小説
□アザミ ─葛藤─
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この屋敷に来てどのくらいたったか…。
“復讐”
ソレは果たされないまま時が過ぎていく。
今日もあいつに呼ばれた。この頃毎日だ。しかし明確な用事がないことが多く、ただ話をするだけだったりする。
「何か用ですか?」
聞きながら手頃な椅子に腰を下ろす。どうせ用事もないのだからと。その証拠に勝手に座ったことに何も言わない。
結局意味の無いことを話して時間が過ぎていく。俺は聞き流すようなそぶりで真剣に聞く。なにか弱味がないかと…。それが日常。
ご主人様がどうでもいいことを適当に話す。それを聞くだけだった時間はいつの間にか少しだけ変わっていた。たまに口を挟んで一緒になって話す。
嫌味を言われることだって多い。でも時折…一瞬だけ笑顔を見せる。それに何故か目を奪われる。
ただ…
「それで鈴木がだな…」
「あれで朝比奈さんって…」
「セシルのやつ…」
話題が変わりなぜか口を挟むのを躊躇う。これもいつものこと…。さも可笑しそうに他の執事の話をする。
そのたびになぜか言葉がでなくなる。聞きたくない。耳を塞いでこの場から逃げ出したい。
貼り付けている笑みが強ばるのがわかる。それでもご主人様は何も気づかない。感情のコントロールができない。
ー今居ルノハ俺ナノニー
込み上げる感情から目を背けるように話に集中しようとする。結果はいつもと同じ──逆効果。
一度形を持った感情は消えなくて…俺は永遠にも思われるその時間を黙って耐えていた。