結界師二次創作「兄さんと僕。その6」

□玩弄物
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 「…ほら。ひざまずいてしゃぶれよ。当主後継者殿」

 下卑た笑いを漏らしながら、ソファに腰かけた五郎兄さんが足を開く。

 「俺をいかせることが出来たら、今日はそいつをお前にくれてやる」

 くいっと顎をしゃくり上げる仕草で、六郎兄さんを指し示す。

 「どうする。お前次第だ」

 くつくつと鬱屈した笑い声が部屋に響く。

 視線の先では六郎兄さんが、諦めたような…怯えたような…。

 そんな瞳で、何もない空中を見つめている…。







 「…これ以上六郎兄さんを嬲ることは許さない」

 六郎兄さんの部屋で毎夜繰り返されている凌辱の夜。

 頭から冷水をかけられたように凍えたあの夜。



 五郎兄さんに組み敷かれ、その躰を汚されていた弱々しい人。

 けだもののようにその躰を貪る姿の醜悪さ。

 思わず体が動いた。

 風で五郎兄さんの体を吹き飛ばし、二人の間に割って入った。

 許さない。

 殺してやる。絶対に許さない。

 そう喚いた俺を。

 …他ならぬ、六郎兄さんが地獄の底へと叩き落とした。



 「…五郎兄さんっ…!」

 青ざめた顔。

 白い躰をむき出しにして、六郎兄さんが五郎兄さんのもとへと駆け寄る。



 「…大丈夫ですか…!」

 俺には目もくれないまま、裸のまま五郎兄さんの体にすがりつく。

 「…ってぇ…」

 頭をさすりながら起き上がる五郎兄さんに安堵の顔を見せながら、俺を振り返り睨み付ける。

 「…ガキが…。出ていけ。お前には関係ないことだろう…」

 ぎりぎりと歯を噛みしめるように、俺に向かって吐き捨てる。

 「…六郎…兄さん…?」

 普段とは違う怖い顔。

 俺が悪戯をしたときに叱ってくれる時とも違う顔。

 何故。

 俺は兄さんを助けたのに。

 けだものから…大事な六郎兄さんを救いだした筈なのに。



 「…そういうことだ…」

 くつくつと笑う昏い声が、六郎兄さんの肩を抱き寄せる。

 「お前より俺がいいんだとよ、こいつは…」

 そう言いながら、見せつけるように六郎兄さんのお尻を揉みしだく。

 「…ごろ、にいさっ…」

 いきなり足の間に指を挿しこまれ。

 六郎兄さんが小さく悲鳴をあげていく。

 「…なんだ。まだまだ…ここはひくついてるじゃねぇか…」

 「…に、いさ…」

 六郎兄さんの躰が淫らにくゆらされていく。



 「ほら。ガキは出ていけ。まだまだ足りねぇんだとよ。お前の大事な六郎兄さんは」

 べろりと舌を出し、六郎兄さんの胸を舐める。

 「…ぁんっ…」

 甘い声。

 俺が聞いたこともない声。



 「…ガキじゃない…。俺はもう大人だ…」

 手のひらを握りしめる。

 仕事だってこなしている。

 家の細々したことを采配しているのも俺だ。

 今ではもう、親父が決めることなどあまりない。

 そのくらいに。…俺はもう、大人なんだ…。



 「…俺はもう一人前の大人だよ。六郎兄さん…」

 六郎兄さんに向かって手を伸ばす。

 「俺は兄さんを必ず守る。約束する。だから俺を選んで」

 俺を見つめる六郎兄さんの頼りない瞳。

 綺麗な紅い瞳が涙で滲んでいく。

 五郎兄さんが俺に見せつけるようにぐちゅりぐちゅりと指を捻じ込んでいく。

 「…ん…ぁぅ…、見て…んな…。出てけ…」

 泣きそうな声。しっとりとした情欲を含んだ声。

 羞恥か快楽か。白い躰に桃色が浮かぶ。



 「…面白ぇ…」

 五郎兄さんが六郎兄さんの躰を布団の上へと押し倒す。

 「当主後継者殿はもう大人か。…俺たちが何をしてるかわかって言ってんのか…?」

 「五郎…兄さん…?」

 裸の白い躰が、布団の上で半身を起こす。

 「てめぇはそこにそうして転がっていろ」

 五郎兄さんの一瞥で、六郎兄さんが動きをとめる。



 ―…まるで…調教。

 愛情があるようには見えない。

 こんなけだものに。

 この清純な人が愚かなほどに汚されていくなんて。

 ぎりりと五郎兄さんを睨み付ける。



 「…六郎を抱きたいか。当主後継者殿」

 「何を…」

 「抱かせてやるって言ってるんだよ」

 「な…」

 何を言われているのかがわからない。

 視界の端で、六郎兄さんがびくついたように五郎兄さんを見つめている。



 「抱かせてやるよ。…てめぇが俺を満足させることが出来たらな…」

 下卑た笑いが部屋中を埋め尽くす。

 「しゃぶれよ。当主後継者殿。俺のモノを咥えて満足させてみろ…」

 「なにを…」

 体が怒りで震えていく。

 「てめぇが俺を満足させられたら…その日は一晩六郎を好きにしな」

 あごの先で六郎兄さんをしゃくる。

 「そういうことだ、六郎」

 薄ら寒い笑み。

 「てめぇみたいなのを抱く趣味はねぇからな。…口だけで、我慢してやるよ…」

 五郎兄さんがゆっくりと手のひらを上に向けて…俺に差し出す。

 人差し指だけを残しその手を軽く握り込む。

 残った人差し指をくいっと上に折り曲げて。

 …俺を、招き寄せている…。



 「…五郎…兄さん…、…七郎…いいから出て行け…」

 六郎兄さんが囁くようにそう呟く。

 「…七郎…」

 むしろ懇願するかのようなその震えた声。

 俺のシャツの裾が軽く引かれる。

 「…しち…」

 「てめぇは黙ってろ。俺は当主後継者殿と話をしてるんだよ」

 五郎兄さんの一瞥に。…六郎兄さんの腕が力なくくずおれる。



 「…どうした。大事な六郎兄さんを俺に抱かせたくないんだろう?…いいとも。望みどおりにしてやるよ」

 ぐつぐつと醜悪に笑う。

 「てめぇが俺を満足させられたら…その晩はお前にこいつをくれてやる。…何度でもな…」

 あぐらをかいたままぐいっと足を広げる。

 「どうする。当主後継者殿」



 ―…あぁ…本当に…。



 頭がくらくらする。

 下衆な兄。

 青ざめた顔で震えている愛しくて弱くて狡い人。

 眩暈の中で…そっとその場に膝をつく。

 「…面白ぇ…」

 ひき蛙を潰したような声。

 「…しち…」

 引き攣れたような短い悲鳴。

 顔色も変えずに…五郎兄さんの下肢へと手をかける。

 くぐもった笑いを零し続ける顔も見ずにずるりと下衣を寛げる。

 あらわれたのは大人のそれ。

 …グロテスクな外観。熱を帯びた醜い塊。

 それをずるりと手のひらに取り出していく。



 「…や…め…、しち…」

 「お前は黙ってろ」

 震えるような静止の声。それに対して吐き捨てるような昏い声。

 その場にしゃがみ込み、…握ったそれに。

 …ちろりと舌を、這わせていく。

 「…くくっ…」

 短く笑う声。

 両手をついて俯く白い躰。

 それを横目に見つめながら、口の中のそれを舐めまわす。

 …正直えぐい。

 まずい。

 気持ち悪い。

 それでも。



 くちゅくちゅと舌を動かす。

 時折ついばみ吸い付くように。

 沿わせた指を蠢かす。

 擦り握り、指の腹で裏筋を刺激する。

 「…んっ」

 五郎兄さんのあげる軽い声。

 大きな手のひらが俺の頭を掴む。

 「…当主後継者殿のこんな姿を見たら…当主殿はどんな顔をするのかね…」

 そう言いながら。

 がつんと俺の頭を振り回す。

 がんがんと振られ、目の前の景色が歪んでいく。

 「噛むなよ…そうして吸い付いていろ…」

 噛めるような余裕なんてない。

 苦しくて眉間にしわが寄っていく。

 激しく揺さぶられ頭を押さえつけられ。

 えづきそうになる声を堪えるだけで精一杯だった。

 ―…ぐぅっ…!!

 唐突に喉の奥にぬめる何かが叩きつけられる。

 生温かいそれ。

 けだものくさい臭いが口の中に広がる。

 げほげほとその場で激しく咳き込んでいく。

 「…あぁ、面白ぇっ…!」

 けたけたと大声で笑いながら五郎兄さんが立ち上がる。

 「六郎、そういうことだ」

 ばたんと扉を開け放ち、五郎兄さんが部屋を出て行く。

 残されたのは俺と六郎兄さん二人だけ。

 口を押えて…洗面台へと駆け出していく。



 洗面所で激しくえづく。

 何度も何度も口を洗いゆすいでいく。

 鼻の中に残る生々しい臭い。

 涙を零しながら顔を洗う。



 顔を拭き、口直しにきつい酒を浴びるように飲み干して。

 再び。

 …六郎兄さんの部屋へと、足を向けていく。



 昏い部屋の中。

 そこは先ほどまでと全く同じ。

 裸のままの六郎兄さんが、布団の上で呆然と外の景色を眺めている。



 「…六郎兄さん…」

 そっとその肩に手をかける。

 「…俺は…」

 「…し…ち…」

 綺麗な瞳から…涙が次々に溢れてくる。

 その躰を抱きしめる。

 「…あんな…あんな奴なんかに…あなたは渡さない…。そのためなら俺は何だってする…」

 そっと唇を重ねる。

 「…口直し…」

 「酒…くさい…」

 いやいやと頭を振る躰をそっと押し倒す。

 「愛してる…愛してるよ兄さん…」

 柔らかな躰。

 しなやかな手足。

 その温かな肌を…腕の中に抱きしめて。

 口づけをかわす。

 滑らかな肌を撫でまわす。

 白い胸に舌を這わせる。

 「…ぁ…や…、ん…」

 尖った乳首を転がすと、甘い声が零れていく。

 小さなお尻を揉んでいく。

 すべすべした可愛いお尻。

 …こんなに子どものような躰で。

 あんな…五郎兄さんのものなんかを飲み込んで。

 嫉妬心で胸が焦げていく。

 じりじりと炎も上げずに胸の端から俺の純情が灰になっていく。

 お尻の間。そこにそっと指を這わせる。

 きゅっと指を挿しいれると、ずるりと飲み込まれていく。

 ―…あぁ…。散々慣らされている躰…。

 黒い煤にあぶられて。心が黒く染まっていく。

 

 細い足を持ち上げて。

 …そっとそこに。俺のものを押し当てる。

 「…ぁぁ、んっ…」

 六郎兄さんが息をつく。

 抱かれる衝撃に慣れている躰。

 それを一気に貫いていく…。
 
 





 そして、そこからは。

 毎晩のように、俺を嬲り貶めにやってくる五郎兄さんの姿が。

 俺の部屋に六郎兄さんをつれてやってきては、その前で俺に口淫を強いる。

 書斎で。居間で。時に深々とソファに腰かけながら。

 俺に自分のものを含ませて、口の中に体液をぶちまける。

 すっかり慣らされていく自分を確かに実感する。



 ―…少しだけ不思議に思う。

 五郎兄さんが連れてくるのはいつだって六郎兄さんただ一人。

 …上の…一郎兄さんたちを連れてくることが一度もない。

 何故。嫌われているのは自覚している。

 自分でも思う。こんな格好の見ものを。…何故。



 いまだに俺の事を「当主後継者殿」と呼ぶ。

 弟として。兄弟として。そんな扱いを受けることがない。

 それでも。…俺を、他の兄たちの前で笑いものにすることがない…。

 俺がどうするのか…それを毎回確認する。



 思ってみれば不思議な関係だ。

 俺が五郎兄さんに「ご奉仕」することで、五郎兄さんは満足したように笑う。

 そうして俺に六郎兄さんを与えてみせる。

 そんな扱いを受けていてさえ、六郎兄さんの五郎兄さんへ向ける愛情は変わらない。そう見える。

 そして俺は。五郎兄さんのものを口に含んで見せながら、その口で今度は六郎兄さんのものを含んでいく。

 吐き出されたそれを飲み込んでしまうようなことももうない。

 ぷっと吐き出し口をゆすいで。

 きつい酒で消毒してから六郎兄さんを抱きしめる。

 

 すっかり教え込まれたその手管で。今度は六郎兄さんのものを口に含む。

 六郎兄さんに対しては不思議なほどに嫌悪感を覚えない。

 白い足をさわさわとなぞりながら、口の中いっぱいに頬張っていく。

 俺の口の中で弾けていく六郎兄さんの躰がほのかに紅く染まっていく。

 押さえきれない甘い声。

 俺にしがみつく細い腕。

 蕩けそうな顔で俺に潤んだ瞳を見せつける。

 

 白い躰に吸い付いていく。

 紅い痕。いくつもそれを刻み込む。

 濡らした指で執拗なほどにそこをほぐす。

 ぬちゅりと挿して腰を動かす。

 その快楽が、麻薬のように俺を捉えて離さない。


 
 ―…誰でもいいわけじゃ…ないんだろうに…。

 さらさらの髪の毛を指ですくう。

 摘まんだ髪に。額に。頬に。唇に。

 キスを。柔らかなキスを。繰り返し何度でも。

 

 歪んでいるなとは自分でも思う。

 こんな扱いを受けていてすら五郎兄さんに従ってしまう六郎兄さん。

 それでもそんな六郎兄さんのことが好きで好きでたまらない俺。

 そんな俺を嬲りながらも、どこかで一線を引いている五郎兄さん。

 ―…俺が自分で思っているよりも。…当主後継者の地位は重いのかな…。
 

 そんなことを考える。



 最近では、もう何処をどうすれば五郎兄さんが気持ちよくなっていくかを俺は熟知している。

 舌遣いが格段に上達したと…苦笑せざるを得ないお褒めの言葉まで頂いた。

 ―…こいつは何時まで経っても上達しねぇしな…。

 くつくつと笑う五郎兄さんの前で、六郎兄さんが羞恥に躰を朱に染める。

 そうして…少しだけ悔しそうな顔で、俺が自分のものを舐めている様子を一生懸命に観察している。

 

 「…六郎兄さんも…俺のを舐めて練習してみる…?」

 くすくすと笑いながらそう言うと、六郎兄さんがこくんと頷く。

 まさかそんな…。そう思いながらも衝動に抗えない。

 紅い唇が俺のものをくちゅりと飲み込んでいく。

 涙に潤んだ瞳で俺を見上げる扇情的な顔。



 退廃的な日常に…こうして深く深く飲み込まれていく…。





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