-Resurrection-
□キミノウタ [前編]
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あるオフの日、街で買い物をしていたステラは、立ち寄った書店で見覚えのある後ろ姿を見付けた。
写真集のコーナーで立ち読みをしている、金髪の女子高生。
「……カリーナちゃん?」
喉まで出かかったヒーロー名を飲み込み、彼女の本名を呼ぶ。
振り返ったブルーローズことカリーナ・ライルは、ステラを見て目を丸くする。
「っあ……スワロウテイル……!」
「学校帰り?……って、それ……」
よくよく見てみると、カリーナは二冊の本を手にしていた。一冊はスワロウテイルの写真集、もう一冊はステラの特集が組まれたファッション誌。
はっと我に返ったカリーナは、慌てて写真集を元の棚に戻し雑誌を自分の背に隠す。
「ライバルが出した写真集がどんななのか気になって……!こっちの雑誌は毎月買ってるやつだから、誤解しないでよねっ!」
決まりが悪そうにステラから目を逸らした。
カリーナの性格は知っている。その言葉は本心ではないだろうという事も。
「そう……。ね、この後予定無かったらケーキ食べに行かない?私がいなかった間のお話とか聞かせて」
「……嫌よ。私、忙しいから!」
何気無い誘いを撥ね付け、カリーナはステラと視線を交わす事無くその場を去って行った。
その後ろ姿を見送り、平積みにされた自身の――――スワロウテイルの写真集を見詰める。
芸能界への復帰よりも早く復帰していたヒーロー界。メディアや市民は、"天才"の帰還に沸いていた。
カリーナは、この微笑むスワロウテイルの表紙を見詰めながら何を思っていたのだろうか。
休業以前からあのような態度を取られていたため、今更驚きもしない。しかし、最近は前にも増してステラへの態度が冷たい気がした。
「私、嫌われてるのかなぁ……」
同じヒーロー同士、そして歌で自分を表現する者同士、打ち解けられないのは悲しい。
ステラは小さく溜め息をつき、書店を後にした。
――――――――
「新曲?」
数日後、ステラはスケジュールの合間にトレーニングセンターを訪れていた。
「新曲って、先月も出したばっかじゃなかったか?」
ステラの話を聞いていた虎徹が、首を傾げる。
「二ヶ月連続リリースってCM流れてるじゃない。アンタ、この手の話本っっ当に疎いわね」
隣で呆れたように溜め息をつくネイサンに、虎徹は言い返せない様子で口を尖らせた。
ステラは、その様子に笑みを浮かべる。
「また少し忙しくなりそうなので、今のうちにここに顔を出しておこうと思って。みんな、変わりは無いですか?」
ふと、虎徹とネイサンは顔を見合わせた。
「みんないつも通りだけど、強いて挙げるなら……バニーかなぁ」
「年相応の表情をするようになったわよね。険が無くなったっていうか」
二人は、ステラとバーナビーの関係を知っている。
バーナビーの良い変化が自分故かとなのかと思うと嬉しいが、ステラが求めていた返答ではなかった。
「あの、ブルーローズは……」