短編

□夕焼け空に願いを
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車之輔に乗りながらガラガラと音をたてて遠くなって行く都を眺める。

あそこにはたくさんの思い出がある。

――昌浩。

もう聞くことのない優しい声が蘇る。

――ちょろちょろ動き回るなっ!!傷が開いたらどうする!

自分を心配してくれる声。

――いや、形のいい頭だなー

そう言ってぐりぐりと自分の頭を撫でた大きな手。

――無くすなよ。

そう、言った高い声。

失ってから、こんなにも自分にとって大事なものだったと気づかされた。

孤独と絶望が胸を締め付ける。

意識しないと感情を表に出すことさえ難しい。

もしも、物の怪が還ってこられるならその時は、ずっとそばにいてあげよう。

自分を傷付けた事により、今まで以上に苦しいだろう。

だから、気にしてないよ。

だから、そんな顔しなくていいよ。

そう、言ってあげるんだ。

彼が還ってくるために代償が必要ならば、甘んじて受けよう。

それが、自分だけに課せられるものならば…。
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