鬼滅の刃

□我慢できない長男と健気な善逸って最高ですよね
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腕から隊服を引き抜く。
俺自身も邪魔な隊服を脱ぎ捨てていく。

息が熱い。
呼吸がうまく使えない。

がむしゃらに手のひらを這わせて吸い上げて…、朱い痕がついていくのが嬉しくて、背中がぞくぞくしてきて、それから…。
胸元に色づいている桜色。
そっと唇を寄せれば、ぷくりとしたそれが匂い立つように俺を誘う。

舌先だけでつついてみると、更にぷくりと固さを増す。

…なんて…美味しそう…。

「…ひゃぁんっ…!」
ちゅくりと吸い上げると、頭の上から可愛い声が響いてくる。
「…ま、待って…!なんか…、待ってってば炭治郎!それだめ!…何か、俺それだめ…!」
「そうか…。善逸は…ここが、良いのか…」
じゅくじゅくっと何度も強く吸い付いていくと、善逸の体がよじれていく。

…泣いている匂い。
…それと…、熟す直前の果実のような、この匂い…。

脳が熱を帯びていくのが分かった。

隊服のベルトに手を伸ばす。
がちゃがちゃというその音は、善逸の耳にはどう響いているのだろう。

…俺が感じているこの匂い…。
善逸には…わかっているのだろうか…。

ちぅっ…と細く強く吸い上げると、声にならない悲鳴が喉に絡まる音がした。

「…まって、って…、言ってるのに……ぐすっ…」
鼻声になってはいるけれど、それでも蹴り出す足は出てこない。


善逸が本当に嫌なら蹴り上げてくるだろう。
肋が数本は折れるだろうが、俺のせいなのだからそれは仕方なく甘受する。

−…蹴られないと言うことは、まだ大丈夫と言うことか…。

自分にとってだけ都合が良い解釈であることは理解している。
それでもこのまま蹴り出されなければ良いのにと言う甘い期待が胸から離れない。

善逸の足からも隊服を引き抜き、自身のそれもまた脱ぎ捨てる。
剥き出しの肌同士が触れ合い擦れ合って奏でる匂いに目の前がくらくらしてくる。

−…全部…、全部触って…、全部…舐めたい…。

はぁはぁと息が荒くなる。

どこもかしこも触れたくて仕方が無い。

善逸の体の全てが俺の情欲を駆り立てていくのだ。
甘い匂い。
切なそうに響く声。
こんなことをされているのに、どうしてこんなにも健気に耐えてくれるのだろう。
互いに一糸まとわぬ姿のまま、こうして睦み合っているというのに。


ずっと触れたくてたまらなかった。
友人としてではなく…こんな風に。
浅ましい欲望を隠すことなく、この体に触れたいと、ずっと願っていた。

−…こんなことで叶えるなんて…最低だな…。

自嘲するが抑えきれない。

温かな肌。
引き締まった体。
その全てから匂い立つ甘さ。

足の付け根まで何度も強く吸われて、羞恥で胸を焦がしている。

−…どこまで我慢してくれるのだろう。
−…ここ、は…。


勃ちあがりかけたそれにゆるりと手を絡ませると、善逸の瞳から大粒の涙がこぼれ出す。

「…すまない…、だが…我慢、出来そうに無いっ…」

荒い息で懇願する。

ここで辞めろと言われても耐えられない。
我慢できない。

「うぅぅぅ…」
俺の体の下で健気に耐えながら、それでもぐすんぐすんと泣いている声を聞けばやはり胸が痛む。


−…これ以上は…、無理だろうか…。

…やめられるだろうか。こんなところで。
ごくりと唾液を飲み下す。

耐えられるだろうか。
こんなあられもない姿を見せつけられて。
こんな…甘い匂いを胸いっぱいに吸い込ませておいて。



「…た…たんじろっ…」
はぁはぁと荒い息をさせながら、善逸の濡れた瞳が俺を見上げる。

−…ここまで、だろうか。
−…それでも善逸は、本当に我慢してくれていたのだ。
−…これ以上…無理強いは出来ない…。


「…は…、はおり…」
「…羽織…?」
「…俺ので、良いからぁ…。無理だよ無理無理恥ずかしさで死んでしまう…。だから…み、見るなって…」

いやいやと頭を振る度に、金の光が瞳を捉える。

「…俺に触られるのが嫌で…辞めて欲しいと思っているのじゃないのか…?」
「は?なんで…?嫌なら蹴り倒せって言ったのお前だろうが…。俺、お前のことまだ蹴ってないぞ…」
善逸の手が俺の腕を掴む。
「だから…!恥ずかしいから羽織を掛けてくれって言ってるの…!そのくらい出来るだろうが…!」
「…続けても…良いのか…?俺は我慢しないぞ?善逸」
「…た、んじろ…なら…、良いって言ってる…!言わせんな馬鹿っ!良いから羽織…!羽織貸せって…!」
「…俺なら…?何故だ」
「い…言わなきゃ…だめ…?」
「聞きたい。善逸」

頬を撫でる。
涙とか唾液とか色んなもので濡れている。
その頬に唇を寄せる。
「…言ってくれないと…。俺には分からない…。聞かせてくれ、善逸」

ぐすぐすと泣きながら体を朱に染めている体を組み敷いたまま、頬に、髪に、唇を落とす。

「頼む。…聞かせてくれ、善逸。俺は四角四面の長男だから、言って貰わないとわからないんだ」

金の髪に指を絡ませる。
ふわりとたちのぼる匂いと色香が、俺の背中を震わせる。

「…だょ…」
「聞こえない。…俺は善逸ほど耳が良くないから」
「…俺も好きだよっ!ずっとずっと!おにぎり貰ったときから炭治郎のことが好き!」
「…おにぎり…?」
なんだか力が抜けてしまう。

「…あんな優しい音させてさ…。1つしか無いおにぎりくれてさ…。そんなの好きになっちゃうじゃん…。俺のせいじゃないからな…言わせたのお前だからな…馬鹿炭治郎…」
泣きながら真っ赤になって見上げてきた金の瞳が、甘く甘く俺を睨む。


どくんと胸が弾む。
そんな場合でもないのにときめきが止まらない。

組み敷いて、服を引き剥がして、力任せに嬲ろうとしているのに。
…善逸の優しさに満たされる温かさが、俺の体を柔らかなもので包み込んでいく。

朱く染まった頬を撫でる。
柔らかな唇に吸い付いて、胸をさらりと撫でて、乳首をきゅっと押しつぶす。
「…っんぅっ…!」
脳髄まで溶かしそうな甘い声と匂いに衝動が流されていく。
もう一度。
もう一度唇を吸って、それから…。


「…待って。ちょっと本当に待ってくれないか炭治郎…!」
善逸がきりりとした顔で口づけをしようとした俺の顔を押し戻す。

「…どうしてだ?善逸からそんな風に言って貰えたのに…ここで止められると俺は切ない…」
きゅぅんと子犬のような瞳で善逸を見やる。

勿論善逸が俺のこうした顔に弱いことは知っている。


「いや…だから本当にちょっと待って?ねぇ炭治郎…。さっきまであった鬼の気配の音…消えてない?血鬼術…解けたんじゃないの…?」
ずりずりと俺の体の下から這い出して、自分の手で羽織を掴んで体を隠している。

「な?…消えたよな…?」

な?な?と羞恥に顔を朱くしながら見上げてきたりして、善逸は本当に俺を煽るのが天才的にうまい。


「…消えたかもしれないが、俺はこのまま辞めたくはない!」
胸を叩く。

「え?」

「善逸が健気に耐えてくれたりするものだから、いくら長男といえどももう我慢は出来そうにない!」
「炭治郎さん…?ちょ、え、待っ…」
「鬼の術中に嵌まった状態で善逸を抱くなんて我慢ならなかった。自分で自分を許せないと思った!俺は俺自身の意思で善逸に許して貰って抱きたいとずっと思っていたんだ!」
「あ…、どっちにしても俺が抱かれる方なのね?」
「善逸が可愛いからそうなってしまう」
立ち上がろうとしていた体を押し戻す。


「だからすまない。このまま許しては貰えないだろうか!」
ぺろりと首筋に吸い付く。
ここが弱いことは先ほどしっかりと確認済みだ。

「ひゃんっ…!ま、炭治郎、まっ…!」
「待てない。頼むから…善逸…」
善逸が握っていた羽織を取り上げる。
「全部…見せて欲しい…」
「…と…とんでもねぇ炭治郎だ…」

ぷしゅうと空気が抜けるように、真っ赤な善逸から力が抜ける。
「…さ…、最後までは駄目だからな…!」
「駄目なのか…?」
「俺の!心の!心の準備が!出来ていない!」
「出来たら…良いのか?」
「…駄目だって言ったら…、我慢するのかよお前…」
「善逸が良いと言うまで我慢する。…だから、なるべく早く心の準備を整えてくれると嬉しい」
「…ぜ…善処は…するっ…」

羞恥の匂いをさせながら、俺の方を見ることもなく囁かれたそれに、思わず相好を崩す。

「…なら…、最後まではしないと約束するから…。全部、見せて欲しい…」
「散々っ…!見ただろうが…!」
「血鬼術に掛かっていたからあまり覚えてないんだ」
「だからお前は嘘が下手なんだよ…!」

「善逸」
耳元で名前を呼ぶ。
「…もぉっ!好きにしろよ…!」
「良いのか?」
「…最後までは駄目だかんなっ!?」
「善処する」

するりと腰を撫でる。
ひくん、と震える体を抱きしめて、温かな体を力一杯抱きしめた。


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