結界師二次創作「兄さんと僕。その3」

□暴走
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 一度自覚した恋心は、加速するのもまた早かった。

 一日でも兄さんと離れたくない。

 ずっとずっと兄さんを見ていたい。傍にいたい。俺を見てほしい。

 俺を見て。俺と話をして。

 それだけを請い願い続ける…。





 だけど兄さんは相変わらずだった。

 元々あまり、…俺に興味がないのかもしれない…。

 以前ほど避けられている感じはしない。

 
 兄さんの中では…何かが一区切りついたのかもしれない。

 でも…。

 だからといって、特に必要がなければ。…今までと同じ。

 わざわざ用もないのに俺と話をしたりしない。

 …俺のいない食卓で…ひとりっきりで食事をしても。ちっとも平気なのだ、あの人は。



 そうして改めて考えてみると、兄さんと俺は生活リズムが異なりすぎだ。

 基本兄さんは昼間に動くことが多い。

 …俺は夜に動くことが多い。

 お互いに、規則正しい仕事をしているわけでは…ないのだ。



 兄さんへの恋心を自覚して。

 知らない間に自身の中に燻ぶっていた、穢れた欲望についても自覚する。

 毎夜毎夜…兄さんのことを考えながら耽るその行為。

 …だめだ、いけない…。

 そう思いながらも、その欲求からは抗うことなどできやしない…。





 そんなある晩のことだった。

 珍しく俺は仕事もなく、部屋で寛いでいて…。

 ベッドの上に寝転がりながら、兄さんのことを考えていた。

 …そろりと、いつものように下肢へと向けて右手を伸ばしかけた頃。



 ―…とんとん、と部屋の扉を叩く軽い音が、室内に響く。

 ぎくりとしながら半身を起こす。

 悪いことをしているところを見つかったような…そんな気まずさとともに。



 「………」

 俺の返事も待たずに扉が開く。

 この不調法は…もしかして紫島か?

 そう思ったとき。



 …扉の向こうから…。

 白い着物の裾が、ちらりと視界に入る。



 「…兄さんっ!?」

 「いたんなら返事くらいしろ」

 少しだけ不機嫌そうに、兄さんが部屋の中へと足を進める。

 「…どう…どうして…」

 「これに目を通しておけ」

 白くて細い指が、紙の束をばさりと机の上に置いている。

 「…それは…」

 「資料。まとまったからお前も目を通しておけよ」

 それだけ言って…そのまま踵を返そうとしてしまう。



 「…待って…!!」

 思わず追いすがり…白い手首を掴む。

 「…待って…いかないで…!」

 ぱちくりとした綺麗な紅い瞳が俺を見上げる。

 …あ…。

 思わずひきとめてしまったものの…別に特段の用事があるわけではないのだ…。

 
 兄さんの手を握ったそのままの体勢で…俯いてしまう。



 「…用がないなら離せよ」

 ぶんぶんと、兄さんが軽く腕を振る。



 ―…ぐ、と息をのむ。

 …ふわりと…兄さんの躰から…洗い立ての躰の、いい匂いがくゆってくる…。

 「…俺…俺は…」

 ぎゅう、と…より力を籠めて、兄さんの腕を掴む。

 頭の芯がぼうっとする。

 あらためて見やれば、ほんのりと上気した肌。

 しっとりとかすかに濡れているその髪が…それでもやっぱり少しだけ、外側に跳ねている…。



 「…俺は…」

 訝しそうな色を浮かべて俺を見ている兄さんの瞳を見つめ返す。

 「おれ、は…。兄さんのことが…」

 ごくりと喉が鳴る。

 「…すき…」



 きょとん、とした瞳の紅が…。

 決死の想いで伝えた俺の告白を…ちっとも本気になどしていないのだと俺に告げる。

 腹立たしくなって…より強い力で、兄さんの腕を引く。

 その躰を…俺の腕の中に抱え込もうと試みる。

 瞬間、兄さんが反対方向へ体を捩じる。

 結果として…。

 俺がつまんでいた着物の袖だけが、俺の腕に強く引っ張られてしまう…。

 細い体を覆う、その白い着物の袖を引っ張ったその弾みに…。

 兄さんの着物が、…はだけてしまう。

 白い肩が、露わになる。

 俺の体の中心が…どくりと波打つ。



 「…何やってるんだよお前。いいから放せ」

 何にもわかってくれたりしない…。

 兄さんのその言葉が、俺の気持ちなどかけらも伝わらなかったのだと俺に告げる。

 「…放せって言ってるだろ」

 軽く腕が振り回される。

 …白い肩を、露わにしたまま。

 放せ、と繰り返される…囁くようなその声が。

 かえって俺の心を興奮させ…表面まで浮かび上がっていた情欲を成長させる。



 「俺はっ…!」

 兄さんの躰を引き寄せて抱きしめる。

 「ずっとずっと…!」

 華奢な躰をベッドの上に引き摺り倒す。

 後ろ手に、帯を引き抜く。

 「何やってるんだ馬鹿。いいから放せ。…酔ってるのかお前」

 呆れたような兄さんの声が…耳元で響く。

 「好きだって言ってる…!!」

 兄さんの躰から、はだけかけていた着物を一気に剥ぎ取っていく。

 「兄さんのことがっ…!」

 細い足を押さえ込み、持ち上げて抱え込む。…細い腰から、下着をするりと引き抜く。

 「ずっと…ずっと…!」

 暴れる腕ごと、俺の胸の中にくるみ込む。

 乱暴に唇をあわせて舌を差し込む。

 ―…んんっ!

 首を振り逃れようとする兄さんの躰を、自分の体で押さえ込む。

 唇をあわせたまま、細い躰をなぞりあげる。

 温かで華奢な躰に触れるたび、俺の指先がじんわりと痺れていく。



 ―…んぅっ…くぅ…。



 あわせた唇の隙間から漏れ聞こえる兄さんのその声を聴くだけで…頭が真っ白になっていく。



 細い肩ごと強く強く抱きしめて、兄さんの口の中、その喉の奥までにも、自分の舌を侵食させる。

 それから…。

 片手をそろりと下肢へとのばす。



 ―…早く…早く、このまま兄さんと…。

 最後まで、したい…。



 膝で兄さんの足を割っていく。

 足の中心を、やんわりと握り込む。

 …それだけで、もう心臓が飛び出しそうだった。



 ―…兄さんっ!兄さん兄さん兄さんっ…!!



 あわせた唇から、声にならない声がもれる。





 ―っ、…駄目だ、このままでは出来ない…。

 今更ながらそれに気づく。



 兄さんの細い躰をベッドの上へと縫い付ける。

 その小さな躰の上に馬乗りになる。

 両足で華奢な躰を挟み込む。



 「…ふざけるなっ!どけ…!」

 自由な両手で兄さんが抵抗する姿を、その躰の上から見下ろす。

 白くて細いその手が…俺の体を嬲る光景を見つめる。

 ぶるりと体が震える。



 ―…兄さんっ…!



 上半身を覆っていた邪魔なシャツを脱ぎ捨てる。

 慎重に片膝ずつをわずかに浮かせて、邪魔なズボンと下着を一気に引き抜く。

 部屋中に、兄さんのあげる可愛い声が鳴り響いている。

 どうして。

 普段はあんまりしゃべってくれたりしないのに。

 今日の兄さんは、俺の耳に心地よい声で…よく鳴いてくれている。

 天上の調べでさえ…。

 こんなに俺を魅了したりはできないに違いない…。



 すっかり衣服を取り去った体を…もう一度、兄さんの躰の上へと横たわらせていく。

 服を着たままなんかで…兄さんとするのは嫌だ…。

 「…放せっ!嫌だっどけろっ…!」



 振り回される手を掴み…その指先にキスをする。

 びくっと跳ねて兄さんが腕を引き抜く。


 「なに考えてんだよ馬鹿っ!…いいからどけっ!」


 怯えたような瞳で、兄さんが俺を見上げる。



 ―…俺は…俺はっ!



 「好きなんだ、兄さんのことが。ずっと前から…」

 震えている細い肩を抱きしめる。

 「大好きだから…もう我慢出来そうにない…」

 再び…深く唇をあわせていく…。

 もう一度、兄さんの膝の間に自分の足を割り込ませる。


 兄さんがいくら足を閉じようとしても…俺の方が力が強いから…。

 むしろ、兄さんの両膝が…。

 必死になって、俺の足を放さないように挟み込んでいるかのよう…。



 抱きしめている片手を、そろりと兄さんの下肢へとすすめる。

 その手が。形のいい…小さなお尻へと到達する。





 …何かで…慣らさないと…。

 兄さんの唇を犯しながら、部屋中をぐるりと見渡す。

 …あれ…あのクリームなら…。



 普段使用しているクリームを風で飛ばし、ベッドの上で受けとめる。

 蓋を開けるその手間ももどかしい。



 ―…くちゅ…。



 たっぷりとクリームを絡めた俺の指が、兄さんの躰の中へと飲み込まれていく。

 柔らかくて…温かな…。

 兄さんの躰の中は…こんなにも心地いいのか…。



 ―…ん…。

 あわせた唇から、俺自身の吐息がもれる。

 もっともっと…兄さんとひとつになりたい…。



 兄さんの足を抱えて、俺の肩に持ち上げる。

 無理な体勢を強いられて…兄さんの抵抗が僅かにゆるむ。

 その隙に。

 抱えあげた兄さんの足がずり落ちたりしないよう…。

 片手で支えながら、今度は兄さんの胸元にしゃぶりついていく。



 「…やめろ七郎…!嫌だって言ってるだろ…!放せ…!」


 兄さんのあげる悲鳴が部屋中に満ちる。

 「…ごめんね兄さん…本当にごめん…」

 謝ることしか出来ない。

 兄さんの躰を抉っていく指先をとめることは、もう出来ない。

 …甘い胸元に吸い付いていく…その唇の動きも。



 …つぷん、と音をさせながら…慣らしていた指を引き抜く。

 そのまま両手で兄さんの足を抱えあげて。

 …さっきからずっと、口に含んでみたいと思っていた…。

 その、足の中心を蠱惑的に彩っている…。

 兄さんの性器に…むしゃぶりついていく。



 「…やめろっ…!」

 兄さんの指先が俺の頭を掴む。

 ちゅくぅ、と激しく吸い上げると、その指先に込められた力が緩む。

 「…はなせぇっ…!」

 力の入らない白い腕が、俺の体の上をさ迷う。



 ぺろり、と舌を這わせる。

 先端だけを口に含んで、くちゅくちゅと転がしていく。

 それから横の辺りに強く吸い付き…。

 べろぉ、と裏筋を舐めとっていく。

 喉の奥を突くくらいにまで飲み込んで、強く強く吸い上げる。



 「…め…、やめっ、…しちろっ」

 兄さんの躰がかすかに震える。

 唇を離し…今度は屹立の下の、柔らかい部分を食みこんでいく。



 「…んぅっ…ぁ、んぅ…」

 囁くような声とともに…兄さんの放った温かな体液が、兄さんの腹を汚す。

 それを綺麗に拭き取りながら…。

 白い太股の内側にも、強く吸い付いていく。



 「…なんで…こんな…」

 すすり泣くような兄さんの声。

 でも…まだまだ俺は…。俺は…。



 力なく両腕を投げ出している、兄さんのその華奢な躰を抱きしめる。

 …細い両足を…持ち上げる。



 ―…ん…、と身じろぐ兄さんの躰をくるみ込みながら…。



 先程からずっと…。

 痛いくらいに張りつめている俺自身を。

 慣らしたばかりの、兄さんのそこへ。

 ゆっくりと…抉り込ませていく…。



 「…ひぃやあぁぁぁぁっ…!!やめぇっ…!」



 かすれたような兄さんの悲鳴が耳元で鳴り響いている。

 その声に煽られて…。

 より一層、兄さんの躰の奥の奥へと…ゆっくり腰をすすめていく。



 「っ、…は、あぁ、ん、はぁっ」

 はしたない声が、次から次へと俺の唇からもれていく。

 兄さんの中は…想像を絶するほどに…。

 俺の体の奥から、いくらにでも快楽を引きずり出してしまう。



 「…ん、あ、はぁっ…んっ…!」

 自分でも恥ずかしいくらいに声がとまらない。

 「くぅっ…、あ、やっ、んんんっ…はぁ、はぁ…、な、ん、まっ…!」

 力を抜くと、一気に全てが持っていかれそうだった。

 「…兄さんっ…!兄さ、ぁんっ…!兄さ、兄さぁんっ…!」

 必死で兄さんの小さな躰にすがり付く。

 もう頭がおかしくなりそうだった。

 「…はぁ、ぁ、んぅっ…、兄さ、ぁんっ…!」

 がくがくと腰が震える。

 今俺は昇っているのか墜ちているのか、それすらももうわからない。

 「…すきっ!兄さんが…す、きぃっ…!」

 どくんという衝動のあと…頭の中が真っ白に染まる。

 力を失った俺の体が…そのまま兄さんの体の上へと崩れ落ちる



 「…なんで…お前が泣くんだよ…」

 はぁはぁと呼吸を乱しながら、兄さんが俺の体を押しのける。

 「…本当に…お前は馬鹿か…」

 汗ばんだ躰で…よろけながら立ち上がる。

 「…兄さんっ…!」

 「うるせぇ…。泣きたいのは俺の方だ…」

 「俺は…俺は…」

 「…泣いてんじゃねぇよ…。泣きたいのは俺の方だって言ってるだろ…」

 「怒ってる…?」

 「当たり前だろ」

 「…俺のこと…嫌いになったり…する…?」

 「反省しろお前は」

 「俺…俺…」

 「もう疲れた。…今夜は何も考えたくない…。俺はもう寝る。…お前は反省してろ、一晩中」

 「兄さん…好き…」

 「うるせぇ。…反省しろ馬鹿」

 呆れたように言い放ち…兄さんが部屋の扉に手をかける。

 「兄さん…」

 「うるさい馬鹿」

 ぱたん、と無情にも扉が閉まる。



 唇を噛んで俯く。

 その瞬間、ぽたぽたと滴が流れ落ちてくる。

 ―…あぁ…泣いていたのか俺は…。

 衝動に流されて…無理矢理躰を繋げて。

 それで泣いているのは俺の方だなんて…滑稽にもほどがある…。





 …兄さんは…もう俺のことなんか嫌いになっただろうか…。

 
 …呆れていたのは確かだけれど…どうなんだろう…。

 …嫌いにならないで…。

 大きな声で泣き喚いて縋り付きたい。

 ぱたぱたと…流れ落ちる涙の雫を見つめる…。

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