凍てつき刃と陽の心

□序
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新たなる闇


「ふるべふるべゆらゆらと…」

黒衣をまとい面で顔を隠した男達が雨の中、呪を唱える。

「―――闇に揺蕩う魂あらば」

大きな蛇を捧げる。

「……醒めて現、時渡り」

盛り土に刺さった板が下から持ち上げられるようにして倒れる。

そして、盛り土の中央に亀裂が走り、ぱっくりと割れる。

「…地に染み渡る歌あらば」

彼らの纏う衣が突如起こった竜巻をはらんで大きく翻った。

燐光が辺りに立ちのぼる。
そして、それば収まるとそこには小柄な人影が倒れていた。

それは、ゆるゆると身を起こす。

「冥き鎖に…、――囚わるる」

呪が完成するとその男たちの頭らしき者がその小柄な影の眼下に手をかざす。

「目覚めろ」

すると、黒曜の大きな瞳がのぞく。その瞳は何処も見ておらずただただ開いているだけ。

しかし、男は満足げに笑うと厳かに告げた。

「お前は内親王に近好き、手なずけ、島に運ぶ手伝いをしろ」

のために、お前を蘇らせたのだから。

その者の笑みは昏く、闇に属するものだった。
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