【改訳】聖剣伝説3(移転)

□第2話
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 夜といえど喧騒的なジャドとは打って変わって、アストリアは静かでひっそりとした小さな村である。
「時間も時間だし、一眠りしてから策を練るか」
 デュランは小さな村には似合わない大きな宿屋に入り、少しの仮眠を執ることにした。
 船旅とモンスターとの戦闘の疲れで、彼はすんなりと眠りについた。しかし、程なくして彼は眩しさのあまり目を覚ますことになる。

「…んっ……なんだ……もう朝なのか……?」

 虚ろに時計をみると、陽が射すには早すぎる時間であった。しかし窓からは強烈なまでの光が射し込んでいる。
 訳がわからずにいると、光は遠のくように弱まった。
 そうしてデュランは気づいた。何か異変が起きているのだと。
 跳ね起きて宿屋を出ると、村人は、ある者は好奇の目を向けて、またある者は畏怖の目をしてそれを見ていた。青白く輝き飛ぶ、光の玉を。
 その光の玉は、村人の目から逃れるようにラビの森に出ていった。
 彼の側にいる老婆は言う。
「恐ろしや……。『光り輝く玉現れん時、悪しき獣に世界は滅亡す…。』予言の通りじゃ……。恐ろしや、恐ろしや……」
 デュランは不安と探求の狭間に揺れながらも、誘われるように光の玉を追ってラビの森に向かって行った。
 モンスターを斬りつつ、目をやり光玉を見ると、時折その中に小さな人影が見えた。
追いかけながら、段々と光りが弱まっていくのがわかる。そして、もうずく消え入りそうな光の玉はアストリアの反対側にある花畑へとたどり着き、ふっと輝きを失ってしまった。
花畑に足を踏み入れ、光の玉が消えた場所に行くと、透明の羽を持った、小さな女の子が倒れていた。
「おっ、おい、大丈夫か?」
 小さな少女は羽をぱたつかせて力なく飛び上がった。
「ええ、ありがとう。マナが少なくて力が出ないの」
「君はいったい……」
「私はフェアリー。マナの聖域から光の司祭に会いに来たの。…あなたは?」
「俺はデュラン。俺も訳あって光の司祭に会いに行くところだ」
「デュランか……。この際仕方ないわね。・・・よし、あなたに決めた!」
「んっ?何だって?」
「ううん。こっちの話。ねぇ、お願い!あたしをウェンデルの光の司祭様の所に連れて行って……。私にはもうこれ以上飛ぶ力が残っていないの・・・」
「そいつぁ構わないが、滝の洞窟に結界が張ってあって、中に入れないんだ」
「それは、私がいれば多分大丈夫。…さぁ、急いで! マナの聖域に異変が起こっているの……」
「『マナの聖域』?なんだ、そりゃ?」
 デュランが疑問符を浮かべると、突然湖の反対側に赤い光が見えた。何かが燃えているような明るさだった。二人は驚きながら、湖に駆け寄った。
「!? アストリアの村の方だ……。一体何が起こったんだ? 急いでいってみようぜ!」
「私はあなたの中に入り込んで休ませて貰うね。しばらく姿は見えないけど、心配しないでね……」
「ええっ?!ちょ、ちょっと待ってくれ!」
 デュランの態度を気にも溜めず、フェアリーは彼の頭の中に入っていく。慌てふためくデュランに彼女は言った。
(さぁ、早くアストリアの方に行ってみましょう!)
「うへぇ、頭の中から声がするっ!」
(いいから、早く!)
「……わかったよ!」

 フェアリーと一緒に行くことになった。

 デュランは急いでアストリアに戻った。近づくにつれて、木片が焼ける独特の臭いが強くなっていく。
 しかし、もはやそこに村はなかった。あるのはボロボロになった家と燻ぶる火種だけである。
「一体何があったんだ……?! 皆は?」
(ビースト兵に襲われたようね……)
 デュランは村人の事を思い出していた。平和そうに宿屋をやっていたおじいさん、無垢な顔して遊んでいた子供の姿、光のたまに怯えるおばあさん……。
「畜生、……なんてひどい事を!」
 彼は拳を地面にたたきつけた。
(一刻も早くウェンデルの光の司祭様にこの事をお知らせしなければ…。今度はウェンデルが危ないわ……)

 デュランは深くうなづき、滝の洞窟に急いだ。
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