結界師二次創作「兄さんと僕。その7」

□秘密事
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 「…兄貴も七郎も、互いを警戒しすぎだよな。まさか、七郎は六郎と付き合ってるから大丈夫とも言えねぇし」

 「七郎も似たようなもんだ。正守には夜行も良守もいるんだし、俺にどうこうもねぇだろって言ったら、あんなたぬきと兄さんを比べるなんてって喚いてた」

 「俺の何処がたぬきなんだよっ」

 「顔だろ」

 「ひでぇ!」

 「お互いさまだ。…俺だってこんな躰なんだから、正守が俺に用があるわけもねぇ」

 「…あったら絶対許さねー…」

 「なんだ。焼きもちか」

 「兄貴は俺の男だからな!他の奴には絶対渡さねぇ!」

 「俺の男…へぇ」

 その言葉の力強さに思わず瞳を見開く。



 「六郎は?七郎は俺のって思ったりしねぇの?」

 「…ないな。七郎は当主だ。俺のものじゃない」

 「七郎が聞いたら落ち込みそうだな」

 「…あれだけ付き合ってやってるんだ。それだけでも充分だろ」

 「やっぱ毎晩?」

 「無茶言うな。躰がもたない」

 「七郎はそれでもいいんだ?」

 「一応毎晩七郎のベッドで寝てるがな。予定の日以外に手を伸ばしてきたらとりあえずはたいている」

 「うわひでー!予定の日って?二日に一度?」

 「三日に一度だ。それ以上は付き合いきれない」

 「まじでか!…うちは毎晩やってる。それも何回もしてる。ちょっとやりすぎかな…」

 「正守に言って聞かせろよ。もたないだろ」

 「…いや、それが俺も結構楽しんでる」

 「…へぇ」

 「いやいや!だって兄貴結構激しいし、うまいと思うしさ!ほらうちって結界術使えるから、念糸で縛ったり式神出してプレイしたり色々楽しめるんだよ!」

 「…別にお前らの閨の事情は聞いてない」

 「いいじゃん。ほかのやつらには絶対言えないし。…こんな話出来るのも六郎だけだし」

 「…まぁ…俺もこんな話他の奴らには出来ないしな…」

 「だろ?な、普通のえっちってどうやんの?俺らってほら、結界術を使えるから特殊だとは自覚してるんだよな」

 「普通かどうかなんて知らねぇよ。七郎しか知らない」

 「だよな。…俺も兄貴しか知らない。で?どんなふう?」

 「躰中舐められてまさぐられて挿れられて終わりだ」

 「…躰中…すげぇな…」

 「お前の所は違うのか?」

 「…まず念糸で縛られて、恥ずかしい格好させられて、兄貴にご奉仕させられて、自分でしごいたり慣らしたりさせられて…」

 良守が思案顔になる。

 「式神と複数プレイとか足を開かされて前と後ろを同時に嬲られたりして、挿れてぇって喚かされて、散々揺すられてもっともっとぉって叫ばされる」

 「…俺ならはっ倒して部屋に帰るぞ…」

 「それが気持ちいいんだよな…。刺激された後兄貴の髭とかで擦られるともうすげぇ頭が蕩けそうになってくる」

 「そんなのが気持ちいいのか」

 「自分の式神と一緒になって兄貴のそれ舐めさせられて、兄貴の式神に前を吸われながら後ろを兄貴に犯されるって感じ。坊主頭を触りながら前を舐められるのって最高」

 「…何処がいいんだ…」

 「その間ずっと俺の乳首と張りつめてるそれが念糸で縛られててさ、頭がおかしくなるってくらい焦らされてから一気に念糸が消えて絶頂に達するの。我慢した分すげー快感」

 「…へえ…」

 「あと、道具とか使われる。猫耳とかつけてプラグのついた尻尾挿しこまれたりとか」

 「…ぷらぐ…?」

 「あ、アナルプラグ。電動で動いたりするの」

 「…正気か…」

 「あれ?七郎って道具とか使わねえの?」

 「そんなもん突っ込ませるわけねぇだろ…。ぶちのめして二度とさせねぇ」

 「結構いいぜ?」

 「断る。…いや…、そもそも七郎はそういったものは使わないな…」

 あごに手を当てて考える。

 「むしろ、自分以外が俺の躰に触ったりしたら狂気じみた顔になる」

 「狂気じみた顔…?」

 良守が首をかしげる。

 「これだけ散々口づけの痕とかつけてるくせに、自分がつけた痕は全部覚えているらしい」

 さらりと着物の襟元を割ってみせる。

 「…すげ…痣だらけ…」

 良守が呆れたように見つめる。

 「自分がつけた痣と違う痣がついていると途端に不機嫌になる。俺はこんなところに痕なんてつけていない、誰につけられたんだってな」

 着物を直しながらこたえる。

 「書庫で書物を漁っているときに本が崩れてきたことがあってな。それで躰に痣がついたことがあったんだ」

 「…それは浮気でもなんでもないだろ…」

 「だろう?なのに七郎がきれた」

 「なんでまた」

 「兄さんは無防備すぎるとか、そんな無機物に痕なんかつけられるなんて許さないとか」

 「…で…どうなったんだよ…」

 恐る恐る良守が問いかける。

 「俺が全部上書きしてやるって上からかじられて吸い付かれた」

 「…すげ…。本にまでやきもち…」

 「いつもそうだな。兄さんは俺と本とどっちが大事だとか、仕事と俺とどっちを優先するんだとか」

 「…うわ…七郎激しい…」

 「仕事に決まってるだろって言い返すけどな」

 「ひでー!そこは甘くお前だけとか言ってやれよー!」

 声を上げて良守が笑いだす。

 「冗談じゃねぇよ。図に乗るだろ」

 「愛してんじゃねえの?」

 げらげら笑いながらも良守が問う。

 「当主だからな。仕方なく従ってるだけだ」

 「気持ち良くなったりしねぇの?もしかして七郎下手?」
 

 「…一応うまいんじゃないか。その気もないのに気持ち良くさせられるしな」

 「だったらやっぱり好きなんじゃねえの?六郎嫌なことは結構はっきり言うじゃん」

 「慣らされてるだけだ。…まあ、俺の躰のことは七郎が一番よく知ってるかもな…」

 「そうなんだ?」

 「どこが気持ち良くなるかとか…。どうしたらどうなるかとか…。まあそれだけ数をこなしてるしな」

 そのときのことを思い出す。

 「どこを突いたらいいかとか、擦ったらいいかとか…。胸とかいじるのもうまいな…」

 「六郎って胸で感じるタイプ?」

 「お前はそうじゃないのか?背中に電気が走ったみたいに気持ちが良くなる」

 「俺は直接後ろで感じるかも。もっともっとっていつも言わされる」

 「…結構言わされるんだな…」

 「お前んとこは?言わないのか?」

 「言わない。何も言わなくても七郎が全部する」

 「全部?」

 「脱がせるところから、終わって躰を拭って着物を着せるところまで全部だな」

 「…まじでか…。七郎すげぇ甘い…」

 「最中は耳をふさぎたくなる。大好きとか可愛いとか、兄さん天女みたいだもう天の国には帰さないだとか」

 「あまっ!俺そんな事言われた事ねえ!」

 「虫唾が走る。可憐な妖精だの俺だけのコロボックルだの、こんなに綺麗な兄さんを誰にも見せたくないだの」

 冷めたお茶を飲み込む。

 「監禁したいだの閉じ込めて誰にも見せたくないだの、なまじ冗談にも聞こえないからたちが悪い」

 眉間にしわがよる。



 「躰中撫でまわされる。膝だの胸だの枕にしてそのまま寝たがるから重いしな」

 「…いずこも大変だな…」

 「お前のとこよりましだろ。複数だの道具だの考えたくもない」

 「俺はそっちの方が無理かも…。兄貴がそんな甘い言葉で責めてきたら悶え死ぬ」

 「正守は言わないのか?」

 「俺に言わせたがるな。早くいれてとか、もっと奥まで突いてとか、焦らさずにいかせてくれとか」

 「…言うのか」

 「言わねーと挿れてもらえないし、終わらないしな」

 「…ふん…」

 「たまには六郎も言ってみたらどうだ?七郎大好きとか、愛してるとか」

 「…心にもないことは言わねぇ」

 「…本当は好きなくせに。たまには言ってやれよ」

 「…おい…」

 「だってそうだろ。六郎、嫌なら絶対相手にしないし」

 「七郎が当主だから仕方なくだ。勘違いするな」

 「俺は兄貴のことが好きだからしてる。兄貴は俺の男だと思ってるし、浮気とか絶対許さない。六郎は?七郎が浮気したらどうすんの?」

 「…好きにしたらいいさ…」

 「あ、今眉間のしわが深くなった」

 けらけらと笑う良守の顔を睨みつける。

 「…お前のところと一緒にするな馬鹿」

 顔をそらしながら舌を打つ。

 「六郎ってさ、都合悪くなると顔を背けるよな。普段は人の顔見て話をするのに」

 「…俺は無理矢理従ってるだけだ。だから違う…」

 良守を睨みながら唇を尖らせる。残りの茶を一息に飲み込む。

 「…ごちそうさま」

 「おかわりは?いれてくるぜ?」

 「もういらない。帰る」

 「照れなくていいのに。俺だってしてるんだから。…ってもうこんな時間か。兄貴たち帰って来るかもな」

 「…あぁ…。帰ってきたなこれは…。そういえば、今日は夜行にいると朝七郎に言って来た…」

 「え?わかんの?」

 「風が動いてる。七郎の風だ…」

 良守が窓を開けて庭を見る。



 「…兄さんっお待たせっ!!」

 その瞬間、満面の笑みで七郎が飛び込んでくる。

 「待ってねぇよ。なんでこんなところにいるんだお前」

 「だって兄さんが夜行にいるっていうからさ。迎えに来たよ。一緒に帰ろう兄さん」

 「あれ?七郎兄貴は?一緒じゃねぇの?」

 「正守さんならもうじきだと思うよ。僕の風の方が早いしね」

 「…一緒に連れて帰ってくれても良かったんじゃん…」

 良守が不満そうに七郎を見上げる。

 「…正守さんが帰って来る前に、兄さんは家に帰りたいだろうとそう思って」

 ひんやりとした笑顔で七郎が微笑む。

 「…七郎」

 腕を組んで嗜める。

 「あぁごめんね兄さん。じゃあ帰ろう?…ばいばい、良守」

 ぐいっと腕を引かれてため息をつく。

 「じゃあな、六郎…」

 振り向いた先では良守が唇だけで「頑張れ」と囁いているところだった。

 こくりと頷いて七郎の風に乗る。

 正守もじきに戻るのだろう。だったら長居は無用だ。余計ないさかいを起こして七郎を怒らせてはたまらない。

 …結局俺が酷い目に合わされるのだ。



 「…ねぇ兄さん、良守と一体何の話をしていたの?」

 七郎が怪訝そうに問いかける。

 「…菓子の話を聞いた。だっくわーずというのを食べた」

 後の話は割愛する。嘘は言っていない。

 「…まぁ…良守とならそんなもんか…」

 七郎が眉をしかめる。

 「…兄さん…ここなら誰にも見えないよね…空の上だし」

 ぎゅっと手を握られる。

 「…だからさ…キスしよ…」

 近づけられる顔をぺしんとはたく。

 「そんなのがしたいんなら地面としてろ馬鹿」

 「…地面にキスしたら、そのあと兄さんにキスしてもいい?」

 「なんでそうなるんだ。意味が分からない」

 「だって…今日は出来ない日だし…。俺は兄さんに触っていたいし…」

 ちっと舌を打つ。

 面倒くさい。正守と会ってきた後の七郎はいつもこうだ。

 兄さんは俺だけの兄さんだの、他の人には触らせたくないとか、独占欲がいつも以上に強くなる。

 「…知るか…。明後日には出来るんだから我慢しろ…」

 「今日…我慢できない…」

 ぷくりと頬を膨らませる。

 「…ほら…」

 しぶしぶと手を差し出す。すかさずその手を握られる。

 「…キスもしたい…ねぇ兄さんお願い…」

 捨てられた子犬のような眼で見つめられるから顔を逸らす。

 …この顔には弱いのだ。

 「…兄さんの意地悪」

 言いながらも握りしめた手に唇を寄せる。

 「…手袋に何してんだ」

 「…キス…」

 「…ちっ…」
 

 舌を打つ。
 

 「…帰ったらな。…一度だけな…」

 「…ありがと…。兄さん大好き…」

 にこやかに抱きしめられて息が苦しい。

 ―…馬鹿、と一言つぶやいてそっぽを向く。

 




 ―…当主だから…だから従ってるだけだ…。

 唇を尖らせながら、自分の躰を抱きしめている七郎の腕にそっと自分の腕を這わせていく。







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