結界師二次創作「兄さんと僕。」
□欲望
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夢を見た。
兄さんにかけられているまじないを、扇家のまじない師達に解析させてみた。
なにしろ、最初に兄さんに術をかけた一郎兄さんたちも、そのあとに術をかけなおした奥久尼も、皆死んでしまっている。
兄さん自身にも、自分にかけられている術のことがわかっていないのだから、これから先、何がおこるかわからない。
…そんなわけで、兄さんには扇家お抱えのまじない師たちによる解析プログラムを受けてもらった、わけなのだが。
…まさかこんなことになるなんて。
解析プログラムから帰ってきた兄さんが、俺の部屋にやってきて、体の変調を訴えてきた。
普段はいくら熱があっても痛みがあっても何も言わない人だから、自分はひどく緊張していたと思う。
自分がすすめた解析だからなおさらだ。
…ところが。
俺の部屋に来るなり、兄さんが。
着ていた白い着物を…。
はらり、と自ら剥ぎ取りはじめたのだ。
驚いてこわばる体で、必死に顔を背ける。
…見てしまったら止まらない…。
「だから、ちゃんと見ろって。お前、いったい何をさせたんだ?」
滾る気持ちを何とかして抑え込みつつ、兄さんの方へ向き直る。
すると。
…兄さんの体が、胸が。
…もともと薄い兄さんの胸が。あの胸が。膨らみはじめたばかりの少女のように、ふっくらと膨らんでいる…。
「今更見た目に興味はないが、さすがに性別がかわるのは驚くだろ。なんでこうなったんだ?」
…その胸の膨らみを見て…。
気づいた時には、じっとりとした不快感とともに目が覚めていた。
…ゆっくりと起き上がり、風呂場へと向かう。
汚れた下着は、軽く手洗いでもしておかないとまずいだろう。
…あんな、かすかな膨らみで。
まさか、自分がこんなことになるなんて。
…ああ、俺は本当に頭がいかれてるんだな。
誰もいない廊下で自嘲する。
兄さんが相手なら。
それが少女の姿をしていても、少年の姿をしていても。
そもそも、自分が恋心を自覚した少年時代、兄さんは確かに自分より年上の姿をしていたのだ―…。
本当に、あの人は無防備だ。
くすりとした笑みがこぼれる。
…あの、何にもわかっちゃいない酷い人は、きっと今頃、自室でぐっすり眠っていることだろう。
…同じ屋根の下に、こんなに危険が潜んでいるというのに。
まあ…できる限り、あの人を傷つけないよう、努力はするけどね…。
この様子だと、その努力が破られる日も近そうだ…。
周囲には誰もいないけれど、そっと兄さんの自室の方をうかがう。
…今のうちに、ゆっくり眠っているといい…。
そんな思いを込めて。