結界師二次創作「兄さんと僕。その3」

□くるくる
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 空の上から、一気に急降下する。

 ちらりと、紅い着物姿が視界をかすめたのだ。



 「…ろっくろうねえさぁぁぁんっっっ!!」

 急降下の体勢のまま、小さくて細いその躰に自分の体を絡ませる。

 「…どけっ!邪魔だ!!」

 「だってっ!せっかく姉さんを見つけたんだし!!」

 宙に浮いたまま、その躰をむぎゅ、と強く抱きしめる。



 「ねぇ、一緒におやつ食べよ?今日は美味しい大福があるんだよ、姉さんの好きな豆大福だよ?」

 「わかったから離せっ!いちいち絡まるなお前は!!」

 「姉さんが絡んでくれるんなら控えるよ?」

 「ふざけるなっ!」

 「姉さんのいじわるぅ!」

 軽く唇をすぼませる。

 ぺしん、と肩に置いた手をはたかれて…仕方ないから地面の上へと舞い降りる。



 部屋に移動して、使用人が用意したお茶を姉さんに勧める。

 「ほら!この大福、小豆が十勝のなんだよ、美味しいから!ね?」

 
 …はい、あーん…。

 姉さんの口元に運ぼうとしたその手のひらを…ぺしん、とまたはたかれる。



 「ひどいなぁ…赤くなっちゃった」

 「なってねぇ。大体お前、最近はしゃぎすぎだろ」

 「だって、まさか六郎兄さんが姉さんだったなんて思わなかったから」

 えへ、と笑う。



 「…俺だってびっくりだよ。なんで正当後継者のお前が女なんだよ…。ここは女人禁制じゃなかったのか」

 「後継者だけは良かったみたいだね。過去にも例があるみたい。…まぁ、今はもう関係ないことだし」

 姉さんの隣に移動する。

 ぴっとりと姉さんの華奢な躰に俺の体をくっつける。

 …込み上げてくる笑みが止まらない。



 「…うっとうしい。寄りすぎだろ」

 「相変わらず姉さんは口が悪いなぁ…。もっと可愛く喋ってくれたらいいのに」

 「頭おかしいのか。…そもそもお前が順応しすぎなんだよ」

 「うん?結構俺、元からのんびりやってたし。…たまには女の姿で、街とかぶらぶらしていたし」

 「…へぇ…随分と気楽にやってたんだな」

 ちくりとしたその物言い。

 本人は皮肉のつもりで言っているんだろうけれど。

 今の…姉さんと二人きりで浮かれている俺には、何の障害にもならない。



 大福をもぐもぐさせている可愛らしい口元を見守る。

 その、微かに上下する胸元にも視線を這わす。



 …長い間、男として生活していたから…。

 結構、女性の躰に対して…周囲の男がどういう反応をするのかは熟知している。

 普段はそれとなく聞き流していたけれど。

 …姉さんの躰だけは…やっぱりこれだけは格別だよな、と感じる。





 …本当に…俺も女だったって知ってからの、この人の無防備さときたら。



 ―俺が女だって…周りにばれたらいけなかったからな…。せっかく男として…育ててもらっていたんだし…。



 俺が女だと知ったとき、本当にほっとしたような表情で。

 俺に向かって…心安い笑顔を見せてくれたりもしたのだ…。



 だけど、それから後もこの人ときたら。

 相変わらず、男物の着物を着ていたりして。

 女物を着るときでも、あまり柄のない小紋や紬ばかりで。

 …帯だって、半幅の地味なものばかり。



 ―もう全部片付いたんだから。

 ―だからお願い姉さん、これも着て…!



 そう言って贈った振袖や華やかな訪問着は、ちっとも袖を通してもらえない。

 …相変わらず…この人のこうした我儘っぷりときたら。



 こくん、とお茶を飲み干すその細い喉元を見守る。

 白くて細くて…たよやかな女性の喉。



 …男が性欲感じるときって…こういう時なんだろうな、とは素直に思う。



 「…ごちそうさま…」

 「え、まだあるよ?もっと食べたらいいのに」

 「いらねぇ」

 「ん〜、本当相変わらず姉さん少食だよなー」



 どん、とソファーの上に姉さんの細い躰を押し倒す。



 「…重いっ!どけ…!!」

 「これだけ食が細いのに…手も足も、ぜぇーんぶ細いのに」

 ぽすん、と姉さんの胸に顔をうずめる。

 「なぁんで、胸だけこんなに大きいのかなぁ姉さんは」

 着物の上からすりすりと胸を触っていく。

 「知るか。いいからどけ。重いっ!」

 「どうせ俺なんて重いですよー」

 ついでに、身八つ口からそろりと腕を差し入れる。

 …今日の姉さんは女物の、柄のない紬を着ているから…こうして、腕の下の隙間から手を差し入れることが出来る。

 男物を着ているときには出来ないことだから、女物を着ている姉さんは結構貴重だ。



 「うわ…本当に大きい…。俺らがいるから、女の使用人雇ったんだけどさ…」

 …姉さんの着替えや下着を、男の使用人なんかに触らせるわけにはいかない。

 寧ろ、全部俺が手洗いしてもいいくらいだけど。
 

 さすがにそれは出来ないから、仕方なく女の使用人を新たに雇って、この屋敷に通わせている。

 「その使用人が言ってたけど…」

 まあ、無理やり調べさせて聞き出したんだけど。

 …あぁ本当に俺、当主で良かったぁー。



 「姉さん…胸の大きさ、Fカップなんだって…?」

 襦袢の下にも手を差し入れて、肌着の上から胸を触って…大きなおっぱいを揉みしだいていく。

 「…俺なんて…Aカップなのに…」

 「男の振りをするんならそっちの方が楽だろ。俺の場合は体が小さいから…。それで、差が大きく見えるだけだ。いいからどけよ」

 「女同士なんだからいいじゃない。…俺ね、胸が小さいの結構悩みなんだよね…」

 「…胸くらい…お前の場合どうでもいいだろ」

 「まぁね。なんたって俺可愛いし。スタイル良いし。頭もいいし。家は金持ちだし?女でも相当もてると思うんだよね」

 「言ってろ馬鹿。いいからそろそろどけ」

 たゆんたゆんの、姉さんのそのおっぱい。

 細くて小さくて華奢で、ぎゅっと抱きしめたら折れてしまいそうなのに。

 …おっぱいだけは、こんなにも大きくて肉感的。

 いくら揉んでいても飽きることなんてない。



 「…本当に小さいんだよ?おっぱい小さいって…結構辛いんだよ?」

 まあ、実際問題何らの不都合もないけれど。

 「ほら…姉さん、触ってみて?…小さいでしょう?」

 ここぞとばかりに姉さんの手を握り締める。

 …そのまま、俺の胸元に姉さんの手を押し当てる。

 …快、感…。



 「…あぁ…」

 何かに納得したように、姉さんが小さく呟く。

 …温かなその手のひらが、あっという間に俺の体から離されて…ちょっと切ない。



 「…ね、どうしたらこんなに大きくなるの?」

 「…知るか。健康的な食生活とかそんなもんだろ」

 「えー、俺だって結構健康的だよ?」

 揉み揉み揉み…。

 姉さんたら本当、柔らかくていい匂い…。

 大きなおっぱいの谷間に顔をうずめる、その心地よさときたら。



 「…お前だけ…」

 「え?何?」

 「…なんでもない」

 「気になるからー!」

 「…お前、だけ…」

 「俺だけ?」

 「…小さいんだよ…」

 「え?」

 「…一郎姉さんも…五郎姉さんも…大きかった…」

 「…そうなの…?」

 正直、そいつらに興味は全くない。

 …そういやいたな。…あれどんな顔だったっけ。その程度の認識。



 「…一郎姉さんが…一番大きかったな…」

 「ふうん…何か秘訣とかあるの?」

 興味は全くないけど。姉さんとの会話を楽しむためだけに聞いてみる。

 …揉み揉み揉み…。

 …俺の手のひらから弾けだしそうなこの弾力。瑞々しさ。

 はちきれそうなほど魅力的な姉さんのおっぱいから、もう手が離せない。



 「…五郎姉さんは…俺が毎日一郎姉さんの胸を揉んでいたからだって…そう言ってたな」

 「…へえ…それで大きくなるんだ?」

 …まさか…姉さんの胸も揉んでたんじゃないだろうなあいつ…。

 
 そうだとしたら殺してやる。…あれまだあいつら生きているんだったっけか。

 「…お前も。大きくしたいのなら、毎日揉んでみたらどうだ?」

 「自分で揉むのはなぁ…。姉さん、俺のを揉んで大きくして?」

 「何で俺が」

 心底呆れたような声で姉さんが呟く。

 両の手のひらで余るくらいのそのボリューム。

 …胸で女の子を判断したことはないけど…姉さんのこの胸の、俺に対する破壊力ときたら…。



 「…姉さんは…誰かに揉まれて大きくなったの…?」

 「誰が揉むんだよ…。勝手にこうなっただけだ」

 …ほぅ…。安心の息をつく。

 良かった…。まだ俺だけしか、この胸に顔をうずめたりしてないんだ…。

 …背筋をぞくぞくとした快感が駆け抜ける。

 「じゃあさ、今度から俺が揉んであげる。そうしたら、もっともっと、…大きくなるよ…?」

 揉み揉み揉み…。

 今のままでも充分すごいけど、もっと大きくなったらどうなるんだろう…。

 胸の谷間に顔をうずめているだけで、呼吸が止まりそう。…いや、止められてしまいそう…。

 「…邪魔なだけだろ。着物にはお前くらいのが合うんだよ」

 「俺、そんなに着物着ないしね」

 すごく甘くていい匂いを、胸いっぱいに吸い込んでいく。

 …本当に六郎兄さん、…女性だったんだなぁ、と実感する。



 大きなおっぱいにすりすりと頬を擦りつけていく。

 …たゆんたゆん…。いくらにでも気持ちいい…。



 「…いいから、本当にどけって…」

 くい、と。俺の頭を、姉さんが押し返す。

 …随分揉みまくったし…そろそろ限界かな。



 「だって羨ましいからさ」

 ものすごく名残惜しいけど…ゆっくり姉さんの胸から顔をあげる。

 俺が乱した着物の襟元を直していく。

 …俺も女性だったとわかってから…姉さんは結構、俺に対しては無防備だ。

 だから…どうやってその無防備さにつけ込んでやろうかと…日々頭を滾らせている。



 「…本当に、散々触りやがって…」

 ちっと可愛い舌打ちの音が聞こえる。

 そう文句を言いながらも、姉さんが自分で自分の着物を整えていく。



 「ね…あとで一緒にお風呂入ろう?」

 「お前いくつになったんだよ。…一人で入れ」

 「…だって…女同士で、色々な悩み相談したくてさ…。いまだにここ、夜は女性って姉さんと俺だけだし」

 「………」

 「ね?」

 にっこりと微笑む。

 …ちっ、と…。可愛らしくまた舌打ちをして、姉さんが顔を逸らす。

 …姉さんがこうするときはOKと同義語だと、俺は既に学んでいる。

 「ありがとう姉さん。…大好き」

 「…うるさい」

 しゅるり、と。

 絹の擦れる心地いい音を響かせて、姉さんが席をたつ。

 「…俺は、夕飯の前には入るぞ」

 「じゃあ、その頃部屋に迎えに行くね?」

 …やったね。心の中で叫ぶ。

 
 この人の、こういう甘い考えは…やっぱり俺は好きだな。



 ぱたん、と閉じられる扉を見つめる。

 …姉さんの下着…。

 今度、可愛いのをそろえて、プレゼントしよう…。

 今の下着は、正直あんまり可愛いとは思えない。



 …どうやったら…あの人のすべてを、俺のものにできるのだろう…。

 俺の全てはあの人のものだけど…あの人を手に入れるためには、どうしたら…。



 あんなに可愛くて…おっぱいも大きくて、甘い甘いいい匂いがして…。

 その辺りの男なんかに掻っ攫われるくらいなら、…俺が。



 …長く男をやっていたからか。

 あの人を何処にも出したくない。

 人目につくところにいてほしくない。

 俺のことだけ見ていてほしい。

 …ずっとずっと、俺のことだけを。



 本当に俺が男だったら…あの人を娶って、孕ませて…。

 生涯、俺の手元から離したりはしないのに。



 もっとも…あの人の性格を考えると、大人しく従ってくれたりしそうには、…ないのだけれど。



 まあいいか…。

 時間はたっぷりあるんだし。


 
 指先で髪の毛を弄ぶ。

 
 …女らしく、可愛らしく。

 あの人がいくらにでも、俺に気を許してくれるように。

 それまでの間は。

 …害のない、可愛らしい妹を…演じ続ける…。

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