-Resurrection-【番外編】
□Dear my...
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朝、普段以上に満たされた気持ちで目が覚める。
カーテンの隙間から差し込む光が、静かに心を踊らせる。
ベッドに横になったまま、右掌を見詰めた。
「バーナビー……」
その名前を口にすると、胸が熱を帯びる。掌はまだ、彼の体温を覚えていた。
しかし、未だバーナビーと恋人同士になった実感は無く、昨夜のやり取りは夢だったのではないかとさえ思う。
昨日一日を思い返しながらごろごろしていると、サイドテーブルに置いた携帯からメールの受信音が鳴った。画面に表示されたバーナビーの名前に、がばっと飛び起きる。
開いたメールには、"起きていますか?"と一言だけが記されていた。
「……"起きてるよ"」
ステラも一言だけで返信すると、間も無く、今度は電話が鳴った。
柔らかな緊張に、すっと深呼吸をする。
「……もしもし」
『ステラ、おはよう』
聞きたかった愛しい人の声。胸に宿った熱が、心地よく全身に広がる。
「おはよう……どうしたの?」
電話の向こうで、笑声が聞こえた。
『いえ……ステラの声が聞きたかっただけです』
その声音は、心なしか照れたようでもある。
バーナビーが自分と同じ気持ちを抱いてくれていた事、それがどうしようもなく嬉しい。
『ステラは今日、午後からお仕事でしたよね。気を付けて出掛けて下さい。……声が聞けて良かった、my darling……』
メディアの中でも他のヒーローとの会話の中でも、決して耳にした事の無い甘やかな声。
昨夜のやり取りは夢ではなかったと、今ようやく実感する。
『じゃあ、いってきます』
「……っあ、いってらっしゃい!」
通話を切った携帯の画面をしばし呆然と見詰めながら、火照る頬に手を当てた。
「……my darling…………」
恋人からそんな風に呼ばれたのは、初めてだった。
近くにあったクッションを手繰り寄せ、ぎゅうと抱き締める。
バーナビーで心を満たされている今は、自分を取り巻く問題を全て忘れられるような気がした。
しかし、ただ忘れてしまえばいいという事でないのは分かっている。いつかきっと、全てを打ち明ける時が来る。その時まで、もっと強い自分になりたい。
優しく痺れる胸を抱え、再びベッドへ転がった。
すぐにまた携帯が鳴る。
「はい……もしもし」
『ハァ〜イ。オ・ハ・ヨ・ウ』
投げキッスでも飛んできそうな第一声。
「ネイサン」
『アンタ、夕べはあの後ちゃんと帰ったんでしょうね?ハンサムだから信用して預けたけど、一応心配してたのよ』
姉のようであり、母のようでもあるネイサン。
背中を押してくれた彼(彼女)には、話しておかなければいけない。
「ネイサン、あのね……」
「は……えっ!?つっ付き合う事になった!?じゃあ何だ、両想いだったって事か!?」
トレーニングセンターのロッカールームで、虎徹は素っ頓狂な声を上げた。
バーナビーは、慌てて人差し指を口元に当てる。
「声が大きいですよ!……他のヒーロー達には隠すつもりはありません。けど、ひけらかすような事もしたくないんです。出来れば、自然な形で知ってもらえたら……」
素顔を公表している自分よりも、守らなければいけないのは芸能人であるステラ自身。
何より、今後ステラはヒーローであるバーナビーの最も身近な女性となる。危害が及ぶような事があってはならないのだ。
「昨日あの後どうなったかな……って思ってたんだ。ファイヤーエンブレムは、アンタは余計なお節介に出るからって何も教えてくれねーし」
口を尖らせていた虎徹は、すぐに満面の笑みを浮かべた。
「そっかそっか、想いが実って本っっっ当に良かったな!そんな嬉しそうな顔のお前、初めて見る」