『白詰草の花冠』。
大好きな人の可愛い妹。幸せになってくれ。誰よりも幸せに。
そう言う優しい想いが込められた曲で、俺は何度涙を流したか知れない。

そして善逸が、畳の上に置かれた琴の上へと移動する。
『幸せな夢』。
この歌を歌っているときの善逸の瞳が好きだ。
強くて誰よりも強くて弱い人や困っている人を助けてあげられるいつでも。
そんな歌詞を切なげに歌い上げる。
正直ロック調以外の楽曲を歌っているときの善逸は色気が全開だ。
善逸は野郎はお呼びじゃねぇんだよなんて言うけれど、これだけたゆんたゆんな色気を振りまいて歌っている善逸にも責任があるのじゃないかとそう思う。

次に三味線を手に取る。
背筋がびりりと震えていく。
『ヒノカミ』。
俺が一番好きな曲。
愛している。好き。俺のお日様。できなかったことできるようになるの嬉しいよね。お前は俺をずっと励ましてくれたよ。お前の全てを愛してる。早く会いたい。俺を見つけて。大好き。大好き。
そう言う想いが情感たっぷりに込められている。
…抱いて。抱いて抱いて抱いて。
掠れた高音が耳に心地良く響く。
まるで閨の中で囁かれているかのような錯覚に陥るほど、脳を、体を蕩かしていく。
うっとりと聞き惚れながらも、体の奥底に熱が集中していく気配がする。
この歌のあとはトイレが満員になるという伝説の曲だ。

「…好きだ、善逸…。俺も愛している…」
微かな呟きが口から零れる。
琥珀の瞳。
金色の髪。
そしてまろい頬。
その全身が愛おしい。
うっとりと聞き惚れていると、善逸と目が合ったような気がした。

「…やばい!今善逸、俺のことを見つめてなかったか!?」
周囲からも熱情に浮かされたような声が響く。

曲の終わりと同時に、「善逸っ!抱かせて…!!」という、男達からの熱烈なコールが響く。
「バカかお前らは頭大丈夫デスカ!!」
善逸が叫びステージが暗転する。
このあとは獪岳の剣舞だ。
トイレに立つ周囲の人波をぼんやり見つめながら、深く椅子に腰掛け直す。

…脳内で、先ほど聞いたばかりの善逸のあの歌が鳴り響いている。
あの声。
あの姿。
善逸の全身が、俺の心を捉え込んで離さない。




うっとりとしている間に獪岳の剣舞が終わる。
「獪岳っ…!抱いてぇ!」
「こっちを見て!お願い笑って獪岳!」
「愛してる!大好き獪岳!」
「一度で良いからキスして…!」
熱烈なコールが響いている。
男の声も混じってはいるが、聞こえて来たのは圧倒的に女の子の声だ。
DVD特典では、この声を聞きながら「ああぁ〜〜〜っ!!なんじゃああも〜〜っ!!腹立つぅう〜〜〜〜っ」と可愛い顔を歪ませている善逸の映像や、「見返してやるあの男…!!」と歯を噛みしめている善逸の映像などが盛りだくさんで楽しめるから、このコーナーも実はそんなに嫌いではない。



以前は曲の合間に善逸の吹奏楽器独奏もあったらしい。
DVDでしか見たことはないが、フルートを吹いたり尺八を吹いたりと多種多様だった。
それがネットで「尺八最高」「俺の尺八もお願いしたい」などと下劣なコメントで煽られてしまい、更にそれがトレンドとして話題になって、喧喧諤諤の議論に発展しワイドショーを騒がせた。
そしてそれきり善逸の吹奏楽器独奏コーナーは消えた。
正直下劣なコメントを残したそいつらを全員粛正してやりたいと思っているし、今現在も尚呪っている。



俺は善逸の全てが好きだ。
顔も、声も、体も。
その才能も心根も、優しさも強さもその全てを愛している。

たまに弱音を吐いたりするが、それでも芯の強い優しい強さを持っていることは分かっている。
あの琥珀の瞳に映り込む自身の姿を見たい。
あの髪に触れ、口付けを交わしたい。
腰まで伸ばされたあの金の髪。
特別な人にしか触らせないのだと、そう言っていた。
触って良いのは、この長い髪を愛してくれている自分のお日様だけだと、そう。


善逸の楽曲ペースは速い。
月に2曲は必ず新曲を発表する。
コンサートがしたいから。
会いたい人がいるから。
その人のためにだけ、自分は歌うし髪も伸ばす。

遠い瞳でそう言っていたあの映像を見る度に、胸がぎゅううっと締め付けられるのだ。
…抱きたい。
…睦み合いたい。
…あの体を隅から隅まで味わって、どこもかしこも暴き立てたい。
舌を這わせ、指を這わせ、善逸の体を貪る妄想ばかりしている。


再び登場した善逸は、その手にまたもや三味線を握りこんでいた。
ではもしや2回目の『ヒノカミ』だろうか。
割と気まぐれな善逸は、コンサート中に同じ曲を2回歌ったりすると聞く。
期待に胸が膨らんでいく。

「じゃあ次。…即興だけど聞いて欲しい。『カクシャク』」
そう言って、三味線を奏でながらしっとりとした声で歌い出した。
やっと会えた大切な人。お前のことをずっと求めていた。愛してる。ずっとずっと好きだから。もう離さないで。傍に居て。お前の音がいっとう好きだから。

その愛おしそうに奏でる歌声に、ずくんと胸が疼いた。
気が付いたら声も出さずに泣いていた。
静まりかえった会場のあちらこちらから、啜り泣く声が漏れ聞こえてくる。
それほどまでに情感の籠もった、魂の叫びのような曲だった。


気が付いたときにはアンコールのコールが高々と響き渡っていた。
どうやら俺はずっと泣き続けていたらしい。

もう一度聞きたい。
『カクシャク』。
何度でも、あの声で。あの顔で。歌う善逸を見たい。

会場内からも『カクシャク』コールが響き渡る。
だが善逸が選んだアンコール曲は、『畑を耕します一反でも二反でも』だった。


席を立ち上がることすら出来ない。
圧倒的な多幸感。
人がどんどん消えていく場内で、独り座り込んでいる儘だ。
辺りから人が消え、スタッフ達が片付けを始める頃になって、いきなりどんっと背中を叩かれた。

「おっせーんだよお前!待ってたらちっとも出てきやがらないし!いいから早く来いよ!」
胸のプレートに「ごとう」と書かれているスタッフが、荒々しく俺の手を引く。

「すいません!善逸の歌が凄くてすっかり腰が抜けてしまっていました!!」
「うるせぇよ!お前はそもそも声がでかいんだよ黙れ!」
怒ったように俺を連れ出す「ごとう」さんが、出入り口とは別の場所へと俺を誘導する。
「スタッフオンリー」。
そう書かれた扉を開け、奥の方へとずんずん進む。

…俺はそんなにも長居をしてしまったのだろうか。
…表玄関は施錠されてしまった後なのだろうか。

そんなことを考えていたら、白い扉の前でようやく腕を放された。
「ほら。あとは好きにしろ。しばらく誰もここには近寄らせないから」
そう言って「ごとう」さんが去ったと同時に、扉が内側から開かれた。


「たぁんじろぉぉぉ!!!」
いきなり腕を取られ室内に向かってたたらを踏む。

「…善逸!?」
腕をとっていた相手を認識し、悲鳴のような声が漏れる。

ばたんと閉じる扉の音。
胸の中に飛び込んでくる善逸の甘い香り。

「やっと会えたぁぁぁ!!好き!大好き!今もずっと愛してるよ!」
そう言いながらソファの上へと押し倒される。

「あああ炭治郎の音だぁぁ…!!…ぐすっっ…」
善逸から涙の匂いが迸る。
首筋に腕を回され、体に足を巻き付けられ、俺はもういっぱいいっぱいで何も考えられない。

「ごめんなぁ!俺が素直じゃなかったばっかりにさ…!誘われても3回に2回は断ってたけどさぁ、本当は毎回したかったんだよぉぉ!」
そんなことを言いながら、着ていたシャツの釦をいきなり3つも外してしまう。
白い胸。
そこにピンクの乳首が覗く。

「抱いて。無茶苦茶にして。意識飛んじゃうくらい。…もう任務もないし、腰が砕けるほど抱かれても大丈夫だから…。だからお願い。抱いて…」
ちゅくっと唇が合わされる。
金の髪がはらりと俺の顔に触れていく。
態となのか、音を立てるように舌を吸われる。
その淫らな動き。
馥郁と香る甘い匂い。

善逸の舌が誘うように俺の舌を吸い上げ食み、舌の先端が喉の奥まで挿し込まれる。
飲み込んだ唾液が善逸の匂いで満ちている。

「…好きだ!!!俺も愛している善逸!!」
その背中に腕を回して抱きしめる。
「俺も愛してる!ここ、舐めてっ!吸ってぇ…!俺のお腹のここまで…、炭治郎でいっぱいにしてぇ!」
シャツの裾をぺろりとめくり、握った俺の手で臍の辺りを撫でる。

「…ぁんっ…!ここ…!ここまでいっぱいに突いてぇぇっ…!お腹の中、全部炭治郎で埋めてぇぇっ…!!」

まろい頬が羞恥に赤く染まっている。
善逸の指が、俺のズボンのベルトを外し、その中に挿入り込む。
絡みつくようにペニスを撫でられ、善逸が俺の眼前に乳首を差し出す。

「舐めてっ!噛んでぇ…!俺を全部、炭治郎のものにしてぇっ!!」

俺の手のひらを乳首に導き、善逸が俺の耳朶を食む。
俺の耳がじゅくりと唾液で濡れ、溢れて零れた唾液が首を伝った。

「…好き…!好き…!」

善逸が自身のズボンのベルトを引き抜く。
寛げたそこから、金色の下生えが覗いている。

握った俺の手を、緩めたズボンの中へ導く。

「…も、…早く、…抱いてぇっ…!」
悲鳴のような慟哭を聞いた瞬間、俺の鼻の中から激しい血の臭いが沸き上がった。

「え!?炭治郎!?どうしたの大丈夫か!?」
善逸の体を抱きしめたまま、俺は急速に意識を失った。


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