結界師二次創作「兄さんと僕。その3」
□我侭
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―ことん、と。
傍らで、兄さんが眠りにつく。
そもそも…この人酒には強くないし。
いくら俺が勧めても、普段はそこまで口をつけたりしないくせに。
新生裏会で、竜姫さんやぬらさんに勧められたら…簡単に盃を飲み干してしまう。
新年会だからと…普段よりもたくさん用意されていた…その酒を。
まぁ…ぬらさんはそんなに無理強いをするような人ではないけれど。
…竜姫さんの勧めるまま、酒を口にするのは…この人にとっては自殺行為に等しい。
それをわかっていて、止めなかったのは俺だけど。
ずっと隣で見ていて…止めようとは思わなかった。
…兄さんは酒にはあまり強くないんだから…俺に振ってくれて構わないよ。
そう、兄さんには事前に伝えていた。
だけど兄さんは、一度も俺に振ってきたりはしなかった。
…俺を…頼ってくれたりはしなかった。
俺の分まで…兄さんが酒を飲まされていて…それでも。
この人がこうなるとわかっていて、だから俺はちっともそれを止めなかった。
泊まっていったらいいのに、という誘いは断って、半分眠りについたままのこの人を抱きかかえて家路へと向かう。
…あんな、他人がうじゃうじゃいる中で…この人のこんな、しどけない姿を…片鱗でもさらしたくはない。
無理矢理抱きかかえて空を飛んでも、半分眠りについている兄さんは抵抗しなかった。
抱きかかえたまま…そっと唇を重ねても、全く抵抗はしなかった。
そのまま、深く深く、舌で温かな唇の内側を抉っても。
細い躰に、手のひらを這わせても。
…まったく、兄さんは抵抗しなかった…。
だからというわけでもないけれど。
意識がもうろうとしている兄さんを、自室のベットの上に転がして。
「…起きないと…いたずらするよ?」
そう、声をかけてみる…。
もちろん、こんな状態の兄さんから返事なんてないことは承知している。
そっと躰を撫でまわす。
その細さと…着物から覗く手足の白さに…。
…自分の体が、ぶるっと震えて。
軽く、華奢な肩のラインを揺さぶる。
「起きて…兄さん…。起きないと…俺にいたずらされちゃうよ…?」
返事のないまま、寝とぼけている様子を見て…くすり、と笑う。
「起きないから…いたずらしちゃうね…?俺はちゃんと、確認したからね…?」
細い躰を押しつぶしたりしないよう…そっと上に伸し掛かる。
唇をあわせて、そのままぬめる口内を舐めつくし…舌を絡めて強く吸い上げる。
時折息苦しそうに、兄さんが漏らす吐息が…どんどん俺の体を煽り立てていく。
―…ぁぅ…くぅ、ん…。
意識がない方が、この人はよっぽど素直だ。
その甘い声に煽り立てられて…細い首筋にむしゃぶりついていく。
白くて細い首が…いくらにでも俺の唾液で濡れていく。
明かりをつけたままの部屋で…煌々とした灯りに濡れた白い肌が、淫らに浮かび上がる。
…思わず歌いだしたくなってくる。
こんなにも無抵抗で、白い肌をほんのりとピンクに染めて。
俺のベッドの上に、熱い躰を火照らせた兄さんが横たわっている。
しゅるり、と絹の擦れる心地よい音が響く。
新年だから、新しく仕立てられた着物と帯。
その帯を、心地よい音とともに着物から抜きさる。
その着物も、ゆっくりと…その躰を撫でまわしながら脱がせていく。
白い肌に白い襦袢。
その襦袢の裾を割っていく。
細い足に…それでもまじないをはしらせて。
その白い足をなぞりあげていく。
…滑らかで、火照っていて…、ほんのりと汗ばんだ肌が、俺の手のひらに吸い付いてくるようだ。
襦袢を縛り付けている紐をほどく。
柔らかで細い肩のラインを撫で上げながら、襦袢をそっと剥ぎ取っていく。
どんどん無防備になっていく小さな躰を抱きしめる。
…ほんのりと酒の匂いがするその胸に、うっとりと頬を押し当てる。
微かに上下する胸の鼓動と、その温かな体温が…俺の心をいくらにでもくすぐっていく。
ぴん、と肌着の紐を引く。
露わになる薄い胸に唇を寄せる。
ちろり、と舌を出して…その先で舐めまわしていく。
くちゅくちゅと吸い付くと、桃色に染まった躰に濃い桃色が刻み込まれていく。
この人の躰に俺が刻みつけた…征服のしるし…。
ぞくぞくとした興奮に襲われる。
―俺は忠告した。
―俺の忠告を…この人だってちゃんと理解していたはずだ。
―でも、それでいて無視をした。…無理を、してしまった…。
酔いつぶれても…俺がなんとかするだろう、とでも思っていたんだろうか。
俺のことをあてにしない、頼りにしない、自分のことは自分でする…。
そう言っていたはずなのに。
それなのに今、俺の前にこんな醜態をさらしているのだから。
…これはもう、俺に何をされても仕方がない。
自分が納得する理由をこじつける。
勿論…自分の欲望に、正当な理由をつけたいだけだとは自覚している。
白い肌着に手をかける。
今日この人が身に着けているものは、全部全部、しつらえたばかりの新しいものばかり。
…俺が仕立てさせたその一式を…何の疑問も持たないような顔をして受け取って、身に着けて…。
男が着物を贈る意味を、もうちょっと深く考えてくれていたらよかったのに。
贈ったその日に身に着けて…その日のうちに、これほどしどけなくあられもない姿をさらしたりして。
―可哀想に。
―無防備で、無邪気で、無警戒で…俺の欲望に対して、無関心だったばっかりに。
下着にそっと手をかける。
するり、と滑らかな肌は…いくらにでも俺の手から、下着を滑り取らせてしまう。
…一糸まとわぬ躰を、ほんのりとピンクに染めて…。
軽く両手を握り込んで、すやすやと心地よさそうな寝息を立てている。
しばらく、その清楚な寝姿を堪能してから。
さらさらの髪の毛を弄ぶ。
必要以上に抱え上げた白い足の先に…足の間に視線を這わせながらキスをする。
一瞬だって視線を外すのが惜しい。
慌ただしく自身の体からも衣服を剥ぎ取っていく。
起こしたりはしないよう、細心の注意を払いながら躰中にキスをする。
ほんのりと染められた肌の上に、濃い桃色がどんどん重ねられていく。
ぷく、とたっている乳首を唇で食みこむ。
舌先でくに、と弄ぶ。
くりくり、とまさぐって。ちゅぷん、と吸い付いてから…ぺろりと舐めて、唇を離す。
―…んぅ…。
微かな喘ぎ声が、それでも無意識の唇から漏れ聞こえる。
無意識なら…仕方ないけど。
あんまり俺を、煽り立てない方がいいんじゃないのかな…。
その胸元を、指先で軽く摘まんでから…舌での蹂躙を再開する。
白い腕に…胸元に。
そっと…白い躰を捩じらせてから…その、背中に。
薄い躰を撫でまわしながら、その細い指先を口の中に含んで吸い上げる。
―くぅ…んん…。
寝息の中に、時折混じる甘い声。
くすりと笑んで…。
枕元から、細くて…反物のように長いその布地を、取り上げる。
新しく着物一式を仕立てさせて…余った布地を、つなぎ合わせるように指示をした。
長い長いその布は。
…元々は、残った布で兄さんの猫耳頭巾を仕立てさせたらどうかな、と思っていたものだ。
何の気なしに制作過程を覗きに行って、…気が変わった。
ただただ細長いだけの布地を繋ぎ合わさせられて…それでも何も問うてこない使用人たち。
くすくすと笑いがこみあげてくる。
しゅるりと心地いい音を立てて滑るその布地。
それで…どんどん兄さんの躰をくるみこんでいく。
くちゅりと舐めて、吸い付いて。
俺がつけた紅い痕を隠すように、その布地でくるくると巻き込んでいく。
両腕に、くるくると巻きつけて。
その手首を、軽くしばる。
両足に、くるくると巻きつけて。
柔かく、足首を拘束する。
胸元をくるくると巻いては…可愛い乳首を隠し…。
腰の辺りをくるくると巻いては…足の間を隠し込んでいく。
まるで…プレゼントのぬいぐるみを、リボンで飾り付けたかのようなその姿。
きつく縛りつけてしまった部分はないか…。
ゆるすぎて、ほどけてしまう部分はないか。
じっくりと時間をかけて確かめてから…。
そっと、眠る兄さんの躰を揺さぶっていく。
散々に刺激を与えられているその躰は、意外にも僅かな揺らめきで目覚めのときを迎える。
「…ん…。…なに…」
軽く頭を振って…。
再び、酒の気配に飲み込まれそうになっていく。
ぼぅ…とした紅い瞳で、しばらく俺を見上げてから。
…どうやらようやく、違和感に気付く。
「…え…なんでお前…え…」
ぐらりと…酔ったままの頭が揺らぐ。
そっと伸ばそうとした指先が…縛りつけられているのを見て。
「…え…?」
紅い瞳が…驚愕の色に染まる。
「…なに…なんだこれ…」
驚くその顔に、にこりと笑いかける。
「………っ!」
縛られたままの手首で、兄さんがそっと自分の躰をなぞり。
…着物を身に着けていない、ということを認識してから…。
自分の躰を跨いでいる俺も、裸であることを。…視界で認識する。
いきなり激しく兄さんが暴れはじめる。
「…ふざけんなっ!どけよ、離せ、ほどけっ!!」
そっと、白い躰の上から身をよける。
それに安心したのか…兄さんがより一層激しく躰を捩じり、自身を縛る布地から逃れようと試みる。
本当に、いくらにでも俺の想像通りの行動。
くすくすとその可愛らしい行動を見つめ続ける。