鬼滅の刃

□最強の血鬼術
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「イヤアアァァァアア!!!???」
汚い高音がまろび出る。

なんで!?
どうして!?
何なんだよこれはぁぁ!!??

ずり落ちる袴を両手で握る。
目の前に居る鬼を攻撃しようと刀に手を掛ける度、呼吸を使おうと足を踏み込む度、何故か袴がずり落ちる。
辛うじて膝に引っ掛かっている袴を引き上げるため刀から手を離せば、もうこの鬼に攻撃することができない。

「たぁんじろぉぉぉ!!!」
誰よりも頼りになる頼もしい同期に声を掛ける。

「なんっでだよぉぉぉ!!!俺の袴一体どうなっちゃってんのぉぉぉ!!!」
振り返り助けてくれと目線をやれば、そこにいるのは真っ赤になって立ち尽くしている男が1人。

「たんじろ!?どうしたんだよおい!」
慌てて駆け寄ろうとすれば、ずり落ちた袴に足を取られてその場に転ぶ。

「いったたたた…!!」
両手を突いて顔からの落下は免れたものの、ずるんと下がった袴の裾を踏んでしまって褌一丁となった尻を高く突き上げた間抜けな格好を晒してしまう。


「善逸!!」
「いたいよぉぉ!!」
駆け寄ってくる炭治郎の手に泣きじゃくりながらしがみつこうと試みる。

「お前は見るな…!」
それなのに何故か、炭治郎は俺と鬼との間に立ちはだかり両手をむんっと広げ始める。

「善逸のあられもない姿を見て良いのは俺だけだ…!!」
炭治郎から鳴り響く轟音が耳をつんざく。

「いやいや!!違うでしょうが!切りなさいよ鬼を!滅殺しなさいよそいつをさぁぁ!!」
鬼に向かって人差し指を突きつける。

「良いのかァ?俺を切ればその血鬼術は解けてしまうぞォ?」
間延びした声で鬼が笑う。

「血鬼術!?」
「お前の袴がずり落ちるのは俺の術なんだよォ」
ぐつぐつと笑う鬼の言葉が理解できない。

「…何を仰ってるんです?頭の中が虫喰いのどんぐりなんです??」
「クックックッ…、良い術だろォ?お前は攻撃できない、…そいつも攻撃できない」
「いやいや!?炭治郎の袴は影響ないからね!?炭治郎は強いんだからな!?」
きっちりと袴を着込んだままの炭治郎に声を掛ける。

「炭治郎!こいつをやっちゃってくれよ!!」
背中に縋り付こうと足を踏み出せば、またもや袴がずるりと下がる。

「ぁぁんっ!?」
袴に引き摺られて解けそうになっている褌をむんずと掴めば、褌が股の間に食い込んで逸物を擦り上げてしまう。
思わず力が抜けて足がふらつけば、その拍子に引っ張られた褌の隙間から、逸物がちらりと空気に触れる。
地響きのような音を立てながら、炭治郎が俺の股間を見つめたまま立ち尽くす。

「俺を切ってしまって良いのかィ?こんな姿も見られるんだぜェ?」
鬼がにたりと笑えば、何故かその場で足が滑る。

「いったたた!!」
思わず転べば、今度は足首にまでずり落ちた袴が邪魔して足を閉じることが出来ない。
大きく開かされた足の間が炭治郎の眼前に広げられる。

ドオオオオオオンンン!!!

途端に鳴り響く、耳をつんざくような轟音。
それに驚いて思わず足を開いたまま耳を塞ぐ。
あまりの爆音に意識が遠のきかけてしまう程だというのに、炭治郎は動かない。

「…なんなんだよぉぉ…!!」
耳を塞いだままよろよろと立ち上がり、炭治郎を支えにして袴を引き上げる。

「ほほォ?効いているようだなァ?」
鬼がニタリと笑えば、引き上げたはずの袴が再びずり落ちる。

「ひゃんっ!!??」
転びそうになる俺の体を炭治郎が支えてくれる。
剥き出しになった尻の辺りをぐにっと掴まれ、なんとか地面に転ばずにすむ。

「ありがと、炭治郎。炭治郎は無事そうだし、俺のことは良いからあいつの首を切り落としてくれよ!!」
叫んでいるのに、炭治郎は俺の尻を掴んだまま、じっと俺を見つめている。
尻に這わされた手のひらが、くににっと蠢く。

「…ゃんっ!?」
びくりと体を震わせ声を上げれば、またもや鳴る轟音が鼓膜を振るわす。

「炭治郎!?」
涙に滲む瞳で見上げれば、弾けるような音が響く。

「…炭治郎…、…手…、あのさ…?」
声を掛けても何故か上の空。
さわさわと俺の尻を撫で上げていく手のひらだけが止まらない。
やんわりとその手を押しのけ、袴を引き上げる。

「…えぇと…?」
状況把握がうまくいかない。
混乱しているとまたもや袴が足首辺りまでずり落ちていく。

目の前に居るのは鬼で。
俺達は鬼殺隊で。
この鬼を切るためにここへ派遣されてきたわけで。
なのに何で炭治郎、…ずっと俺の尻揉んでんの…?

「…善逸っ…!」
熱い吐息が頬に掛かる。
俺よりも体温の高い硬く厚い手のひらが、再び俺の尻たぶを握り込む。

「…えっと…、あの鬼、切ってくれる…?」
やわやわと尻を揉んでくる手を握りこめば、その手を両手で包み込まれる。

「…責任は、取るから…!!」
「いや、なんのさ!?」
その手を払いのけ袴を握り引きずり上げる。

「善逸のあられもない姿を見てしまった!俺は長男だからまだ我慢が出来る!そして責任を取る!」
「いや何の話よ!?お前、今討伐中だろうが!目の前!!!鬼!!鬼が居るから!!」
片手で袴を押さえながら刀の柄に手を掛ける。

「ククク…。俺の血鬼術はすごいだろォ?最強だろォ?お前達の戦意を削ぐことに特化した術なんだぜェ?」
楽しそうに笑う鬼が指先を蠢かせた瞬間、何故か俺の隊服の上着がぺろんと捲れる。

「はぁぁ!?」
臍の上まで巻き上げられた隊服を押さえようと手を離せば、またもや袴がつるんと落ちる。
臍から下は褌一丁となった姿の俺を見て、炭治郎がぐぅっと呻き、喉に何かが詰まったような音を出す。

「炭治郎!?大丈夫か!?」
支えようと手を伸ばした瞬間、上着がずるんといきなりはだけ、右の肩が外気に触れる。

「やぁぁ!?」
あわや胸元まではだけかける上着を押さえれば、炭治郎が真っ赤になって凄まじい音を鳴らし出す。
そのまま何故か前屈みとなり体をぷるぷると震わせている。
なのに、炭治郎の視線は俺の体から動かない。

「ハハハァ!お前がはしたない姿を見せ付ける度、そいつも戦闘不能に陥っていくようだなァ!!」
高らかに笑う鬼の笑顔が恨めしい。

「いや意味がわからないんだわ!なに言ってんだよお前さぁ!?俺なんかの足だの腹だの尻だの見たところで、炭治郎が戦えなくなるわけないじゃろがい!!」
「実際、戦えていないだろォ?完全に戦闘不能ォ!鬼狩り2人がかりで2人共がァ!俺の最強の血鬼術で戦闘不能じゃないかァ!!」
笑い転げる鬼には目もくれず、炭治郎の視線は俺の剥き出しの肌から離れようとしてくれない。

「いや炭治郎!?俺じゃなくてあいつ!あいつを見ろよ!首!切れよ!!」
「俺を切れば、これ以上そいつの淫らな姿を見ることは叶わないぞォ?」
間延びした声で鬼が笑う。

「他の奴らにも笑われてェ、所詮俺はこの程度の術なのだと思っていたがァ、まさかここまで圧倒的に有利になるとはなァ!!」
高笑いをしているあの顔が恨めしい。

「たんじろぉぉ…!」
なんとか袴で前を隠しながら首元に腕を回して縋り付けば、ぺろんと再び袴が膝下まで落ちていく。

「こんなわけわからん術で負けるとかやだよぉぉ!あいつを切ってくれよぉぉぉ!!」
最早下ろされた袴や脱がされた上着を直す気力も湧いて来ない。
曝け出された足を炭治郎の足に絡ませる。
はだけた胸を炭治郎に預けるように抱きついて、背中に腕を巻き付ける。
そのまましがみついておろんおろんと泣き喚くと、炭治郎の音が何故か弾む。

「…あいつを切れば、善逸は俺にご褒美をくれるのだろうか?」
「何でもあげるよぉぉ!」
「本当に?…俺の前で袴を脱いで…、隊服を脱いで…、あいつの術よりももっとたくさん…よく、見せてくれたりするんだろうか…?」
「いや何でよ!?今までだって風呂場で散々見てるじゃろうがい!!」
「いいや、見ていない。見たら我慢できなくなると思ったから、俺は見ていないんだ」
「えっ、あ、そうなの?」
「ああ。…見せてくれるか?…2人っきりで。誰にも邪魔されないところで。善逸のあられもない姿を。全部」
「なんでもする!なんでもするからぁ!!後ろ後ろ後ろ!!鬼が来てるよぉぉ!!」
泣き喚いている俺に向かって、炭治郎が爽やかな笑顔を向ける。

「約束したからな、善逸!」
魅力的な笑顔を見せ付けながら、炭治郎が一言「肆ノ型、打ち潮」と呟いた。
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