Short

□シュガーコート
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バニラの香りが漂っていた。
甘いその芳香は嗅ぐ者を魅了させ、気が付けば誘惑に堕ちている。

「毎度ありがとうございます!七百五十円になります。」

目の前で目を輝かせて箱を見るお客様にケーキを渡す。嬉しそうに彼女は品物を受け取り、満面の笑みを僕に浮かべた。

「飛鳥君、今日も頑張ってるわね。今度の新作ケーキが楽しみだわ。」

ここ、la princesse (ラ プランセス)は、最近出来た僕の店だ。
専門学校に入って、パティシエになる。それが僕の夢だった。
それは無事に叶えられて、こうして今駅前に店を構えている。慣れない事も多いけど、こうしてお客さんが喜ぶ顔が嬉しくて辛い事は何もない。

「ありがとうございます。今度のケーキはもうすぐ夏なので桃を使ってみようかと思ってるんです。」

「桃かぁ…いいわね。夏が待ち遠しいわ。」

目の前の女性___立花さんはこの店の常連客だ。凄く美人さんでいつも的確なアドバイスをくれる。
美人で優しくて…まさに女性の鏡。良いアドバイザーを持ったものだ。




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