結界師二次創作「兄さんと僕。」

□罪と罰〜六郎の場合〜
2ページ/2ページ



 先ほどと変わらず、とても怖い顔をした弟には…言えない、けれど。


 剥き出しになった肌に、そっと弟の手が這わせられてくる。


 肌を撫でてくる感触は…とても丁寧に、まるで、自分の体を撫でまわしているようで…。





 …何かの、違和感を…、感じる。





 肩をさわり。胸をさわり。…胸の突起を、撫でて、摘まんで、こね始めている…その手。
 
 脇腹から、腰にかけてをなぞられて。

 …ん、と声が出る。



 なにを…、と問いかけようとした、瞬間。



 …七郎の顔が、胸に覆いかぶさってきて…。


 そのまま、…自分の胸を…舐めはじめる…。



 舌先で、転がすように。

 
 ちゅ、と軽く、まるで…口づけているように…。






 そして…唯一身につけていた、下着までもが。


 ゆっくりと、剥ぎ取られ。


 外気にさらされた部分を。


 …握りこまれる…。
















 …なにか…おかしい。


























 殺される、と思っていたのに。

 だから、覚悟を決めたのに。





 …これではまるで…慰み者に、されるかのような。











 そこまで考えて…思わず、自分の胸に顔をうずめている、七郎の頭を…。



 軽く、抱える形で。

 上体を、起こそうとする。





 起き上がることはできなかった。


 七郎が、協力的ではなかったからだ。





 だけど、顔だけはこちらを向く。




 「…なに…してる…?これじゃ、まるで…」



 横たえられたまま、七郎の顔を見て問いかける。







 「…俺が、あなたを殺すかもって…本気で思ってた?

  俺が…何を考えてきたか…本当に、まったく、なにも。 

  …考えてなかったんだよね…?あなたは…。

  あれだけずっと…あなたのことが好きだって、俺はちゃんと…あなたに、伝えていたのに…ね…?」






 そういって柔らかく、微笑む…七郎の顔は。

 そのままの、笑顔で。





 「…だから、ね…?…抵抗しないって…俺の好きにしていいって…。

 あなたが言ったんだよ、俺に…。

 あなたが俺に…自分のことを…好きにしてって…そう…言ったんだよ…」






 …そんな意味じゃない、と。


 思ったけれど。




 微笑む七郎の顔に…。徐々に…。狂気に似た、何かが垣間見えてきて…。




 七郎の顔を見つめながら…体が動かなくなる。






 まさか。そんな。嘘だろ。



























 …しばらくそうしていて…。





 七郎が、再度。







 自分の胸に顔をうずめて…。

 舌を…出して…見せつけるように…胸を…舐めまわし…始め…。

 指先が…先ほどまでの動きを…再開、し始める…。






 駄目だ、逃げないと…。思っているのに、体が動かない。




 その間にも…胸から首筋…腰へと…。


 ちゅ、ちゅ、という淫らな音が、耳に響いてくる。


 強く吸われ…歯をたてられ…。


 そのたびに…、んっ…という、微かな声が。


 自分の口から零れ落ちる。





 しばらくそうして上体を彷徨っていた、七郎の舌が…下の方へ…滑り降りてくる…。



 嫌だ。言葉にしたいのに、喉のところで、言葉が貼りついていて、音にならない。


 そんな渇いたのどから。


 …いやあっ…とかすれた声が出る。

 自分の背中が、びくりと跳ねるのを感じる。


 見やると、七郎が。…自分の性器を…その唇で…銜え込んでいる。


 ちゅくちゅくと…音を立てて。舐めまわし、唇で食み、強く吸い尽くそうとしている。



 やだ、やめ、…あっ、いや、いや、やめ、…やあっ、やだ、やだ、やだ、やめ、…。


 足をばたつかせる。

 自由なままの腕で、七郎の頭をたたく。

 …でも、やめてくれない。

 経験したことのない快楽の中で、腕にも足にも力が入らない。



 体がぶるっと震え…自分が達したことを悟った。



 恥辱と、羞恥と、悔しさと。




 涙があふれてくるのがわかった。





 七郎の頭をたたく。足で七郎の足を蹴る。


 …でも、どいてくれない。


 …自分を、解放してくれない。




 …。どうして。こんなに自分を辱めて、これ以上、何を。


 まなじりから零れ落ちそうになっている涙を、七郎の舌がすくい取る。

 そのまま、ゆっくりと、抱きすくめられ。


 …両腕の自由が利かなくなったことに、気づかされる。




 嫌だ、もうやめてほしい。



 かすかな声が零れ落ちる。



 すると、七郎の唇が、自分のそれを塞ぐ。

 舌を差し込まれ、口腔内を丹念に舐めつくされる。

 渇いた口の中が、二人分の唾液で潤う。

 潤いすぎて、苦しくなる。

 堪えきれず、んっ、と飲み込む。


 …七郎の体が、震えた気がした。


























 …それからのことは、よく覚えていない。


 足の間に、ぬるりとした何かが差し込まれ。

 何かで濡らした、七郎の指だとわかったときには。

 掻き回され。ぐずぐずにされ。


 あげる悲鳴は、そのまま七郎の唇に吸い込まれた。




 前を嬲られ。後ろを嬲られ。



 …なにがなんだか、訳が分からなくなってきたころ。




 …やあああああっ…。




 自分の唇から、悲鳴がほとばしるのが聞こえた。



 嬲られていた、足の間に。


 先ほどまでとは明らかに質量の違う何かが。


 …差し込まれていた。



 痛い、痛い、痛い、

 嫌だ、やめて、嫌だ、お願いだから、もう嫌だ、


 あげようとする言葉はすべて、悲鳴となった。




 激しく揺さぶられ、前後に揺り動かされる。

 その間にも、唇に。首筋に。胸に。


 舐められ、吸われ、噛みつかれていく感触がよぎる。





 嫌だ、もう嫌だ、いや、いや、いや…。





 悲鳴すら掠れて声にならなくなる。

 腹を押され、揺さぶられ、反射として発せられる声だけしか、耳に届かなくなる。




 手を振り回しても、汗ばんだ七郎の体のせいで滑ってしまう。




 激しく揺さぶられ、空中から落下するような衝撃を感じる。

 一瞬後には、自分の背中にはベッドがあって、落ちるような場所ではない、と気づくのだけれども。


 …落ちていく衝撃を、何度も感じる。


 脇腹から腰へと、何度も撫でまわされる。

 胸の突起への刺激は、いっそもう噛み千切られたほうがましだ、と…思えるくらいの痛みを伴っている。


 どれほどの時間が経過したのかもわからない。

 でも、決して短い時間ではない、とも確信する。





 …空中へ放り出されるような感触を、幾度となく味わう。




 背中に当たっているベッドの感触が、何故か消えてしまうのだ。




 助けて、誰か。


 そう思って、思わず七郎の体にしがみつく。

 堕ちていく感触から逃れたくて…。背中に腕を回し…、軽く抱きしめるような体勢になる。


 もとより、七郎が自分を助けることなどできないと、するわけがないと、わかっているはずなのに。


 それでも…七郎が…自分の方を向く…。




 痛い、苦しい、嫌だ。もう。


 涙と唾液とでぐちゃぐちゃになった顔で七郎の顔を見上げる。




 …見上げた七郎の顔も…涙と唾液とで、ぐちゃぐちゃになっていた…。



 泣いている、七郎が。


 どうして、こんなに泣く必要が?


 …七郎の思うとおりに、自分を蹂躙しているくせに…?凌辱、している、くせに…?










 ずるり、という感触がして。


 自分が何かから解放されたのだ、とわかった。




 だけど涙はとまらなくて。


 何が悲しいのかもわからないまま。



 …裸のまま、声を上げて、ベッドに顔をうずめ…。


 …号泣、していた。





 声を上げて泣きじゃくる自分の頭を、七郎がそっと抱きしめるのがわかった。


 だけど、何が悲しいのかもわからないまま、自分で零す涙を、あげる声を、とめることはできない。



 そのまま抱きしめられ…背中に、七郎の泣き声を聞きながら…。



 …そのまま、意識を。…失ってしまっていた…。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ