結界師二次創作「兄さんと僕。その3」

□晴天
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 ―最初はただただ、むかつくだけの奴だった。

 家族をけなされて、切れないわけないだろ。

 人の母親を膿呼ばわりしたりして、なんだよそれって思った。



 最初は…俺とたいして変わらない年なんだと思ってた。

 …だって小さいし。



 …次に会ったとき…烏森には全然興味なさそうにしていて…。

 烏森に興味ない奴なんているのか、と不思議な気がした。

 それに…居場所がどうとか…そんなことを言っている顔が、ちょっとだけ悲しそうに見えたから…。

 それまで確かに怒っているはずだったのに、なんとなく気がそがれた。

 随分と変な奴だなって…最初は確かに、それだけだった…はずだった。



 次に再会したのは…嵐座木神社が襲われたとき。

 素顔を出したら、それだけで随分可愛くなっちゃって、と思って…なんとなくやべぇなって。

 それから…どきりとするような顔で笑っているのを見て。

 ―なんだよ、そんな顔して笑えるんじゃん…。そう思った。

 …最初から…俺の前でもそんな顔してたらよかったのに…、って…。



 ―実は兄貴よりも年上だとか聞かされたのは…それからしばらくしてからだった。

 名前が六郎だから、…もしかして七郎よりは上なのか…?

 いや…どうみても小さすぎるだろ…。もしかして扇家が特殊だって言われるのはそこらあたりからか。

 自分が見たまんま…その位に思っていた。



 色々な後始末で顔をあわせる機会が多くなって、ため口でずっと話しかけていたら。

 「…俺、お前より年上だから。口の利き方に気をつけろ」

 むぅ、と少しだけ不機嫌そうな顔をして、そんなことを言ってくる。

 「は?たいして変わんねえだろ?だいたいお前いっつも俺のこと馬鹿馬鹿言いすぎなんだって」

 笑って言い返したら、かすかな舌打ちの音がした。



 「…俺、お前より10歳年上だからな」

 「は?何言ってんのお前」

 「…24歳だから俺」

 「…珍しいな、お前が冗談いうの」

 ―ちっ、という…かすかな舌打ちがまた聞こえる。



 「もしかして…まじで…?」

 「さっきからそう言ってるだろ」

 …そのあと…思わず無言で、不機嫌そうな六郎の顔を見つめ続けて…。

 ―あ、俺こいつのこと好きだわ…。唐突にそう、気付いた…。

 歳が上でも下でも関係ないし、俺の前でももっと笑っていてほしい。

 結構俺…気に入られてはいるだろうな、とはうぬぼれている。

 …家族を大事にしている、っていうのは…六郎の中では随分高評価のようだし。



 六郎の不機嫌そうな顔を無言で見つめ続けたあと。

 そっと…顔を近づけて、ぺろ、とその唇を舐めてみた。

 一瞬びく、とされたけれど、…怒られたりはしなかった。



 ―へへっ、と笑って鼻をくすぐる。

 ―ちっ、と舌打ちをして…顔をそむけるその首筋が紅くなっていく…。

 …なんだ、もしかしなくても両想いなんじゃん…。

 だから、そっと白くて細い腕を握って、こっちを向かせて…。

 ふ、とこちらを向く六郎の唇に。

 今度はしっかりと、俺の唇を押し当てて…そのまましばらく、抱きしめていた…。



 …ここには今、二人っきりだし…。

 そう思って…ちょっとだけ、押し倒そうとしたら…。

 ぐい、と頭を押し戻された。

 
 「…なんで…。両想いなんじゃねえの俺たち」

 「…どうしていきなり押し倒してるんだよ…」

 「…えっと…好きだから?」

 「…中学生に押し倒されるつもりはねぇよ…」

 「じゃあ…高校生になったらいいんだ?」

 「そんなことは言ってねぇ…!」

 「いいや、俺は聞いたっ!高校生になるまでお預けかぁ〜!…でも約束だからなっ!」

 もう一度だけ強引に唇を押し当てて、一方的な約束をこぎつける。





 そうして…俺が高校生になった今。

 随分と…体も成長してしまった今。

 
 …あの頃とちっとも変わらない姿の六郎は…随分と俺の目線の下の方に、さらさらの頭を揺らすようになっていた。



 最初は結構抵抗された。

 ―そんなの勝手にお前が思い込んでるだけの妄想だろ、馬鹿だろお前、いい加減にしろ…。

 でも結局、本気で抵抗されていたわけじゃなかったと思う。

 六郎が本気になれば俺の結界だって破れるのは、初対面の時に立証済みだ。



 プライドの高い、口の悪い…ふてぶてしいくらいに態度の悪い…。

 どう見ても年下にしか見えない年上の六郎を…。

 それでももう、どんどん大好きになっていく自分を。
 

 …本当にどうしようもねぇよな、と自覚して驚いた。



 着物を、脱がせて…その肌の白さに驚いて…。

 震える手足のその細さにも、驚いた…。

 少しだけ震えるその躰を抱きしめて…。

 ―どんどん溺れていく感覚に…心のどこかが…何かが…もっていかれそうだった…。







 その日も六郎と一緒に、六郎の部屋で映画を見てはごろごろしていた。

 ―最初はテレビもDVDも何もない部屋だった。

 俺がいろいろ持ち込んで…俺があったらいいなって思うものを…六郎が買ってきたりして…。
 

 今じゃ俺の部屋なのか六郎の部屋なのか、区別がつかないくらい…。

 俺にとって居心地のいい…俺のために作られているような部屋。

 その部屋の中心に六郎がいるだけで、…それだけで結構満足できる気がするのが不思議な気分だ。



 「なぁ…してもいい?」

 ちょっと横になって、六郎の足を撫でながら…そう言ってみる。

 「こないだやったばっかだろ」

 「こないだって…3日も前じゃん…俺我慢できねぇ…」

 ずるり、と躰を引き寄せて…深く唇を重ねていく。

 ―ん…。

 いつものように…抵抗もせず、六郎がそれを受け入れる。

 「なぁ…したい…」

 唇をあわせたまま、そう囁く。



 …ちっ、という…かすかな舌打ちが聞こえる。

 六郎なりの…好きにしろ、という合図。



 「…やったね」

 しゅるり、と帯をほどく。

 こういうとき、俺、着物を着る家に生まれていて良かったなー、と素直に思う。

 普段着が着物の恋人って…普通の高校生男子だったら、さぞかし難易度が高いだろう。



 ちゅ、と白い肌に口づけていく。

 そうすると、すごく綺麗に紅い痕がついていく躰。

 …3日前に俺がつけた痕も…うっすらと残っていて、どんどん俺を興奮させていく。



 ちゅくちゅくと躰中を舐めまわしていく。

 六郎の細い腕が俺の頭に絡み付く。

 …せっかくだから…その腕にも指を這わせて、くちゅ、と強く吸い付いていく。

 「…いちいち痕をつけるなっ!」

 「見えねぇだろここなら…六郎いっつも露出低いもん。着物で隠れるだろここ」

 「…痕はつけるなって言ってるんだよ!」

 「えー…俺つけたいもんな、自分の痕…。綺麗に紅くなるんだぜ、ほら」

 そう言いながら、掴んだ白い腕に紅い痕を刻み込んでいく。

 「…ほら…こんな感じ」

 「…お前…馬鹿だろ…」

 呆れたように、六郎がぱたんと躰を投げ出していく。

 その小さな躰の上に覆いかぶさる。



 「最初会った時から、六郎ちっとも変わんねーよな」

 「…お前はずいぶん大きくなったよな…」

 「早く大きくなりたかったからな〜。大体六郎がせめて中学出てから出直してこいとか言うから」

 「今でも…本当は認めてないからな俺は…」

 「往生際悪いよな…相変わらず」



 文句を言いたそうな唇を先回りして塞ぐ。

 口の中を舐めまわしながら、…慣らして。

 「…俺がどんどん大きくなるからさ…。壊しちゃいそうでどきどきする…」

 「…この程度で壊れるほど柔な作りはしてねぇ…」

 「やっぱ…優しいよな六郎…」

 細い足を持ち上げて…そっと腰を進めていく。



 ―んんぅっ…!



 声を押し殺す癖だけは…なかなか改善してはもらえない。

 あんまり我儘言ってもいけねぇしな…。

 そもそも…六郎、そういうの恥ずかしがるタイプだもんな。

 ゆっくりと体を動かしていく。

 白い腕が俺の背中に絡み付いてくる。

 耳元に…押し殺したつもりでいるんだろう…甘い声が響いていく。



 ―結構小悪魔ちゃんだよな…六郎って…。

 ―無意識でやってんなら…そりゃまぁ…仕方ない、か…。

 ―こんな姿…俺だけが知っていればいいことだしな…。



 煽られるまま腰を進める。

 六郎の躰も気持ちよくなるよう…結構俺も頑張っているとは思う。

 ちょっとはその成果が顕れていてくれたらいいけど。

 あげられている声が、とにかくもう甘いから…。

 …これでいいんじゃねぇかな、とは思っている。





 「…うわ…」

 自分の体がぶるっと震える。

 俺が一番気持ちよくなる瞬間。
 


 「…終わったんならさっさと抜けよっ」

 「…全然足りねえ…お願い、もう一回!」

 「10代の性欲に付き合えるほど俺は体力ねぇんだよっ!」

 「見かけは俺のが年上じゃん?」

 まだ挿れたままの…その状況で…。

 ちっとも萎える気配がない、それを…。

 そのまま、…また、動かしていく…。



 「…いい加減にしろ、馬鹿っ!」

 「仕方ねぇじゃん…。六郎が可愛すぎるのがいけないんだって…」

 「…馬鹿なことばっかり…言ってんじゃ…、…んっ…!」

 「あ…ここ?」

 ぐい、と腰を進める。

 「…ふぁぁ…、っ、やぁ、…ばかぁーっ…!」

 「…うわ…すげぇ…その声そそる…」

 「ふざけ…、んっ…!」

 力の入らない白い腕が、激しく俺の体にしがみつく。

 …すげ…本当、気持ちいいかも…。



 しがみつかれるまま強く抱きしめて…細い躰を揺さぶっていく。

 …2回目だから…結構俺、もつな…。

 …六郎は…どうかな…。

 …駄目って言われても…止めらんねぇけど…。

 
 


 白い腕が首筋に絡み付く。

 ぎゅう、と強く抱きしめられる。

 ―わ…、耳元に六郎の唇、当たってる…。

 ―やべぇ…まじで止まらねぇって…。




 
 ―ふぅっ…!



 ようやく達して…まだまだ全然物足りないけれど、諦めて引き抜く。

 あんまり機嫌を損ねると…六郎、させてくんなくなるからなー。

 今までの経験上、2回目までなら大丈夫。

 …3回目は、その時の機嫌次第だ。

 

 案の定…ちょっと拗ねているような眼で俺を見上げてきている。

 「悪りい!止めらんなかった!」

 「本当…図々しいよなお前…。いい加減に、俺の方が年上だって覚えろ」

 「覚えてるって!…忘れるわけないだろ!」

 薄い胸に顔をうずめていく。

 「お前のことなら…俺は忘れねぇって…」

 ちゅ、と白い胸元にも紅い痕を残していく。

 「…おい…」

 「痕だけ痕だけ…。ここなら見えないだろ」

 「…だから…痕はつけるなって言ってるんだろ…」

 「俺はつけてぇの。…俺の体にもつけていいぜ」

 「…馬鹿か…。お前は体育とか…あるんだろ…」

 「俺はむしろ見られたいねっ!その痕なんだよって言われたら、恋人につけられたって言いたいっ!」

 「…馬鹿…」

 ぽん、と頭をはたかれる。

 「…終わったんだから茶でも淹れろよ…」

 「甘いもん食う?」

 「今日はなんだ」

 「マカロン」

 「…食ってやってもいい…」

 「相変わらず素直じゃねぇなー」

 よいしょ、と声をかけながらたちあがる。

 「…じじくせぇ…」

 「こうでもしないと、立ち上がるふんぎりつかないんだよっ!…3回目してもいいんなら…言わねぇけど」

 「…さっさと風呂入って茶の準備しろ馬鹿」

 「だろ?六郎はそう言うと思った!」

 裸のままで立ち上がる。

 「先に一緒に風呂入ろうぜ」

 
 「…俺はいいから先に入ってこい…。お前が出てから入る」

 「ちぇっ」

 「お前が風呂場でふざけすぎるからだろ」

 「はいはい、反省してるって」
 


 ぱぱっと手早くシャワーを浴びる。

 その間にも、風呂には湯をためて。

 六郎用に、温かな風呂を準備する。

 俺が茶を淹れている間に…あいつゆっくり風呂に入るんだろうから。

 茶を淹れるタイミングを、頭の中で逆算する。

 

 …今日のマカロンは、甘さ控えめにしてあるから…その分、茶の方は甘くしてやろう。

 あれこれ持ち込んでいる茶葉の中から、今日は甘い紅茶を淹れてやろうと考える。

 ―結構俺だって、こうして努力してるんだよなー。

 うんうんと頷きながら自賛する。



 ちらりと部屋の方を窺う。

 きっとまだまだぐったりしているんだろうなと思う。

 その姿を想像して…顔がいくらにでもにやついていく。

 

 ―次に来るときは…和菓子にしてやろう。

 団子かな…。羊羹がいいかな…。

 食べる前には…今日のように、疲れて貰って…それから一緒に…。

 

 …楽しい想像に…どんどん胸が高鳴っていく…。

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