長編2 茜さす日暮れに
□第一話 逢―ウタ―
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がんがんと頭に響く唄。
――早く、早く・・・!!
何を、何を求めているんだ。
――は・・・きお・・・か・・・ら・・・
聞こえない。
何かが邪魔をしている。
なにが・・・
――は・・・おき・・・、はや・・・お・・・ろ・・・
もう一つの声が聞こえる。
「早く起きろっ!孫!」
「孫言うなッ!」
禁句を怒鳴られ、がばりと起きながら弘樹は
牙をむく。
すると、目の前にふんぞり返った物の怪がいた。
「孫言われたくなかったら一人で起きろ孫」
「孫言うな」
反論し、のそりとベットから降りる。
「ったく、紅蓮のせいで結局なんなのか分かんなくなっちゃったじゃないか」
ぶーとふてくされる弘樹に物の怪は目をしばたたかせる。
「夢を見たのか?」
「うん、なんかすっごい寂しい唄を歌っている人がいて、手足に血がにじんでも、彼岸花の毒にさらされても舞を止める事を許されない人の」
その言葉に、物の怪はいくつか疑問を感じた。
「なんでそこまでわかる。なんか知ってる人だったのか?」
その言葉に首を振る。
「顔は見えなかった。けど、すっごく綺麗で…かわいそうだった」
まるで、自分がその人だったように感じていた。
何を思っているかまではわからなかったが、痛い、つらい、もうやめたいという感情ははっきりと伝わってきた。
「現実なら、助けてあげたい・・・・・」
目を伏せて呟く弘樹の肩をそっと物の怪は撫でた。