リリカルなのは×ロスカラ  改訂前

□第三話 ブリタニア 無き 世界
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 僕が新たに得た居場所”八神家”
 まだたった一日しか共に過ごしていないけれど、僕はこの色鮮やかな居場所を”愛おしい”と思えるようになっている。
 願わくば彼女達が悲しみの色に染まらない世界であらんことを……


 第三話  ブリタニア 無き 世界

「あ、これなんかライくんに似合うんとちゃう?」
「いやいや、はやてちゃんこっちもいいんじゃない」
「お客様、こちらなんて良いのではないでしょうか」

「……はぁ」

 デパートの洋服売り場の一角で僕は今日何度目とも知れないため息を吐く。
 事の始まりにさかのぼる事数分前。

『僕はあまり服に興味は無いのでおまかせします』

 正直な話、現代、しかも異世界の標準的な衣服というのが自分の知識とどれほど差異があるのか自信がなかったというのもある。周囲を歩いている人間を見る限りそれも杞憂になりつつあるわけだが……
 その言葉を聞いた瞬間、はやてとシャマルさん(と、なぜか一緒に居る女性店員さん)の目の色が変わったような気がした。
 それ以来、彼女達は一体どこから引っ張り出してきたのか分からないほどの洋服を品定めしながら論議をしている。
 まあ、それだけなら全然問題は無いし、むしろ嬉しいのだけど———

「なんで持ってこられるのが女物の服ばかりなんだ?」

 なんというかフリルの付いた可愛らしい服や、ロングスカート
 果てにはメイド服やチャイナ服なんていう、どう考えても普通の洋服売り場に置いてないような物の姿もチラホラ見える。
 (もしかして、こちらの世界ではそういうのが常識で僕の知識が間違ってるんじゃないか?)
 そう思い込んでしまうほど彼女達のノリは良い。なんで店員さんも一緒に盛り上がるのかは全く理解できないが・・・
 シグナムさんやヴィータが一緒に来なかったのはこれを見越していたな。と気付いても“後の祭り“とはこういうことをいうのかな?とぼやくのが精々だ。
 はやてとシャマルさんにミレイ会長の面影を見たのは言うまでも無い。

「ここはやっぱり猫耳かしらね?」
「いやいや、そんなベタに走るよりかはこっちの狼耳の方がええと思うで」
「いえ、お客様こちらのカチューシャなんかもよろしいのではないでしょうか?」
「全 力 で遠慮させていただきます!」

 とりあえずこれ以上放置しておくと下着売り場(勿論女性用)にまで連れて行かれるような気がするので抗議する。
 その後も、僕が男の沽券とプライドと意地をかけて全力全霊で拒否し続けた結果、なんとか普通の服を買ってもらう事に成功した。
 
「またのご来店、お待ちしておりまーす」

 というわけで、今僕の手元の買い物袋には白いコートやセーターなど、冬場を過ごすのに必要な服やはやてに選んでもらった部屋着(男物)
を始めとした生活用品の類がギッシリと詰まっている。


「疲れた……」
「男の子がそんなんやったらだらしないで—」
「だったら僕に女物の服なんて着せようとしないでくれ。
 第一僕が女物の服なんて着ても気持ち悪いだけだろう?」
「この子、本当に自覚ないのね〜」
「せっかく女の子みたいな顔してるのに勿体ないなー」
 
 シャマルさんとはやてが不吉な事を言っていたがきっと幻聴か何かだ、そうに違いない、うん。
 ついでに、はやてが持っている買い物袋の中から猫の耳やうさぎの耳の様なものが見えた気がしたけどそれも幻か何かに違いない!
 そこでふと、ルルーシュが男女逆転祭りなるものについて語るとき。苦虫を噛み潰したような、忌々しい過去を消し去りたいような顔をしていたのを思い出す。
 君も……苦労してたんだね、ルルーシュ。
 そうやって軽い現実逃避に浸っていた僕を見かねたのかはやてが声をかけてきた。

「あ、まさかそんなに傷つかれるとは思ってなかったんや、ゴメン」
「いや、いいんだ。ところで他にもう行くところはないのかい?とりあえず必要なものは一通りそろったと思うけど」
「後は病院行って足の検査するだけやからライくんはもう帰っててええよ」
「別に気は使わなくていい、僕も付いて行くよ」
「でも荷物も重いだろうし、検査には時間がかかるからはやてちゃんの言うとおり先に帰った方がいいんじゃないかしら?」

 そういえば今僕が持っている買い物袋にはそれなりの重さがある。人一人がとりあえず生活するための生活必需品が一通りそろっているのだから当然だ。
 幸い、生徒会の仕事でこれとは比べ物にならない量の荷物を運んだりしていたからそれほど苦にはならない、とはいってもそこまで気遣いされてしまってはそれを無下にするのも悪い。

 「分かった、じゃあ僕はちょっとこの街を見て回りたいから一足先に帰らせて貰うよ」
 「ああ、そんならちょっとやけどお小遣い渡しとくよ。くれぐれも勝手にどっか行ったりせんようにな?」
 「やれやれ、僕はそんなに信用無いかい?」
 「とりあえず普通にお小遣い渡そうとしたらライ君は気使って受け取ろうとせんやろうなってくらいには信用しとるよ」
  
 両手が塞がっているところで、無理やり学生服のポケットに日本の紙幣をねじ込まれたのでそれを拒む事は出来なかった。
 まあ、こうやってお金を渡される時点でそれなりに信用されているんだとは思いたい。

  
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